【8】
(.........ん?...え?)
私の目の前にいたのは、犬でもなく猫でもなく、馬でもなくウサギや鳥でもなかった。
目の前にいたのは...人だった。
「え?...お、お父様?」
(私の目がおかしいのかな?え?目がおかしいから人にしか見えないのかな?え?医者呼んでもらった方が良いかな?)
「お父様...私の目がおかしいのかな?...動物では無くて、人に見えるのだけど...」
「はははっ!ロゼの目がおかしいのでは無いよ。ここにいるのは獣人なんだよ。」
「...獣人?」
そう言われてちゃんと見てみると確かに獣の耳がピコピコと動いている。たぶん、後ろには尻尾があるのだろう。
「この子はね、私達の領地にある孤児院にいたのよ。...違法の闇オークションがあってね。そこで売られていて、こちらで保護したのよ。」
「...闇、オークションは、どうなったの?」
「その闇オークションは潰したから気にしなくて良いよ。...でも、そこで結構暴力ふるわれていたみたいでこの子は、声が出せないんだよ。」
「そ、んな...酷い...」
「精神的なのが影響しているらしいからロゼ、仲良くしてあげなさい。ロゼの1つ下だから弟だな!狼の獣人で獣化もできるから仲良くなったらお願いしてみたどうだ?」
「え?そうなの?仲良くなるわ!元気にもなって欲しいし、声も聞きたいもの!」
「そうだわロゼ、この子に名前をつけてあげたらどう?」
「...名前...、私が付けて良いの?」
「孤児院でもちゃんとした名前は付けられてなかったみたいなんだ。闇オークションから保護してすぐに私が引き取ってしまったから」
「そうなのね。分かったわ!...どうしようかなぁ~...」
「名前って悩むわよねぇ」
「...!!!決まったわ!エルピス...エルにする!」
「「エル?」」
両親が同時に声に出す。流石、仲良し夫婦である。
「エルピスは希望って意味なの。声を出して欲しいし優しい人も世の中にいるんだよ!って希望を見出して欲しいから」
(そういう希望を持って欲しいから。確かギリシャ語とかだったような?前世の事がだんだん曖昧になってきたからちょっと怪しいけど。まっ!良いよねぇ)
「そう...希望ね。何処の言葉なの?初めて聞いたわ」
「そうだな。良い名前だが、本当に何処の言葉なんだ?」
「え...え、ーと...ほ、本を、ね。本を読んだ時にね。確かに見たな~って」
「そうかそうか。ロゼは物知りだな」
「ロゼは天才ね!」
「あははは...」
なんとか誤魔化してみたけど今度は違う方向へ話が進んでいくから止めに入った。
「そ、そんな事よりエルを連れて行って良い?お屋敷案内したいし、綺麗なお庭見せてあげたいの」
「そうだな。連れて行ってあげなさい。」
「晩餐には戻るようにするのよ。今日はロゼの誕生日で料理長達がはりきってるのだから」
「はーい!アレン、エル行こう」
2人の手を握って部屋を出た。
「まずは自己紹介しないとよね。私はローゼリアよ。ロゼってみんなに呼ばれているの。貴方はエルってこれから呼ぶから覚えてね?」
エルの顔を見ながら聞いて貰えるように問いかけたらコクンと首を上下に揺らしたからたぶん分かってくれたのだろう。
「こっちにいるのは私専属の執事でアレンよ。エル、これからよろしくね」
エルの手を握って微笑んだ。
ちょっとシリアスになってしまいました。
誕生日なのに(汗)




