【66】
「アンナ?聞こえる?」
隣の牢屋に入れられたアンナに声を掛けるがまだ気を失っているのか返事が無い。
「はぁ...どうしたらここから出られるのかしら...あの変態が言ってた薬って媚薬か何かよね?でも虜になるって...麻薬みたいな物なのかしら?妾の人達はあの薬を使われて従順になっているって事よね。犯罪じゃないの!」
このイライラを何処にぶつけて良いのか分からずに自分を捕らえている枷に目をやる。
「こんなのすぐに外せる力があれば...てか、魔法とか存在してる世界だったら良かったのに!2回も捕まるなんて...私、馬鹿みたい...。皆に会いたい...。」
急に心細くなって身体を丸めて泣いた。
「お嬢様!?お嬢様!?」
「アンナ?起きた?大丈夫?」
目を覚ましたアンナが私が傍にいない事に焦ったのだろう大きな声をだして動いたのが分かった。
「お嬢様!!!大丈夫ですか!?何もされておりませんか!?」
「えぇ、アンナ落ち着いて。今の所は何もされてないわ。」
「...お嬢様、私が不甲斐無いばかりに...申し訳ありません。こんな怖い思いをさせてしまって...私、私...。」
「いいえ、貴女が不甲斐ない訳ではないのよ。だからそんなに自分を責めないで。2人で無事にここから出ましょうね!」
「...お、お嬢様...は、い!ここから出ましょう。」
嗚咽混じりの声が少し聞こえたがそっとしておくことにした。
「失礼します。お食事をお持ちしました。」
先程、伯爵といた従者が私達に食事を持ってきた。
「いらないわ」
(薬とか入ってたらたまったものじゃないもの!)
「毒など入っておりません。」
「毒以外に何か入れているのでは無くて?」
「いえ」
「...信用ならないわ。」
「でしたら、私が今この場で毒味をさせて頂きます。それでしたら安心出来るのでは?」
従者の冷たい目線が私を捉える。
「...えぇ、そうね。お願い出来るかしら」
従者が食事を一口口に運んで食しても何も起こらなかったのでとりあえず頂くことにした。
(“腹が減っては”だものね!とりあえず食べれる時にお腹に入れとかないといざと言う時、逃げられなくなるもの。)
私は従者が監視している中、ゆっくりと暖かい食事を頂いた。
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