3 にんきのさくしゃと、へんなゆめ
それから、そんなことがなんどか、つづいた。
そのさくしゃが作品をとうこうすれば、おれは1:1をつけて、あにきにご報告。
あにきがひょうか――5:5がほとんどだ――をつけて、かんそうを書く。
そのうち、そいつは、ほかのやつらにもみとめられるようになった。
いまや、書けばかならずジャンルのトップ3には入るいきおい。
そいつの『活動報告』は、たのしそうなことばであふれるようになった。
そいつと、そいつのファンとなったやつらの。
そいつのファン。じつをいうとそれは、にんげんだけじゃない。
おれとあにきからはなしをきいた、ようかい長屋の住人。
そして、きんじょのようかいたち。
みんなみんな、そいつの作品を、そしてそいつを大好きになったのだ。
そうしてひと月もするころには、ちょっとしたブームがまきおこっていた。
新作がでれば、朝でもおかまいなしに、かんせいが上がった。
作品がランキングにのれば、そこらじゅうでえんかいになり……
連載が完結したら、またえんかい。
『電子ようかい掲示板』にも、やつの作品をかたりあうためのスレッドが、いくつも立った。
これでいい。これでおれは、こころおきなくやつの作品に、1:1をつけられる。
おれは、ようかい『ひょうか1:1』だ。
だから、ブクマもしないし、かんそうもかかない。
『お気に入り作者登録』だってしやしない。
ひたすら、さくしゃのこころをおってたのしもうとする、わるいようかいだ。
だから、さくしゃのおうえんなんかしない。
ぜったいに、しやしないんだ。
……でも、たまにゆめをみた。
やつのことを、『お気に入り作者登録』して。
新作のつうちがでたら、そっこうですっとんでいって。
ブクマして、わくわく読んで。
ひょうかして、かんそうかいて。
もちろん、レビューだってかく。
うれしそうなやつに、『活動報告』や『感想返信』、ときにはメッセージでありがとう、っていわれて。
するとおれも、うれしくなる。
むねのおくが、ぽかぽかになる。
やつの、あったかくてやさしいことばで。
それも、おれにむけてくれた、おれのための、やわらかなことばで。
けれど、そこで気づくのだ。
おれは、ようかいじゃなくなってる。
このおれ、ようかい『ひょうか1:1』じゃ、なくなってる!
目をさますと、しんぞうがはやがねのように打っていて、ねあせをびっしょりかいていて……
こわくて、だけどせつなくて。
きまっておれは、泣いてしまうのだ。
こんなばかなゆめをみたなんて、ほかのやつらにはぜったいいえない。
もちろん、あにきにも。
でも、あにきにかくしごとなんか、できるわけもなかった。
その日、あにきがおれの部屋にきてくれた。
そして、おもたせの『たいやき』を前に、ずばりとひとこと、きいてきた。
「おまえ、なんか悩みごとでもあるのか?」
「い、いえべつに、なんでも……」
「そうか。
いや、ここのところおまえ、元気がなかったからさ。
このまえまで、あいつの新作出るたびに町じゅう走り回ってたお前が一体どうしたって、みんな心配してたぞ」
「ええっ……い、いや、かんけいないですよ!
えっと、そう、さくしゃたちのおんねんをたべすぎて、おなかいっぱいっていうか……」
おれはむぎちゃをのんで、ごまかした。
そう、それはうそだった。
ここのところおれは、作品に1:1をつけてなかった。
つけられなかったのだ。
あいつの新作がはじまったのに、どうしても。
もちろん、ほかの作品なんか、見にもいけてない。
あにきはそれ以上つっこんでこなかった。
たいやきの頭をばくりとのみこみ、ニコニコ笑ってこういった。
「そっか。
まあ、はらいっぱいはいいことだ。
おまえのおかげで俺も、ここのところは毎日はらいっぱいだからな。
おまえのみつけてくれたあいつ。ほんとに優良物件だよ。
ここんとこじゃブクマ、食っても食っても増えてきてさ!
もうゼンゼン追っつかなくなってきたから、こんどあいつらにも紹介してやろうと思ってんだ!」
おれはコップをおっことしかけた。
たくさんご感想頂き、ななんとレビューまで……嬉しすぎる! ありがとうございます!
次の投稿は朝となります。お楽しみに!