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余命を知った黒髪の悪女

作者: 江川 雛

   ある日わたしは自分の未来を知った。


 夢の中でわたしは、病気に苦しみ、愛するものを失ったことにも気づかず、裏切られたことも知らず、ただ病気に苦しんだ。そして誰にも気づかれず、ひっそりと死んでいった。6年後。この未来が起こる。


 わたしは、ニカロル候爵家の長女、レイリン。

私の母は、幼い頃なくなってしまった。母には愛した人がいた。それが前侯爵で英霊のラス・カサス・ニカロル。戦争で唯一人生き残り、災厄と呼ばれる龍を退いた人。けれど、死んでしまった。母はその人のことを思っていても、嫁がなければいけない。それが父の候爵リクス・ニカロル。けれど彼は、酷い冷酷な人だった。母がなくなった途端平民の愛人を連れ妻にしたのだから。

これが私の家族。


 継母には父によく似た明るい黒い髪を持ち、青い目を持つかわいい娘がいた。義妹だ。それに比べ私は、母の黒い目と黒い髪。肌も白かった。継母たちは、そんな私を見て、見下すように笑う。


それから私は狂ったように明るい黒髪の人を集めては、自分に付き添わせ、屈辱なこともさせた。今思えば、ただの馬鹿な子。けれど今からは違う。私は、もう知ったのだから。


 まずは、これからの方針よね。私は、ここで暮らしたくない。けど一人で生きるなんて貴族社会では許されない。なら、平民になるしかない。

 それからの私は、はやい。付き添わせていた人には申し訳なく、お金をやって他の屋敷へやった。何人かは、家に残った。護衛のキリスと小さい頃からいた、ミーナ。あまり構う暇もなく、ずっと生きるため勉強をした。

そして、その日が来た。今日まで色々あった。自分の本当の姿も。それを知ってから、私は決めた。学園で学ぶべききものを学んだらすぐ平民になると。けれど私の病気のこともある。それまでに医療は充実させる。そして、冒険者にもなって。もし、もしも生きられるなら、小さな町で愛する人と大好きなものに囲まれ生きたい。でもその愛する人は、あの人じゃない。未来で裏切ったあの人では。


 学園に入って1ヶ月、魔法を学び、剣さばきを見て、平民の暮らしを知り、忙しい日々になった。そして、未来で愛したあの人とは会わずに生きている。医療の件は、裏で確立させつつあった。 

 ただ一つ嫌なこと。私は、学園に入るとき、自分の容姿を目立たなくさせた。三つ編みのおさげに、メガネ。真面目を装った。けれど、妹は私に気づいては、ありもしないことを学園の人に話した。未来でもそうだった。そうして、義妹を守る一派と、私に媚びを売る、平民を嫌う硬い貴族の一派で別れた。私の意志など関係ない。魔法を覚えてからは、楽だった。目立たない古代の魔法を本で知り、使えばバレはしない。一回ぶつかった人や、一部の教師生徒は気づいていたが。

 そうして学園を去る日。私は、夕日を背に屋上に立っていた。今日で私は、死ぬ。自由になる。そして、屋上から、駆け足で、飛んだ。

 















 あれから10日。冒険者になり仕事にも慣れてた。

幸せな日々。あと4年は生きられる。本当の自分を隠さずに生きられるのは、幸せだ。私の本当の姿は、銀色の髪に、深い海のような黒く青い目。そして、真っ白な白い肌。髪は、日に当たればよく輝いた。目は見ていると吸い込まれそうだ。

 結論を言うと、私の父はラス・カサス・ニカロル。母は、精霊に愛されていた。英霊になった父と愛し合い、家を出て私が生まれた。けれど、英霊と言っても、霊。反動で母も父も精霊の森へ行かなくてはいけなかった。私を連れて行くにも精霊の森へまだ入れない幼い子。愛する私を信頼した人へ託したとか。けれど父の弟に殺されてしまった。そして、冷酷な侯爵は、私を家を出た母と自分の間の子だと勘違いしたんだろう。今となっては、どうでもいい。今度はどこへ行こう。精霊の森にでもいこうか。

















3年後



 私には、愛する人ができた。その人は、龍だ。父が退けた。人の姿になれる彼は、長いつややかな黒髪と、夕焼けのような赤い目を持っていた。心も優しく、子供が大好きなちょっとおちゃめ。父は彼のことを知っていたんだろう。だから、彼は生きている。あれから私は、精霊の森で家族とともに過ごした。私の病気もそこで随分治った。完全とはいかないけれど、それでも精霊の森にいれば病気は、よくなる。死ぬことはない。母も父も。今は、龍と精霊の森に住んでいる。子供も生まれもっと幸せになった。本当に。

 








 学園を出て4年。みんな結婚している頃だろう。あのあとあの家や、国自体どうなったのかは知らないし、知ろうとも思っていない。幸せになって欲しいと思ったみんなが幸せだから。未来を知ってよかった。本当に心からそう思える。幼い自分のままならこんな未来は、なかったから。

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