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子ども嫌い


新婚三日目。

ジェフの友人関係を招いての結婚披露パーティーが、来週開かれる。そのことについてジェフから話があった。


「ああ、パーティーというほどのものじゃなくて、食事会かな。皆でワイワイして、美味しいもの食べながら話すだけだから。幼なじみと仕事仲間と。その奥さんと……子供も招待していいかな?」

「ええ、勿論。子供が来ると何か問題が?」

「いや。君が、子供は苦手なんじゃないかと思って」

「そんなことはないわ」

「そうか、それならいいんだけど……」


珍しく歯切れが悪いジェフに疑問を抱いた。どうして私が子供嫌いだと思ったのだろう。

そう尋ねると、ジェフが少し言いにくそうに口にしたのは、次兄の名前だった。


「ハーシェル殿下が仰ったんだ。レベッカは子供嫌いで、特に平民の子供を毛嫌いしているから、平民との子供は絶対に欲しくないだろうなと。結婚しても君との子供は望めないぞ、もしできてもレベッカはその子供を愛せない。良い母親にはなれないだろうってね、ご忠告をいただいたよ」


いつの間にジェフにそんなことを吹き込んでいたのか。

そもそもジェフとの縁談を私に焚き付けたのは次兄だ。なのにわざわざ悪い話を吹き込んで誰の得になるというのだろう。

しかし指摘されたことに思い当たる節はあった。


「……ハーシェル皇子殿下のお子に対して、私はあまり良い態度を取っていなかったの。きっとそのことを仰ったのね」

「ハーシェル殿下のお子というと……リネット様?」

「ええ。母親の背中に隠れていつもひっそりとしていたから、めったに顔を見ることもなかったけど。すごく綺麗な子よ」


あの子を見ると心がざわついた。

私の領域には決して踏み入って欲しくないと感じた。きっとそういう無言の圧をかけていただろう。


「……子供が嫌いじゃないと言ったのは嘘よ。本当はすごく苦手。小さくてか弱くて、不安な気持ちにさせるから。おどおどして痩せていて、常に怯えているような小さな女の子は一番苦手。だってまるで……」


昔の私を見ているようで。

自分の姿を重ねてしまうから嫌なのだ。

リネットは美少女で、妾の子供ではあるが皇子の子供なので、それなりに良い服を着て綺麗な身なりをしている。

ブスガキと呼ばれていた前世の私の顔は覚えていないが、きっと似ても似つかない。

それなのに、いつもおどおどして大人たちの姿に怯えているリネットの卑屈な態度を見ると、同族嫌悪のような気持ちになった。


以前はその理由が分からず、ただ生理的に嫌いなのだと片付けていたが、前世の記憶を取り戻してからは納得できた。


言葉の先が続かず、途方に暮れている私の手をジェフが握った。


「大丈夫だよ。俺が守るから。君を不安にさせるものは、一つ一つゆっくり見ていけばいい。本当に駄目なものか、もしかしたら良いものなのか。今すぐ分からないことや、後々変わる価値観なんて、世の中にはたくさんあるんだからさ。慌てずゆっくりでいいんだ。俺がずっと一緒にいるから大丈夫」


ジェフの言葉がずんと胸に響いた。

私が非情な子供嫌いだと分かってジェフはどう思っただろう、嫌いになっていないのかと、私はあくまでも自分のことしか心配していなかった。

そんな私に寄り添い、ゆっくりでいいと励ましてくれる。


というわけで今回の食事会は夫婦だけ招待しよう、とジェフは明るく言った。

私はそれに慌て、子供たちも招待してほしいと頼んだ。

それよりも気になるのは、ソフィー妃がやって来るのかどうかということだった。ジェフが招待しなくても、ロードリック卿が彼女の同伴を願い出るかもしれないのだ。


「いや、それはさすがに。前の異職種交流会は、誰でも参加していい形だったから、まだ呼びやすかったけど、今回はパートナーの同伴のみオッケーってことだから。現役の皇太子妃殿下が、他の男のパートナーとして来ちゃ流石にまずいだろうな。っていうのは、リックもソフィー妃も考えるよ」


そうだろうか。そうだといいんだけど。



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