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お呼ばれパーティー


当人たちが納得した形での婚約だというのに、納得しない者がいる。

いつものお茶会やサロンに出れば、面と向かっては言わないものの、「売られた皇女」だと囁かれる。

お国のためにご立派ですこと、お労しやなどと憐憫めいた言葉をかけられることもしばしばあった。


そんな折り、タイラー公爵主催のパーティーにジェフと共に招かれた。タイラー公爵の嫡男、エドワード卿は私の結婚相手の第一候補だった。

ジェフが横槍を入れなければ、私は順当にエドワード卿と結婚していたのだろう。

エドワード卿は政務官で、皇太子殿下の側近をしているため、宮殿で顔を合わせることもあるし、パーティーで一緒にダンスを踊ったこともある。お似合いだと誉められもした。

周りから見ても、私たちが結婚することが妥当だったのだろう。


「タイラー公爵の五十歳のお誕生日パーティーだそうよ。ジェフは仕事で忙しいでしょうから、私だけ少し顔を出そうかしら」


招待状を見せてジェフに尋ねた。


「行くよ」

「そう? 無理しなくていいのに……」

「無理してないよ。ん? 俺が一緒だと嫌か?」

「嫌な思いをするかもしれないと思って、ジェフが。言ってたでしょう、私たちのことが巷で話題だって。最近どこへ行っても好奇の目で見られて、ひそひそ囁かれて、感じが悪いったらないのよ。このパーティーでは特にそうでしょうね。でも断る訳にもいかない」

「それじゃ、なおさら一人では行かせられない。悪役の俺がいれば大丈夫さ。君はただ神妙な顔をしていればいい。楽勝だろ?」


祝賀パーティーで神妙な顔というのもいかがなものかと思ったが、ジェフのあっけらかんとした口調に救われた。

ジェフはどうしようもないほど膨れ上がった国の借金を助けてくれた、謂わばヒーローなのに、貴族は全くそれに感謝しない。

正直いって腹立たしいが、そんな貴族たちとこれからも上手く付き合って行かねばならない。私はワトリング家の皇女なのだから。

ジェフと結婚し、皇室から離れればまた違って来るだろうか?


ジェフと共に出席したタイラー公爵家のお誕生日パーティーはとても盛大だった。

公爵家の親類関係はもちろん、社交界の重鎮や華々が勢揃いだ。我がワトリング家からは皇太子殿下夫妻と、珍しくハーシェル殿下も出席している。


やけに気合いの入ったご令嬢が多い理由が分かった。

ジョエル皇太子殿下の側室が決定した今や、次は第二皇子のハーシェル殿下の正妃の座の争奪戦だ。社交界嫌いの次兄はこのような場に滅多に姿を見せないため、今夜は特別なチャンスと言える。

次兄に妾と婚外子がいるのは有名だが、それでも構わないという令嬢がこれほど多いとは驚きだ。


最新の流行を追ったドレスや、何時間もかけて結った髪、首や耳からぶら下げた宝石の数々。明かりを絶やさないようにと夜通し灯される高級な蝋燭の燭台。

今ここに集まっている全てのものを換金すれば、どのくらいのパンになるだろうかと考えた。


贅沢に罪悪感を覚えつつも着飾り、髪を結い、宝石をぶら下げてパーティーに出席することをやめられない。

生きるだけで必死だった前世とは違い、今の私は皇女という立場がある。立場上、続けてきたものを勝手にやめることはできない。

せめてもの気持ちで、今夜はドレスを新調しなかった。一度着たきりだったドレスを引っ張り出して袖を通した。


兄たちが同席していることもあってか、今回のパーティーで、あからさまに私へ不遜な態度を取る者はいなかった。

ジェフに対してよそよそしい態度の者は一定数いたが、歩み寄ってくる者の方が多くて意外だった。

ジェフが名だたる事業家であることはその界隈ではすでに有名らしいが、私との婚約金が破格の金額だったため、その財力に改めて惹かれた者も多かったようだ。

つまりは財力目当て。リンドグレーンの御曹司と懇意になれば何か得があるだろうと目論んだ者たちが、蟻のように群がっている。


貴族といえども家計が厳しくなり、没落する家もある。

そのほとんどが前触れなく、急に倒れることが多い。やはり直前までやめることができないのだ。続けてきた日々の贅沢を。嗜好品の買い物や毎週のように開くパーティー、趣味の狩猟や船遊び。邸宅の増改築。

お金はやはり、あってもあっても足りない。



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