表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

2 ふしぎなきもち

 じぶんの部屋にもどるとおれは、さっそくようかいPCのスイッチを入れた。

 これは、にんげんたちのPCとちがい、でんきがいらない。

 おれたちようかいの出すパワー……『妖力』をエネルギーにしてうごく、すぐれものだ。

 だから、ながい時間つかってると、つかれるんだけど。


 ともあれ、れいのあいつの『さくしゃページ』は、とっくにブラウザブックマークしてあった。

 ショートカットをクリックして、ひらく。

 がめん左がわにならんだ『活動報告』いちらん、そのいちばんうえには……

『はじめて評価いただきました!! ありがとうございます!!』というタイトルがまだあった。


 おれはふん、とはなをならした。

 ほんとになんで、よろこんでんだ、このさくしゃ。

 まんてんは5:5なんだぞ。おれがつけたのは1:1。


 まさか、ひょうかがつくことすら、考えもつかないような……

 じぶんでみても、どうしようもない、作品だったとか?

 なんだか、気になってきた。


 おれは、エモノにする作品をきめるとき、作品のなかみはみていない。

 もちろん、いちどエモノにした作品を、よむこともない。

 けれど、こうなるとぎゃくに、気になってきた。


 だいじょうぶ。おれはいまログインしてないんだから、これはノーカン。ノーカンなんだ。

 そう、じぶんにいいきかせ、さっき1:1をつけた作品を、よみはじめた。



 ――それはまるで、詩のような、童話のような、ふんわりやさしいものがたりだった。

 すじはこびも、ことばづかいも、とてもあったかくって、いつしかおれは泣いていた。

 なんだこれ。なんだよこれ。

 これが1:1って、おかしいだろ!


 そっこうでログインボタンをおした。

 そうして、ひょうかを1:1から5:5に直し……

 そうになったところで、ハッと手をとめた。


 おれはようかい『ひょうか1:1』だ。

 それが、『1:1』いがいをつけたら、それこそ身のはめつだ!

 あぶなかった。大きくいきをつき、ひたいのあせをぬぐった。



 けれど、つぎのひも。そのつぎのひも。

 おれはなんども、その作品をよみかえしていた。

 やさしい。そして、あったかい。

 ひとつひとつのことばさえ、くりかえすたびここちよい。

 やっぱり、おかしい。これがひょうか1:1って、ぜったいおかしい。


 けれど、べつの点を入れてやることはできない。

 だって、おれはようかい『ひょうか1:1』なのだ。

 せめて、だれかほかのやつが、もっといいやつを入れてくれたら……


「そうだ!!」


 * * * * *


 おれはさっそく、あにきの部屋にすっとんでった。

 おねがいをつたえて、あたまをさげると……

 あにきは目をぱちくりとさせて、聞きかえしてきた。


「えーと……つまり、俺がその作品に、評価をいれるの?」

「はい!

 おれはひょうかに1:1いがいをつけられません。

 でも、あにきならできるでしょ?

 この作品よんで、そっちょくにひょうかしてやってください!

 ぜったいぜったい、ちょーいけてるんで!!」

「……なるほど、りょーかい。

 気に入ったら感想や、場合によっちゃレビューもいれるけど、いいよな?

 そうして作品にブクマがあつまってくれれば、俺もおいしいからな!」

「はい! ぜひっ!!」


 かくして、つぎの『活動報告』は『評価とご感想をいただきました!! ありがとうございました!!』になった。

 やった。おれはさっそくあにきをたずねて、お礼を言った。


「ありがとうございます、あにき!

 れいのさくしゃのやつ、めっちゃよろこんでました!」

「みたいだな。

 さいわい過疎かそジャンルだったから、俺の評価で日間ランキング入ってる。

 おとといのイチの分とあわせて週間ランキングにも。

 これではずみがつけば……」

「ですね! えへへ、よかった!」

「……」


 ふと気づけば、あにきがなにやら、びみょーなかおで、おれをみていた。


「あのー、なにか?」

「いや。

 こいつのブクマ食ったらおまえ、怒らないかなーって」

「え?!

 い、いやそんな、おこりませんよ!

 だって、あにきは『ブクマはがし』なんだし。

 おれだって、自分にできないひょうかを、あにきにおねがいしたじゃないですか」

「そっか。ならいいんだ。

 またいい作品みつけたら、紹介してくれよ」

「はい!!」


 ちょっとだけ、ドキッとした。

 あにきがこんなこというなんて、はじめてだ。


 おこるわけなんか、ない。

 むしろ、あにきの役にたてるなら、おれはうれしいし、ほこらしい。


 そういえば、おれがこんなことを……

 だれかの作品を、おすすめるような。

 そんなことをいったのも、これがはじめてだったっけ。


 おれは、てれくさいような、むずがゆいようなきもちになった。

 でも、ふしぎとそれは、いやなかんじじゃなかった。


次回は本日夕刻投稿予定です。

どうぞ、のんびりとお付き合いくださいませm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

7vrxb1598ynq7twi5imn4me7kxdc_ufp_390_u0_

― 新着の感想 ―
[良い点] 妖怪の本分はあくまで守る! だがしかし……! けなげですのー…… ほっこりがとまりませぬ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