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異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。  作者: バナナマヨネーズ
出会い編

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8 私と生きる覚悟

 異世界生活を始めてから一ヶ月ほどの時が経っていた。

 私はと言うと、二次職のお陰で有意義な毎日を送ることができていた。

 食糧問題は、畑が解決してくれた。

 何を思っていたのか当時の私のことはわからないけど、ゲーム内で売っている植物は全て畑で育てるという暴挙をやってのけていたのだ。

 更には、クエストで得られるもの以外にもドロップする植物もほぼ全てと言ってもいいくらいの種類を育てていたのだ。

 そのお陰で、食べ物に困ることはなかった。

 強いていうと、お肉が食べたいということくらいかな?


 ここで暮らし始めてすぐに、モンスターと思われる生き物に遭遇した。

 バグったままの攻撃力でゴリ押しした結果、モンスターを簡単にやっつけることができたけど、とても食べる気にはなれなかった。


 初めて、モンスターと遭遇した時、このまま殺されてしまうという恐怖で無我夢中で手に持っていた戦斧で応戦していた。

 気がついたときには、ぐちゃぐちゃの肉片となっていたモンスターらしきものの死骸が周囲に飛び散っていた。

 それを見た私は、自分のしでかしたことの恐ろしさでその場で吐いてしまった。

 自分が生きるためだとは言え、初めて生き物を殺したのだ。

 しかも、原型がわからなくなるくらいグチャグチャにだ。

 私は、何度も吐きながら震える手で、自分が命を奪った生き物の残骸をかき集めてから火で焼いて土に埋めた。

 

 それから数日間は、怖くてマイホームの外に出ることができなかった。

 お腹が空いても、何も口に入れることができなかった。

 だって、口に入れた途端に吐いてしまうからだ。

 水だけで数日間過ごして、私は覚悟を決めた。

 今までだって、生きるために沢山の生き物の命を奪っていたんだ。

 ここに来て綺麗事を言っている場合ではないと。生きるためには、他の生き物の命を奪うことは必要なことなのだと。

 綺麗事を言って死んでしまっては、ここで生き直すと決めた自分を否定することだと。

 私は、決めたんだ。

 誰も知らないこの場所で、心からの笑顔を取り戻すって。昔のように、楽しく自由に生きるって。

 もう俯かないって。だから、もう綺麗事なんて言わない。

 私は生きるんだ。

 

 そう決めてからは、少しずつ食事ができるようになっていった。

 だからといって、生き物を殺すことの覚悟ができたかと言うとそうではなかった。

 もしかすると、この先またモンスターらしき生き物に出会った時に、また同じことを繰り返してしまうかも知れない。そう思うと、家の外に出ることが怖かった。

 だけど、前を向くと決めた私は少しずつでもいいから行動しようと心に決めた。

 初めに、マイホームと畑と菜園を囲むように周囲を高い柵で囲んだ。

 

 沢山あった武器を溶かして、ミスリル製の柵を作ることにしたのだ。

 敷地を囲うようにミスリル製の柵で囲ってから、その柵を庭師のスキルを使って、野薔薇の蔦で覆った。

 

 作業が終わる頃には、敷地の外に出ることにも慣れていた。

 

 私は、このまま敷地内で縮こまっているだけでは駄目だと考えて、作業が終わった次の日から魔の森の探索を再開させた。

 

 もしモンスターらしき生物に遭遇したとしても、逃げようと心に決めた。逃げられない時だけ、武器を振るうと。

 そう決めてから、森の中を探索して歩いた。

 モンスターらしき生物を何度か見かけたけど、見つからないように息を殺してやり過ごしたり全力で逃げ回った。

 だけど、そんなある日のことだった。


 今までマイホームの近くで見ることのなかったモンスターらしき生き物が、敷地を囲む柵に取り付いているのが見えた。

 私は、大切なマイホームを壊されてしまうと思った一心から、初めて自らの意思で武器を手にとって戦う決意をしていた。

 

 クマのようでいて、額に角のある生き物は、唾液を撒き散らしながら、理性を失ったような目でミスリル製の柵にガブガブと噛み付いていた。

 その姿を心から怖いと思った。だけど、家を守りたいという一心から勇気を振り絞って角のあるクマに向かっていった。

 

 私の存在に気がついた角クマは、獰猛な雄叫びを上げてから牙を剥いた。

 私はというと、覚悟が決まったからなのか、意外と落ち着いた気持ちで相対していた。

 角クマが、私に向かって大きく腕を振りかぶったところにできた隙きを見逃さずに、私はバックステップで一旦距離をとった上で、後ろ足で地面を蹴って勢いをつけて角クマに迫った。

 角クマは、攻撃が空振りして私に背中を見せた姿勢となっていた。その隙きを突いて、持っていた長剣で首を一気に刎ねた。

 角クマの首が地面に落ちるのと同時に、首からものすごい勢いで血が吹き出していた。

 私は、手に残る感覚に冷や汗が出たけど、今回はなんとか吐くことは無かった。

 だけど、吹き出した血を頭から被ってしまった私は、その生暖かい血に目眩がした。

 どの位そうしていたのか分からない。

 だけど、自分の頬を思いっきり叩いてから敢えて口に出して言った。

 

「静弥!!生きるとはこういうことだ!!生きるって決めただろう!!だから、頑張れ私!!」


 口に出して自分を叱咤し、励ます。

 そうすると、なんだか腹が据わってきた気がした。

 もう一度自分を励ます言葉を口にした。

 

「頑張れ私!!負けるな私!!」


 効果があったのかは分からないけど、冷たくなっていた指先に力が戻ってくるのがなんとなく分かった。

 私は、その場に横たわる角クマの死体を焼いてマイホームから離れた場所に埋めた。

 血の跡が残る場所をどうしようと考えてから、なんとなくキュアポーションをありったけ撒いた。

 キュアポーションで血が綺麗になったことを確認してから、その場で服を脱いでその服も燃やした。

 自分自身もキュアポーションで洗い流す。

 ここが外だと知っていたけど、このまま家に入りたくなかった私は、躊躇いなく全裸になっていた。

 だって、ここには私しかいないことはここ数週間で嫌というほど分かっていたからね。

 身をキュアポーションで清めた後に、アイテムリストから取り出したタオルで体を拭いて、そのタオルも燃やした。

 予備の服に着替えてから、服とタオルを燃やしたときに出た灰も、角クマを埋めた場所に埋めに行った。

 

 この事があってから、私は森でモンスターらしき生物にあっても冷静に対処できるようになっていった。

 最初は、何度か返り血を浴びては、その場で身を清めてからマイホームに帰るということを繰り返していたが、次第に返り血を浴びずに済むようになっていった。

 だけど、森で遭遇するモンスターらしき生物を口にする気にはなれなかった。

 それに、普通の動物らしき生き物もいたけど、捌き方が分からないから命を奪う気にはならなかった。

 だけど、そろそろお肉が恋しいよ。

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