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12 私は夢オチに期待していた

 気が付くと朝だった。そして、とても嫌な夢を見た気がして、全然眠った気がしなかった。そんな目覚めだった。

 しかも、自分の部屋ではなくリビングのソファーで眠るというこの暴挙。

 昨日一体何があったんだっけ?

 そんな事を考えながら、背伸びをする。

 

「う~ん。なんだかすごく疲れた……。なんでソファーで寝てたんだろう?」


 誰からも返事がないと思っていたのにもかかわらず、知らない男の声が私の問いに答えた。

 いや、知っている声だ。

 

「すまない。どうしていいのか分からなかったから、ソファーに寝かせてしまった」


 はぁ。夢じゃなかったのね。昨日の出来事は……。

 夢であってくれればよかったのにと思いながらも、私に答えてくれたヴェインに返事をした。

 

「はぁ。そうですか……。で、どうしてまだいるんですか?」


「おっ、お前!!昨日僕の質問にも答えすに突然爆睡しやがって!!」


 あっ、そうだった。昨日、アグローヴェになにか聞かれていたような?なんだっけ?まあいいや。それよりも、お風呂に入ってご飯にしよう。

 

 私は、着替えを取りに部屋に向かう。だけど、何故かヴェインとアグローヴェが後を付いてきた。

 いやいや、どうして後を付いてくるの?


 あなた達はカルガモの親子ごっこでもしてるんですか?そうなんですね?それでもいいですけど、私を巻き込まないで欲しいな?

 だけど、私は思ったことを口にはせずに、二人を無視してお風呂場に向かった。

 二人は、そんな私の後を無言でついてくる。

 そして、二人が靴を履いたままだったことに気がついた私は、蟀谷がピクリと引きつるのが分かった。

 お風呂場の扉の前で立ち止まった私は、無言で二人の方を振り向いていた。

 後方にいた二人を改めて見て、そのイケメンな顔面に尻込みしそうになったけど言うことは言わないといけない。

 ヴェインは、キラキラと輝くような金髪をかき上げるような仕草をして私を見下ろしていた。長めの前髪の間から覗く瞳は、蒼穹を思わすような綺麗な蒼色をしていた。

 だいぶ高い位置にある顔は、身長の割に小さく小顔で整った顔をしていた。

 意思の強そうなキリリとした眉毛に、優しそうな青い目。私を見下ろすその表情は、ちょっとだけ眉を寄せて困った表情をしていた。

 何このイケメン……。困っているのは私の方だっていうの!!

 それに、弟のアグローヴェもイケメンだった。

 同じく、煌めくような金髪をしていた。流石兄弟ね。弟も、綺麗な青い目をしている。

 ヴェインに比べると、細身で小さいけど十分均整の取れた体つきをしている。

 柳の眉は繊細そうだけど、切れ長の瞳は意志の強さを私に伝えていた。

 アグローヴェは、不機嫌そうな態度を隠そうともせずに、これまた私を見下ろしていた。

 

 私は、イケメンに負けるものかという気持ちで、勇気を持って二人を見上げていった。

 

「どこまで付いてくるんですか!?付いてこないで下さい!」


 私がそう言うと、更に困ったような表情になったヴェインは頬を掻きながら言った。その頬には、昨日私が付けた傷が薄っすらと残っていた。


「えっと、君と話がしたくて……。お願いだから、少しだけでいいから、俺達に時間をくれないか?」


 彼の頬の傷を見てしまい、少しだけ湧いた罪悪感から視線をそらしながら、ボソボソと返事をしてから彼らの返事を聞く前にお風呂場の扉を開けて中に入った。

 

「分かりました……。でも、お風呂に入りたいから一人にして下さい……」


 閉じた扉の向こうから、慌てたようなヴェインの声が聞こえてきた。

 

「分かった。ありがとう。ごめん、リビングにいる。絶対にここには近づかないから安心してくれ!!」


 遠ざかっていく2つの足音を聞きながら、私はしまったと思ったがもう遅かった。

 

「はぁ。土禁って言い忘れた……」


 他人がいる状態で、ゆっくりなんてしてられないと、いつもの倍の速度で体を洗い、お湯にも浸からずに急いで上がった。

 身支度もそこそこに、リビングに向かうとヴェインとアグローヴェが所在なさ気に立ち尽くしていた。

 

 ため息とともに、私はこの場面では似つかわしくはないけど、ずっと気になっていた靴のことを言ってしまっていた。

 

「はぁ。二人共、ここは土禁です。直ぐに靴を脱いで下さい。朝食の前に、貴方方が汚した廊下を掃除して下さい。掃除が終わったら、一緒に朝食にしましょう」


 そう言ってから、二人に靴を脱がせて、掃除道具を渡した私は、一人キッチンへと向かっていた。

 

 簡単な朝食の準備が終わる頃には、掃除を終えた二人がリビングに立ち尽くしていた。

 そんな二人を横目に、リビングのテーブルにパンとサラダとスープを並べた。

 

 並べ終わっても、二人は一向に立ち尽くしたまま動こうとしなかったので、二人を手招いた。

 

「もう、こっちに来て下さい。朝食にしましょう。食べながら、話しましょう」


 私がそう言うと、顔を見合わせた二人はゆっくりとした動作でテーブルに着いた。


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