【65】
少しだけ暴力的な表現があります。
苦手な方は御注意下さい。
「...さ、ま。...嬢様、お嬢様!」
誰かが私を呼んでるようなのだが、あまりにも頭が痛くて目を開けるのも億劫になる。
「お嬢様、お嬢様っ!!」
(...この声は...アンナ?凄く必死な声で私を呼んでるけど、どうしたのかしら?)
「う、...あ、んな?」
痛む頭を抑えながら何とか目を開けてアンナを確認する。
「お嬢様...意識はありますね。良かった...頭が痛むのですか!?」
「...えぇ、頭が少し痛くて...。」
「お嬢様、先程までの記憶は御座いますか?」
「え?さっきまでの?...アレンとエルがおじい様と訓練するって言うから私はアンナと街で買い物してたのよね?それはちゃんと覚えて...。」
そうなのだ。先程までアンナと最近人気があるケーキ屋へと足を運んでいて次は雑貨屋に行こうとしていて...。
「確か雑貨屋へ行く途中で変な男2人組に声掛けられて...その後の記憶が無い、わ。」
「はい。たぶんすぐに薬を嗅がされたんだと思います。お嬢様の方が強めの薬だったみたいですね...本来ならお休み頂きたいのですが...。」
「いいえ、大丈夫よ。ここが何処か把握しなきゃいけないわよね。...はぁ、こんな事になるなら護衛も連れてくれば良かったわ。」
(また捕まるとか...今度は何が狙いなの!?アレンやエル達、気づいてくれるかしら...)
「ここは屋敷の地下牢かと思われます。」
「...そうね。このジメジメした感じ気持ちも悪いわ。この檻も頑丈そうだから私達ではビクともしないわね。でも、誰がこんな事を...」
「私は手紙の相手かと...それに人形等の嫌がらせも同一犯な気がします。」
「えぇ、私も思っていたわ。まさかここまでするなんて思ってもみなかったから油断してたわ...。でも、こんな地下牢があるなんて貴族よね?」
「はい。そうかと思われます。逃げ道を探していたのですが...申し訳ございません、見つかりませんでした。」
「謝らないで。貴女が悪い訳じゃないんだもの。こんな所には長く居たくないわね。」
私とアンナは誰かが来るまでどう逃げるか話し合った。
数時間ほど経った時にカツカツと階段を降りる音が聞こえてきた。
「ふふふ、やっと捕まえた。」
そこに居たのは、好色伯爵で有名なダミエル伯爵だった。正妻はいるものの別居状態で妾が数人いて花街へも通うほどらしいという噂である。
「ダミエル伯爵...何故貴方が私を?」
ニタニタと気色の悪い笑顔を私達に向けてくるダミエル伯爵に寒気がして声が震えそうになるが弱さを見せたくなくて毅然とした態度で聞く。
「君を前から気に入っていてね。私のコレクションに加えたかったんだよ、前々から。あのオークションで君を捕まえる予定だったんだ。まぁ残念な事に上手くいかなかったけど。でも、ある人が君も私の事を気にしていると聞いて居てもたってもいられなくてさ!やっと君を捕まえる事が出来たよ。」
「...ある人とは?」
「うーん、それはまだ教えられないな。君が私の虜になるまでは。ふふふ」
(誰よ!こんな気持ち悪い奴に私を売った奴!絶対許さないんだから!...でも、どうやって此処から出れば...。)
「...私は貴方の事など知りもしませんでしたし、これからも知りたくはありませんわ。虜になるだなんて有り得ません。」
「ふふふ、そう強がってられるのは今の内だよ。この薬を使えばすぐに私の虜になる。私から逃げられなくなるから。まぁその強がりも可愛いからまだ使わないでいてあげる。その代わり、私が持ってきた服に着替える事、良いね。その侍女は隣の牢屋に繋いでおこう。」
そう言ってダミエル伯爵の従者が私に重りのついた枷を足に付け手首も拘束された。そして、アンナは抵抗したが鳩尾を殴られて気絶し手首と足に枷をはめられて隣の牢屋へと連れてかれてしまった。
ダミエル伯爵は私がいる牢屋に入ってきて私の頬を触った後に首輪を付けてきた。
「ローゼリア、これから君は私の犬だ。可愛がってあげるからね。」
そう言うと私の首筋を舐めた後に牢屋を去っていった。
(...き、気持ち悪い。アンナとも隣同士とはいえ、離されてしまった。エル、アレン、お父様、お母様会いたい。...家に帰りたい...。)
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