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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

サイバーパンクっぽい話を書こうと思ったが、単なる陰謀的な何かになっただけというお話 1

「終わったな」

 最後の一人に銃弾を撃ち込み、そいつが倒れてから呟く。

 無線を通してそれが他の仲間にも伝わってるはずだった。

「他も終わりか?」

『ああ、こっちも終わった』

『周りにも残ってるのはいないはずだ』

『逃げ出したのもいないはずだ』

 仲間から返事が来る。

 建物の中に一緒に入った者、外から狙撃をしてた者、周囲を見張っていた者。

 それぞれがそれぞれの立場からの報告も入る。

「それじゃ、後片付けして帰るぞ」

 そう言って最後の仕上げをしていく。



 死体や戦闘の痕跡を消す……わけではない。

 かつて治安の良かった時代ならば、そういった事も必要だっただろう。

 だが、年寄りが語る昔話のそんな頃ならともかく、今はそんな事をする必要は無い。

 今時、人が死ぬなんて珍しくもない。

 普通に暮らしていても、流れ弾などのとばっちりで死ぬ事もある。

 強盗が押しかけてきて、家財道具と一緒に命を奪われるのも珍しくない。

 女だったら、更に大事なものも奪われるだろう。

 なので、死体が転がる程度じゃたいした問題にはならない。

 警察だって余程の事がない限り熱心に犯人捜しはしない。

 警察が返り討ちにあう事も珍しくないのだ。

 職務熱心なお巡りさんは早いうちに殉職する。

 残るのは事件の解決よりも権限を使って悪さをするような連中ばかりである。

 そんな御時世なので、後片付けで死体を処分するなんて事はしない。

 やるのは、掘り出し物を探すための家捜しである。



 倒れてる死体から、使えそうな物をかっぱらっていく。

 銃器や防弾具は言うに及ばず。

 体に埋め込んである各種機器も、使えそうなものは次々に取り外していく。

 戦闘力を強化するために、身体能力を上げるために体に機械を埋め込む事など当たり前になっている。

 そうした機械は取り外して整備が出来るように、着脱が可能になっている。

 身体との接触面の部分はさすがに取り外せないが、そうでない部分は簡単に回収出来る。

 そして、これらを横流しする事で、それなりに小遣いを稼ぐ事が出来る。



 他にも金銭や携帯通信機器にパソコンなどなど。

 金になりそうで持ち運びが比較的簡単な物は結構ある。

 それらを可能な限り改修していく。

 危険な襲撃をこなした後である。

 こういったご褒美を持って帰るのは、仕事を成功させた時のご褒美であった。

 当然ながらやってる事は略奪であり、強盗である。

 人も殺してるので強盗殺人にもなろうか。

 本来なら許される事ではない。

 しかし、咎める者は少しはいるかもしれないが、取り締まる者はいない。

 そういった状況で目の前のお宝を放置するような間抜けはここにはいない。



 仮にここから即座に撤収しても、事の成り行きを見守ってる連中が金目の者を奪っていく。

 火事場泥棒を働くような、そうせざるえないような生活困窮者はこの辺りは多い。

 そういった者達が、誰もいなくなったのを見計らってやってくる。

 そして、本当に全てを持っていく事になる。

 それこそ死体すらも持ち出し、生身の体を部品単位にして売る事になるだろう。

 臓器移植のための部品として、生身にはそれなりに需要がある。

 クローン技術の応用で身体の部位を再生する事も出来るが、それは手間と金がかかる

 なので、時代遅れとなった臓器移植にはいまだに需要がある。

 免疫の問題を、完全ではないがある程度は解消出来るようになってるのも大きい。

 このため、比較的安価な欠損部位を補う手段として、臓器移植はまだまだ現役だった。

 以前よりかなり手軽に行えるようになったので、一般人でもやりやすいくらいだ。

 その分、提供される臓器は常に不足気味である。

 こんなわけで死体にもそれなりの需要があった。

 その他の、まだ使える物であるならば言わずもがな。

 そんな訳なので、一番美味しい金になる物を残すなんて、もったいなくて出来ない。



 だが、そんなものよりも大事なものが今の彼等にはあった。

「あったか?」

「ああ、たぶんこれだ」

 目的の物を見つけた物が、小さなものをかざす。

「社員証って、これでいいんだよな」

「ああ、多分間違いない」

 事前に渡されていた画像と目の前の物を比べる。

 確かにそれは探すように言われていたものだった。

 それを見つけるために彼等はここにやってきていた。

 少々の手違いで奪われたので奪還して欲しいと。



 たかだか社員証ではある。

 だが、されど社員証である。

 この時代、企業の力は大きい。

