【58】
最初はローゼリア視点で
後半はエリーナ視点に変わります。
「ロゼっ!?」
勢いよく扉が開くと目の前に現れたのは肩で息をしているエルだった。
「エル?どうしたの?何かあった?」
額には汗が少し滲んでいてエルは私を見ると安堵したようにその場に座り込んだ。
「エル!?本当にどうしたの!?」
「一緒に帰ろうと思ったらロゼ、教室にいなくて騎士の奴とか無口の奴とかに聞いたらもう教室出ていったって言って、何処に行ったのか探していたらロゼの残り香とあの女の残り香が匂ってきて...焦ったんだ。...また何かあったんじゃないかと...あの女に何かされてるんじゃないかと、思ったら...」
そう言ってエルは一緒に座り込んだ私を抱き締めてきた。
「ごめんなさい、エル。心配してくれてありがとう。」
「ロゼ、もっと警戒心もって。また変な奴使ってロゼに怖い思いさせるかもしれない。」
「...えぇそうね。迂闊だったわね、私。」
いつの間にか私より大きくなった手の平が私の頭を何度も何度も撫でてくる。
エルが落ち着くまで私は彼のなすがままになっていた。
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「何なのよ。アイツ!!!」
この世界は私の...否、私だけの世界なの。
前世の私は所謂オタクという社会の立ち位置で高校では苛められて不登校になりながらも何とか大学へは進学出来た。でも、やりたい事も将来の夢なんてのも無かった私は大学卒業と共に引きこもりとかした。
その時に出会ったのがこの乙女ゲーム。
どの攻略対象も顔が整っていてすぐに私はのめり込んだ。全ての攻略対象を攻略したら出てくる隠れキャラであるアーステル国の第2王子ラウス殿下の攻略は本当に大変だった。
でも、何とか攻略出来た日の翌日にご飯を買いに外に出たら事故にあって呆気なく死んだのだ。
いつも私を励ましてくれていた友人の“のぞみ”はポジティブで苛められている私なんかにも声を掛けて来たり卒業しても同じ大学だった為に不登校の私に会いに来たり卒業しても私を外へと出すような事をしてくれてた。
でも、それは私にとっては迷惑でしか無かった...。
ただの偽善で私のことを気にしてきっと良い子を演じたかったんだろう。私が乙女ゲームの話をしても興味が無いようにしているし...(まぁ話はちゃんと聞いてくれたけど。)
趣味なんて全く合わないのにいつも傍に来て私を気にかけてきて本当に迷惑だった。のぞみが亡くなったと知らされた時はやっと解放された。と、不謹慎だけど思ってしまった。
そんなのぞみにあのローゼリアは凄く似ている。
だからこんなに腹立たしいのか。それとも私の邪魔ばかりしているから腹立たしいのか、きっとどちらもだろう。
私の推しだったラウスとも仲良くなっていて全然私とは仲良くしてくれない。いつも傍にいるエリック殿下でさえ、気持ちはローゼリアにいっていると分かる。それに騎士のルドルフはローゼリアしか見ていない。
「おかしいおかしいおかしい!何で私の世界なのに思う通りにいかないのよ!アイツがいなければ...そっか!そうよね。そうなのよ。ローゼリアがいるからここまで拗れているのよ。アイツがいなくなれば全て上手く行くわ。」
エリーナの不気味な笑い声は誰もいない廊下に響いたが内容を知る者は誰もいなかった。
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