第零話 プロローグ
初めまして。ちゃんと読んでもらえるか不安ですが頑張って書いていきます。
飽きないようにやっていきますが更新止まったらごめんなさい。
Hello,world.
初めましてこんにちは。私の名はラスボス=マオウ、とある大人気RPGゲームでラスボスをやっている。Gとゲームで意味が被ってる?そんなことはどうでもいい。名前が適当?そもそもゲーム中も魔王としか言われたことがない。今考えた。いや、今そんなことは関係ない。大事なのはここがどこかわからないことだ。
「ここは……どこだ?私はいつも通り魔王城の玉座に座って勇者を待っていたはず……。」
景色、空気、鳥(?)の声。どれをとっても知っているものは何一つない。見渡す限りの草原を前に、私は思案する。いや、気づかなかっただけで背後には森があるが。これはあれだろうか?異世界転移とかそういうものだろうか?だとしたら帰り方は?そもそもなぜデータ上の存在である私がそういうことになる?ていうかなんで魔王?
とりあえず思い出してみよう。何があったのか。
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「魔王さま!勇者たちが魔王城の門前まで到着いたしました!」
「うむ、報告ご苦労。下がれ、風将ヴィンド。」
「はっ!」
「……また来たか、勇者。」
私はいつも通りに玉座で勇者たちの攻略を待つ。そう、いつも通りに。プレイヤーと勇者は知らないことだが、私はもう何度も勇者たちと戦った。もちろんそれぞれの動きは微妙に違う。しかし、同じ顔が何度も何度も私の前に現れるのだ。いい加減飽きる。それに出てくるのは物語の終盤……RPGゲームの魔王は暇なのだ。何か新しいこと起きないかな……。
「それに負けるのはほぼ確定しているのだしな……。」
ラスボスとは負けるべきものだ。絶対に勝てないラスボスが存在するゲームなどクソゲーに他ならない。レベルが十分に上がり伝説の武具をそろえた勇者には私は絶対に勝てない。
似たような行動、暇な時間、確定している敗北。ラスボス視点ではそれこそクソゲーなのである。
正直勘弁してほしい。
とはいえこれは仕事であり義務なのだ。魔王としての職務はデータ上ないに等しいがそれでも逃げることは許されない。
「今日何回目だったであろうか……。18か?ん?19だったか?まあどうでもよいか。ポーションはどこにあったか……。」
つい1時間ほど前にも勇者と戦った。その時についた傷と消費した魔力を回復しなければ次の勇者と戦うことなどできはしない。魔王になって、そして勇者が来始めてからずっとこれの繰り返しだ。負けて、回復して、また負けて、回復して、たまに来るレベルの低い勇者に勝って、次に来た勇者に負ける。ここまで言えば私がどれほど衰弱しているかわかるというものだろう。一つのゲームのブームが収束を迎えるまでにはある程度の時間を要する。このゲームは発売からまだ2か月ほどしかたっていないため、この生活はまだまだ続くだろう。
「今城門に到着したということはここに来るまでに大体30分ほどかかるだろう。その間に準備を進めなければならんな。」
そのときだった。
突然の揺れが城を襲った。ここはデータ上の存在であり、この城内にそのような魔法を使う輩はいないにもかかわらず、だ。もちろん勇者一行が覚える技の中にもそのような魔法はない。そんなことができるのならとっくにこの城は崩れている。
「魔王さま!ご無事ですか!?」
「ヴィンドか!何が起こっている!」
「もうしわけありません!私めにも何が起こっているのかさっぱりな状況でございまして……。」
「ならばアルスを呼べ!土将たる奴ならば知っていることがあるやもしれぬ!」
「私めならばここに。しかしこの地震には魔力がこもっておりませぬ。魔法ではない何かかと愚考いたします。」
魔王直属の五将軍の一人、アルスを呼びつけるが答えは変わらない。むしろ謎は深まるばかりだ。このような大掛かりな異変を起こせるのはこの世界において魔法のみである。魔道具などといったものは存在しない。
やがて周囲の風景が1と0に分解されていく。それに伴い物理的に上方から世界がだんだんと黒く染まっていく。
「魔王様!閨槭%縺医∪縺吶°??シ魔王縺輔∪?」
「何を言っている!意味が解らんぞ!」
しかしそんな部下の何と言っているかわからない言葉すらどんどん聞こえなくなっていく。ほかのゲームのラスボスとも会話を行ったことはあるが、このような現象は聞いたことがない。
やがて意識も闇に消えていく。視界が黒く染まり、眠くなったわけでもないのに自然と瞼が閉じる。
覚えている記憶は、そこまでだった。
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結局何が起こったのかわからなかった。バグか何かだろうか?しかしもしそうだったとしても知らない場所に飛ばされるということはないはずだ。