 一部地域に限っていえば、実質的に統治してる所もあるほどだ。

 その為、たかが企業などという事は出来ない。

 しかも、今回探して持ち帰れと言われたのは、そんな統治をしてる大企業のものである。

 よからぬ者達の手に渡るだけでも面倒が起こる可能性がある。



 今回の場合、そういう面倒な事が起こる可能性が高かった。

 何せ、企業の社員が良からぬ輩の所に出入りしてる証拠になりうるからだ。

 とはいえ珍しい事ではない。

 仕事を有利に進める為に、企業も荒事を行う事は多い。

 そうした作業の為に、人員を外注する事もある。

 そうした事を担当する者達は、荒くれ者の所に出入りする。

 そして、金と武器を渡して、危ない作業をさせるのだ。

 そうして対立する企業に圧力をかけたり、離反を考えてる系列企業に再考を促したりしていく。

 話し合いよりも直接的で手間がかからず、それでいて効果の高い手段だ。

 だが、そうした事を請け負う者達がいつも言う事を聞いてくれるわけではない。



 荒事を好んで行うような連中である。

 誰かの風下に立ってる事に納得するわけがない。

 隙があればすぐにでも刃向かうものだ。

 相手が企業であってもそれは変わらない。

 むしろ、格上の相手を出し抜いたとなれば武勇伝になる。

 企業の窓口である交渉役を殺してしまう事だってある。

 今回もそういう事態が発生し、社員証が奪われたというわけである。



 そうした社員証が外部に持ち出されれば色々と面倒になる。

 競合相手の者達はこれ幸いと糾弾を始める。

 強盗・襲撃・殺人などを平気で行う者達と会社が接点を持っていたなどと。

 自分の事を棚にあげて、大声で宣伝を開始するだろう。

 ある事ない事でっちあげながら。

 そうなれば世間も合わせて糾弾を開始する。

 巨大な力を持つ企業に不信感や嫌悪感を抱いてる者は多い。

 職場であり必要な物を製造販売してる存在であってもだ。

 なまじ力を持ち、その力で強引な事をするから反感を買うことの方が多い。

 それは系列の下請けであっても同じである。

 むしろ、下請けだからこそ圧力を直接受けるものである。

 ?一時的なものであっても、様々な方面から集中攻撃を受ける。

 場合によっては、政府すら介入してくるだろう。

 かつてより力を失ったとはいえ、いまだに国家を支配してるのは政府である。

 それらが本気を出してきたら企業もひとたまりもない。

 実際に倒産させられる事は無いにしても、相応の供出を求められるだろう。

 金にしろ利権にしろ。

 不要な出費を強いられるのは確実である。



 そんな事態にまで発展する事はないだろうが、何がどうなるか分かったものではない。

 企業としては、何であれ面倒が発生する前に片付けたい。

 だから、同じように外注先の者達を使って問題の解決をはかった。

 企業を裏切った者達への制裁を兼ねて。

 また、外注される者達への見せしめという意味もある。

 企業を裏切ったらどうなるかという。

 暴れる事しか考えない者達も、それで多少は考える事になる。

 同じ企業に雇われてる者同士での不毛な殺し合いをさせられるのだと。

 それでも企業を裏切ろう、出し抜こうと考える者は出てくる。

 だが、こうして実際に制裁をされる者が出れば多少は落ち着いていく。

 馬鹿な事をやらかせばそれなりの措置が下されると誰もが悟る。

 そして、荒事を受け持つ者達は企業からの仕事を淡々とこなすようになる。

 そのうちまた誰かが不毛な争いをしでかすようになるのだが。

 それでも、言ってもきかない、そもそも話し合いなんぞ考えてもいない輩にはこれが有効な手段になる。

 荒事を仕事としてる連中は、荒い手段が効果的なのである。



「それじゃ、これで終了だな」

「ああ、ご苦労さん」

 取り返した社員証を依頼主に渡す。

「それじゃ、今後もごひいきに」

「ああ、何かあったら頼むよ」

 そう言って社員は報酬を渡す。

 金銭と弾薬など。

 いずれも仕事に必要なものだ。

 双方共に必要なものを手に入れて分かれていく。

 必要な事以外は何もしない。

 お互いにこれは仕事の関係と割り切ってる。

 だからこそそれ以上踏み込みはしない。

 世間話も何もない。

 そんなものどちらも望んでもいない。



 企業の交渉窓口である者は、荒事や揉め事を起こす者を警戒する。

 荒事担当者も企業の持つ力とそれ故の横柄さを嫌っている。



 そんな両者が接点を持つのは、互いに必要なものを提供し合う商売仲間だからだ。

 それ以上にはならないし、それ以下になる事もない。

 企業は動ける人間が欲しい。

 荒事を担当してる者達は金が欲しい。

 そんな利害が一致してるから双方は互いに手をとりあってる。

 ただそれだけである。

 だが、そんな利害の一致を続けるくらいには理性がある。

