4.何故かお食事
『それでね…』
ワイン片手に楽しそうに話しかける木村課長を前に、私は何故こうなったのかをひたすら頭の中でグルグルと考えている。
あの後、木村課長にうまいこと言いくるめられて、私は食事を共にすることになってしまった。
あの、意中の人は?と尋ねそうになったが、姿が見えないところを見ると、お誘いには失敗してしまったのかも知れない。
なんでもそつ無くこなしそうな木村課長にしては意外だけど。
そして、ピン!と閃いた。
なるほど、私はその意中の人の代打なのだな、と。
それなら、役目をしっかりと果たさなければ。
ズキズキと痛む胸には気付かないフリをした。
最初は気まずかったけれど、木村課長の話術もあり、思わぬ楽しい時間を過ごせた。
そして、お会計の段になって。
私はお財布を片手に青ざめていた。
しまった、中身がない!と。
『すみません、木村課長。今日持ち合わせがなくて…。』
『ん?いや、ここは私が払うから大丈夫…いや、それなら、一つお願いを聞いてもらってもいいかな?』
『お願いですか?私にできることなら。』
そう言った私に、
『女性がそんなことを軽々しく言ってはいけないよ。』
と木村課長は困った笑みを浮かべるのだった。
木村課長に伴われてやってきたのは、夜景が見える室内スポットとして有名なところだった。
『鈴木さんに寒い思いはさせたくないからね。』
木村課長はずるいと思う。
笑顔でそんなことを言うなんて。
『それで、私にお願いとはなんですか?』
『まぁ、焦らない焦らない。』
ふふっと笑った木村課長は、何故かその後昔語りを始めた。
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