「一体何があったというのだ……。」
この状況に対応できるマニュアルなど読んだことがない。電子説明書にもそんなことは載っていなかった。……プレイする人間が読むのだから当たり前か。
とにかく、帰り方を見つけなければならない。一刻も早く帰らなければゲームにどんな影響を与えるか、考えただけでも恐ろしい。苦労してレベルを上げて魔王を倒しに来たというのに、その魔王が存在しないのだ。「ラスボスが倒せない」よりもひどいクソゲー要素だろうことは言うまでもない。
そんな私に近づく影があった。どう見ても人間だ。人間の娘だ。歳は16か17といったところだろうか?長く伸ばした銀髪と翡翠のような碧眼が美しい。本人が気にしている可能性があるので口には出せないが、胸は小さいほうだ。好奇心ゆえなのだろう、こわばった表情をしながらも、足取りに迷いはない。とても遅いが。
やはりというかなんというか、娘は私に近づくと口を開きこう言った。
「※※、※※※※※※※※※※?」
「は?何て?」
おかしい、私は発売される国の関係上大体の国の言語は理解している。むしろネイティブばりに話すことも可能だ。そんな私が理解すらできないとはどういうことだ?まさか本当に異世界に来たとでもいうのだろうか?
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私、見てしまったんです!
くさっぱらがいきなりピカーーーって光りだしたかと思ったら、その中心に肌が青くて、角が生えて、すっごくきれいな服を着た人じゃない人がいたんです!あんな人見たことありません!
でもあの姿……。あの人はまさか伝説の……。
もしそうなら私はあの人にお願いしたいことがあるのです。でもそのためには彼に話しかけなくちゃいけません……。自分とは全然違う姿だし、そもそもあんな感じの見た目の人見たことありません。伝説のあの人じゃなかったら私は死んでしまうに違いありません。
それでも声をかけなきゃ始まりません。それにあの願いが叶わないのであれば私がここに生きている意味はありません。
好奇心がないと言えば嘘になります。恐怖がないと言っても嘘になります。あの人のことが気になりますし、それと同じくらいには怖いです。でもそれじゃ何も始まらないんです!おじいちゃんもそう言ってました!生きてますけど!
だから私はそーっと近づいて聞いてみたんです。
「あの、あなたはどなたですか?」
「※?※※※?」
困りました!何言ってるかわかんないです!ていうかたぶん私の言葉も通じてないです!語尾が上がってるから疑問形なのでしょうか?
どうしましょう、これじゃあ連れて帰ることができません……。
ていうか何者なのかの判別もできないじゃないですか!
うう……どうしましょう……。涙がこみ上げてきました……。
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娘がうつむいている。言葉が通じないとわかって落ち込んでいるのだろう。私もそうだから気持ちはよくわかる。たぶん彼女が考えていることよりも深刻なのではないだろうか?意思疎通ができないということはつまり、もし帰る方法を知っているものにあってもその方法が聞き出せないということなのだから。いや。そんなものがどこにいるのかすらも知ることができないということだ。これはまずい。早急にこちらの言葉を覚える必要があるだろう。
娘の目尻にきらりと光るものが見えた。泣いた!?言葉が通じなかっただけで!?それともやはり怖いのか?私の見た目はどう見ても人間からほど遠い。その可能性も捨てきれない。
「大丈夫だ!私、怖くないぞ!」
言葉が通じないことはわかっているがそれでも声をかけない選択肢はない。私のせいで人間が泣いた、それだけで心にクるものがあるのだ。罪悪感とか。
さて、これからどうするべきか……。空を見上げ、そんなことを考える。集落に行きたいがこの見た目では怖がらせてしまうだけであろう。偽装の魔法は使えるわけだから人間と同じような見た目になることはできるが、あくまでも見た目だけだ。角とかは触れる。それでも当分は大丈夫か……。ならばあとは言葉を覚えるだけだ。言うに易し行うに難し、1年ほどかかるのではないだろうか?心配だ。できる限り早く帰らなければならない。……早く言葉を覚えなければ。
とまあこんな感じで、私の異世界での物語は幕を開けるのだ。ここにいつもの見慣れた勇者がいたらどんなに楽だったことか。言葉は通じない、ましてや知り合いなど存在しない。その結果どうなったかと言えば……。こうして話をしている時点で察してほしい。まあそれもいつか話す時が来るだろう。その時を楽しみに待っていてほしい。この物語は、まだ始まってすらいないのだから。
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