 また、立場をわきまえてもいる。

 企業の人間は横柄になりすぎないように態度に気をつけてる。

 荒事を担当してる者も下手に企業に逆らわないようにしている。

 ある意味理想的な関係である。

 それが出来ないでどちらかが、あるいは両方が不幸になる事もあるのだから。

 今回、回収対象になった社員証がそれを物語ってる。

 その社員証をもっていた者は、殺した者達の担当者であった。

 荒事揉め事を担っていた者達に、言ってしまえば外注先に殺された。

 そして、殺した者達も別の外注業者に殺された。

 そんな、失敗した連中との関係と、仕事を完遂した者達の関係は見事な対比を描いていた。



 回収した社員証を見て、社員はため息を吐いた。

 いくら何でも立ち回り方が下手だろうと思って。

(もう少し考えて動けよ)

 同じように荒事を外注する部署にいる。

 だから殺された相手の事も知っていた。

 何かにつけて横柄な輩だった。

 上にへつらい、下に威張り散らすという典型だった。

 外注先に対してもそういった態度をとっていたのだろう。

 そんな事をすればどうなるか分かりそうなものだが。

 しかし、今回の事件の原因となった者は、そういった事を考えない性質の人間だったようである。

 不思議な事に、企業にいるから問題は無いと思っていたようだった。

 そう見える素振りがそこかしこに見える輩だった。

(会社の看板だってそこまで守ってくれないっての)

 反感を買って殺される者などごまんといる。

 それこそ所属部署ではよく聞く話だった。

 だからこそ、己の態度に気をつける者もいる。

 しかし、世の中にはそうでない者もいる。

 何故かは分からないが、自分は絶対に大丈夫と思い込む輩が。

 あるいは、自分の背負ってる看板や肩書きが問題から守ってくれると思う者が。

 今回殺されたのは、どちらかというと後者の方である。

 会社を万能の道具や神の如き存在と勘違いしているように見えた。

 会社の看板があれば、下っ端の連中など逆らいはしないと。

 そんな事は無いのに、そう思い込んでるように見えた。

 その結果、殺されて社員証を奪われるという失態をおかした。

 あまりにも馬鹿馬鹿しい結果に泣きたくなる。

 社員であるならば、もう少し頭を使えと思ってしまう。

 何のために社員をやってるのかとも思う。

 そんな輩の死である。

 同情も憐憫もしなかった。

 その愚かさに呆れて嘆いて蔑むしかなかった。

 せいぜい、こうはなるまいという戒めとして、教訓の材料として用いるくらいである。

 おかげで忘れかけていた緊張感を取り戻す事は出来た。

 今後もこのような事があると忘れないで事にあたっていこうと思った。



 回収された社員証はそのまま上司に渡され、今回の事件は終了した。

 会社は使える駒を一つ失ったが、それが大きな問題になる事は無い。

 むしろ、馬鹿な社員と愚かな外注が減った事で余計な経費が消えた事の方が大きい。

 愚か者というのは、そのうち大きな失態をおかして会社に損失を与える。

 それを思えば、今回のように小さな問題で事が終わってくれた方がよっぽど大きな利益になる。

 少なくとも、今回死んだ社員の給料とそいつと繋がっていた外注先に払う報酬を用意する必要がなくなる。

 その分の予算を別の方面に割り振った方が、よっぽど大きな利益になるだろう。

 会社としてはその方がありがたい。

 それに、今回死んだ程度の人間などいくらでも補充はきく。

 社員にしても外注先にしても。

 使える駒は一時的に減るが、それも程なく穴埋めが出来る。

 もとより荒事揉め事を担う部署は常に欠員を発生させるものだ。

 そんな事を問題にするような者はいない。

 所詮その程度の価値しかない存在であった。

 企業と同僚達にとっては。



 そんな事が延々と続いていく。

 優秀ではなくてもそこそこ考える事が出来る者が生き残る。

 そうでない者が死んでいく。

 そんな当たり前があちこちで繰り返されていく。

 何も珍しくもない、そんな事が日常になって定着している。

 今日もどこかで誰かが荒事に励み、殺し殺されていく。

 そして、空いた場所に別の誰かが入り込んでいく。

 無くなった部品の代わりに新しいものがあてがわれるように。

 そんな事が日常としてここでは当たり前のように行われていく。

 いつまでも、何時終わるともなく。

 近未来のディストピア、サイバーパンクって言葉になぜかひかれる。

 銃器とサイボーグとネットワークを上手く使ってなにかしたいところ。

 けど、なかなか上手く出来ないのが悩ましい。


 

 適切なキーワードが思いつかない。

 何かアイデアがあったらメッセージにて。



 誤字脱字報告も待ってる。

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