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【72】

 暖かな温もりが私を包んでくれてこのままずっと包まれていたい。


「...ん」


 まだ起きたくなくてその暖かな温もりに擦り寄る。すると硬い何かに当たるがそれがまた気持ち良くて離れたくなくなる。


 クスクス。と上から笑い声が降ってきて漸く目を開ける。


「...え?」


 目を開けると私を抱き寄せて頭を撫でながら私を見ているエルがいた。


 まだ覚醒していない頭を必死で回転させるが何故私がエルと同じベッドで寝ているのか分からず、離れようとしてもエルの引き締まった腕が更に抱き寄せる為、離れることも出来ない。


「ふぇ!?え、エル!?」


「ロゼ、おはよう。身体は平気?何処か痛かったり辛かったりする場所はない?」


 状況を把握しようにもエルに抱き締められている為、頭が上手く回らない。


「お、おはよう?...じゃなくて、どうしてエルが?...ん?...私、確か...捕まってて...。っ!!アンナは!?アンナは無事!?」


「落ち着いて、ロゼ。ロゼの侍女もちゃんと無事に保護して今は寝ているよ。ロゼが起きたの皆に知らせてくるね。後、医者も呼んでくる。大人しく寝ていてね。」


 そう言うと私の頭をポンポンと撫でてエルは部屋を出ていった。


(はぁ〜緊張した!何あのシチュエーション!起きたらイケメンがいた。とか心臓が...。)


「か、えって来たのね...。よかった、本当によかった...。」


 自分の部屋を見回して無事に帰ってきた事を実感した。




 バンっ!!!!

 扉が勢いよく開けられてお父様達が雪崩のように部屋へとやってきた。


「ロゼ!目が覚めたんだな。」

「あぁ、無事で良かったわ...本当に。」


 お父様とお母様が瞳を潤ませて私を抱き締める。


「ロゼちゃん、良かった。」


 リッカーお兄様も泣きそうな顔で私の方へと歩いてくる。


「ロゼ、何処も辛い所は無いか?」

「痛い所はない?」


 いつも元気なおじい様が潤ませて私を心配していて、おばあ様も辛そうに顔を歪ませていた。


「...ご、心配お掛けしました。大丈夫ですわ。何処も痛い所も辛い所もございません。」


 皆が心配してくれているのが暖かくて有難いな。って思った。

 前世では猫を助けてそのままだったし、私が死んだとして悲しんでくれた人がいたかな?って想像するけどあまり思い浮かばない。唯一の友人だと思っているエリカでさえ、私がいなくなって泣いてくれている。と断言出来ない。


 通っていた学校では慕ってくれていた人達もいたし、会社でも良好な人付き合いはしていた。と思う。だけど、今の家族みたいに心から私を心配してくれて涙を流してくれる存在はいなかったと思う。


 そう思うとここに転生出来て本当に良かった。


「...ありがとう、ございます...。」


「ロゼちゃん、貴女が無事に帰ってきてくれて本当に良かったわ。最近リベルに付きっきりだったから...ごめんなさい。こういう事が起きて実感するなんて駄目な母親よね。無事に帰ってきてくれてありがとう。...ロゼちゃん。」


 涙を溢れさせてお母様は私を先ほどよりも強く抱き締めてくれた。お母様のその温もりとその言葉に捕まっている時の恐怖から解放されて我が家にちゃんと帰ってきたんだ。と思えた。


 そしたら、涙が止まらなくなってしまった。


「お母様...お母様は駄目な母親なんかではありませんわ。産まれたばかりの妹に付きっきりになるのは当たり前ですもの。ちゃんと、お母様の愛情は伝わっています。ありがとうございます。」


 多分、涙でぐちゃぐちゃであろう自分の顔を精一杯、お母様に微笑んで見せた。



 だいぶ経ってからやっとお母様達が落ち着いてきたらエルがお医者様を連れて来てくれて体調等を検査してくれた。

 軽度の栄養失調と寝不足だと診断されたのでアレンが料理長に栄養ある物をと頼んでくれた。出来上がるまで少し寝かせてもらう為、皆には部屋を出てもらうことにした。


「...エル?」


 エルだけがまだ部屋に残っていてどうしたのだろう?と聞くと


「また目を離したらロゼが何処かへ行ってしまう気がして...だから、ここにいても良い?」


 耳も尻尾も垂れていて、上目遣いで聞いてくるエルに駄目だとは言えずに了承すると嬉しそうに私のベッドへと入ってきた。


「え?...え、エル?ここにいるだけじゃなくて?」


「うん、触れてないと何処かへ行っちゃうかもしれないでしょ?だから僕が抱きしめててあげる。だから、安心して寝て良いよ。」


(...い、いや。安心して眠れない気がするんだけど...でも、断ったら断ったであの可愛い耳と尻尾が垂れて捨てられた仔犬のような眼差しで私を見るのよね...それはそれで耐えられない。...仕方がない...か?)


 そう思うようにして、私はエルの体温を感じると思ってたよりも疲れていたのかすぐに夢の中へと旅だった。





ここまで読んで下さりありがとうございます。

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