2 ふしぎなきもち
じぶんの部屋にもどるとおれは、さっそくようかいPCのスイッチを入れた。
これは、にんげんたちのPCとちがい、でんきがいらない。
おれたちようかいの出すパワー……『妖力』をエネルギーにしてうごく、すぐれものだ。
だから、ながい時間つかってると、つかれるんだけど。
ともあれ、れいのあいつの『さくしゃページ』は、とっくにブラウザブックマークしてあった。
ショートカットをクリックして、ひらく。
がめん左がわにならんだ『活動報告』いちらん、そのいちばんうえには……
『はじめて評価いただきました!! ありがとうございます!!』というタイトルがまだあった。
おれはふん、とはなをならした。
ほんとになんで、よろこんでんだ、このさくしゃ。
まんてんは5:5なんだぞ。おれがつけたのは1:1。
まさか、ひょうかがつくことすら、考えもつかないような……
じぶんでみても、どうしようもない、作品だったとか?
なんだか、気になってきた。
おれは、エモノにする作品をきめるとき、作品のなかみはみていない。
もちろん、いちどエモノにした作品を、よむこともない。
けれど、こうなるとぎゃくに、気になってきた。
だいじょうぶ。おれはいまログインしてないんだから、これはノーカン。ノーカンなんだ。
そう、じぶんにいいきかせ、さっき1:1をつけた作品を、よみはじめた。
――それはまるで、詩のような、童話のような、ふんわりやさしいものがたりだった。
すじはこびも、ことばづかいも、とてもあったかくって、いつしかおれは泣いていた。
なんだこれ。なんだよこれ。
これが1:1って、おかしいだろ!
そっこうでログインボタンをおした。
そうして、ひょうかを1:1から5:5に直し……
そうになったところで、ハッと手をとめた。
おれはようかい『ひょうか1:1』だ。
それが、『1:1』いがいをつけたら、それこそ身のはめつだ!
あぶなかった。大きくいきをつき、ひたいのあせをぬぐった。
けれど、つぎのひも。そのつぎのひも。
おれはなんども、その作品をよみかえしていた。
やさしい。そして、あったかい。
ひとつひとつのことばさえ、くりかえすたびここちよい。
やっぱり、おかしい。これがひょうか1:1って、ぜったいおかしい。
けれど、べつの点を入れてやることはできない。
だって、おれはようかい『ひょうか1:1』なのだ。
せめて、だれかほかのやつが、もっといいやつを入れてくれたら……
「そうだ!!」
* * * * *
おれはさっそく、あにきの部屋にすっとんでった。
おねがいをつたえて、あたまをさげると……
あにきは目をぱちくりとさせて、聞きかえしてきた。
「えーと……つまり、俺がその作品に、評価をいれるの?」
「はい!
おれはひょうかに1:1いがいをつけられません。
でも、あにきならできるでしょ?
この作品よんで、そっちょくにひょうかしてやってください!
ぜったいぜったい、ちょーいけてるんで!!」
「……なるほど、りょーかい。
気に入ったら感想や、場合によっちゃレビューもいれるけど、いいよな?
そうして作品にブクマがあつまってくれれば、俺もおいしいからな!」
「はい! ぜひっ!!」
かくして、つぎの『活動報告』は『評価とご感想をいただきました!! ありがとうございました!!』になった。
やった。おれはさっそくあにきをたずねて、お礼を言った。
「ありがとうございます、あにき!
れいのさくしゃのやつ、めっちゃよろこんでました!」
「みたいだな。
さいわい過疎ジャンルだったから、俺の評価で日間ランキング入ってる。
おとといのイチの分とあわせて週間ランキングにも。
これではずみがつけば……」
「ですね! えへへ、よかった!」
「……」
ふと気づけば、あにきがなにやら、びみょーなかおで、おれをみていた。
「あのー、なにか?」
「いや。
こいつのブクマ食ったらおまえ、怒らないかなーって」
「え?!
い、いやそんな、おこりませんよ!
だって、あにきは『ブクマはがし』なんだし。
おれだって、自分にできないひょうかを、あにきにおねがいしたじゃないですか」
「そっか。ならいいんだ。
またいい作品みつけたら、紹介してくれよ」
「はい!!」
ちょっとだけ、ドキッとした。
あにきがこんなこというなんて、はじめてだ。
おこるわけなんか、ない。
むしろ、あにきの役にたてるなら、おれはうれしいし、ほこらしい。
そういえば、おれがこんなことを……
だれかの作品を、おすすめるような。
そんなことをいったのも、これがはじめてだったっけ。
おれは、てれくさいような、むずがゆいようなきもちになった。
でも、ふしぎとそれは、いやなかんじじゃなかった。
次回は本日夕刻投稿予定です。
どうぞ、のんびりとお付き合いくださいませm(__)m





