表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の趣味をなぜ知っている?

作者: 寝月夜兎

 ラジオの音声をBGMにしながら雑誌を読んでいた。

夏の夜が訪れていた。

 ミーンミンミンミンと蝉の鳴き声が日中は煩かった。

暑苦しい気温の昼間とは違い今は涼しく感じる。

ラジオは私の趣味に合うものばかり流れて飽きることなく耳に言葉を届けてくれた。

今日も、昨日も、一昨日も、その前も、もっと以前も。

私の趣味をこれでもかというくらい的確に。

そこで私は読んでいた雑誌の手を止めた。


――急速に体温が下がる感覚はなんなのだろうか?


 エアコンがついているわけでもなく、扇風機がついているわけでもない。

ラジオの声は相変わらずの様子で話しかけてくるのだ。

今日も。

ノイズとともにカーテンの音が聞こえた気がする。


――窓の外はきっと素敵な景色が広がっていますよ?


 締め切ったカーテンの向こう側を見ることはできなかった。


――最近は暑い日が続くので、窓を閉め忘れないでくださいね?


――また、会いましょうね?本日が最終回。次回からは・・・


 その後のラジオの声を覚えていない。

眠ってしまったのだろうか。

 次の日、私は新聞のニュースで知った。

最近私の周辺の家で空き巣被害が出ているらしい。

特に何か盗まれるわけでもなく部屋を荒らされるらしい。

どの家も窓の閉め忘れが原因だ。

メッセージカードが毎回落ちているらしい。


『窓を開けて?』

『会いましょう?』

『ラジオの続きをします』

『私はたった一人のファン』

『忘れないで』


 私はある日間違いをおかした。

月日も流れてそんな奇妙な出来事忘れていたのだ。

 暑い夏の日の夜のことだった。

寝苦しくて窓を開けたまま眠ってしまったのだ。

物音で目が覚めた。

寝ぼけていて何も判断ができない。


――ラジオのあの声がする。

窓の外は綺麗な夜空だ。


『新番組の時間』


 目を覚ますと、部屋だけが荒らされていた。

そのメッセージカードの文章からしばらく目が離せなかった。


 その日の夜ラジオを久々につけた。

ノイズ交じりにこう言われた。


『俺以外に浮気するの?』


 慌ててラジオを止めた。

それからは布団に潜り込んで眠るようになった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