【52】
平和な日々が続いていたのにその平和を破ったのは次期宰相であるアレク様だった。
「ローゼリア嬢、いい加減にしたらどうだ?」
突然教室で大きな声と共に机をバン!っと叩いた。
「...まぁ大きな音を出して如何なさいましたの?」
「毎回毎回僕の姫であるエリーナ嬢を虐めて楽しいのか?貴女は公爵令嬢であるから僕は我慢してきた。しかし、もう我慢ならない。いつも自分の手を汚さずに誰かに命令をして僕の姫を虐めているらしいではないか!」
「おい、アレクどうしたんだ!?」
ルドルフがすぐに私とアレク様の間に出てきてくれてアレク様を宥めようとしてくれた。
ルーとユリアス様も私を背に庇うように立ってくれる。
「君達は下がれ、僕はローゼリア嬢と話がある。」
「今の状態のアレクをローゼリア嬢と2人には出来ない。」
「何故誰も疑問に思わないんだ!僕の姫が虐められているというのに。ローゼリア嬢が悪女であると言うのに!」
「逆に聞きたいんだけどさ、アレク殿。下級爵位であるエリーナ嬢が婚約者持ちのアレク殿や他の男性達と仲がいいのはおかしい事では無いのかな?」
ユリアス様がアレク様に尋ねる。
「ふん、ユリアス様君だって同じような事してるだろう。」
「いーや、俺は婚約者持ちのご令嬢には手は出さないし、可愛いご令嬢に可愛いね。くらいしか言ってないけど。君の所のお姫様なんて毎日違う男の腕に可愛らしい胸を擦り付けているように俺は見えるけど?」
「僕の姫がそんな事するはずないだろ!」
「してる」
「最近ではラウス殿下にご執心のようだよね。アレク殿、最近そのお姫様に相手にされないからローゼリア嬢にケチつけたんじゃないかい?」
「そ、そんな事は...」
ユリアス様の言葉が本当だったのか先程の勢いがだんだんと無くなりアレク様が小さくなっていく。
「...アレク様、貴方は信じないかも知れませんが、私は人を虐めるなどそんな愚かな事はしません。ただ、他のご令嬢の方々は自分の婚約者が他のご令嬢と親密になっている所を見るのは、胸が張り裂けるような思いをしています。アレク様、その中に貴方も入っている事を承知の上で言葉を発してらっしゃるのですか?」
教室にいたご令嬢達はアレク様を睨んだり、または、自分の婚約者がエリーナ様と親密にしている所を目撃した時を思い出しているのか悲しい表情をしている。
「ここは学園です。なので、どの爵位の方々も平等であるのが理想かと思います。しかし、ここを卒業したらそうは言ってられなくなります。それに婚約者がいる殿方に擦り寄るなど人としてあってはならないのでは?」
「だ、だとしてもエリーナ嬢を虐めるのはおかしいではないか!」
「はぁ、先程も申しましたが私は虐めて等おりません。上位爵位の者でも話す事が難しい殿下に下級爵位の方が馴れ馴れしくそれも自分から話すなど反感を買うに決まってますでしょう?賢い次期宰相の貴方なら分かってますよね。」
「だ、だが。虐めは...」
「どのご令嬢方も初めは我慢したと思いますわ。でも、軽く注意した所で聞く耳を持たないのですよ、エリーナ様も婚約者の方々も。それで困った多くの方々は私達にご相談しに来てましたよ。私がいくら注意してもダメでしたけどね。力不足で申し訳なかったわ。」
教室にいるご令嬢方に謝ると皆、謝らないで下さいまし。と言ってくれる。
「...きっと婚約者の殿方に愛想が尽きた者ばかりでは無いかしら?」
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