【50】
屋敷に着くといつものようにエルトがこれでもかって位に尻尾を降って私の帰りを喜んでくれる。
「ただいまぁ~!今日もお利口に待っていたのね。本当にエルトは良い子ね!」
「お嬢様、ラウス殿下がお困りですよ。」
いつものように可愛いエルトにただいまの挨拶をしていて、エルの存在を完璧に忘れていた。
「あ、ご、ごめんなさい!エル」
「その子は?」
大丈夫だ。と言って私の横に一緒に座りエルトを撫でる。
「この子はね、エルと離れて凄く寂しがっていたらお父様とお母様がプレゼントしてくれたのよ。ふふ、可愛いでしょ?エルトって言うの。」
「匂いの正体はこの子だったんだ。」
「匂いの正体?」
「ロゼにつけてた僕の匂いが無くなってて違う奴の匂いしてたから」
昔の“僕”に戻ってる。学園だと“俺”だったからなんかそういう所も成長しちゃったのかな。と寂しかったけど屋敷に戻ってきたから良かったと思い、そしてエリーナ様の牽制でもあったのかもしれない。なと“俺のロゼ”の言葉を深く考えないようにした。
「へ?エルの匂い?」
「うん、あの時一緒に寝てたでしょ?だからあの時は僕の匂いがちゃんとついてたんだよね。でも、僕の匂いはもうしなくて違う匂いしてから妬けてたんだよ。」
「や、妬け!?...獣人は鼻が良いのよね。確か」
「あの時はちゃんと他の獣人にロゼは僕のものって分かるようにしてたんだけど、あれからもう結構経って僕の匂い無くて残念だったけど、愛犬の匂いしか強くないから安心した。」
エルの一言一言が私の頬を赤くする。
(なんかさっきからまるで私の事を...いや、きっとエルはあの時のように私を姉のようにしたってくれているからその延長だよね!?自意識過剰はダメよ!自分)
「また僕の匂い付けて良い?」
「ロゼ様、旦那様と奥様がお呼びです。」
どう返事をして良いのか分からず困っているとすぐにアレンが来てくれた。
「そ、そうなのね!エル行きましょ!お父様もお母様も貴方が来てくれて喜ぶわ。」
先程の返事はせずにエルの手を掴み部屋へと促した。
「お父様、お母様ただ今戻りました。」
2人共“おかえり”と言ってくれて嬉しそうにエルを見る。
「まぁまぁとっても大きくなったのね。元気だった?」
「はい、お2人もお元気そうで何よりです。」
「お母様、体調は大丈夫?今日は顔色も良さそうだけど」
「ありがとう、今日は調子が良いのよ。ロゼちゃんもこの人も凄く心配性なのよ。ふふ」
「お2人共、夫人とお腹の子がとても大切なんですよ。楽しみですね。」
「ふふ、えぇそうね。エル君は春になったらロゼちゃんと同じ学園に通うのでしょう?だったらここから通ったら?ねぇ、あなた!」
「あぁせっかくだからな。君が嫌でなければだが。」
「嫌だなんて、とんでもない!またこちらでお世話になるなんて思ってもなかったので、よろしくお願いします。」
「良かった!またエルと前のように暮らせるなんて夢みたい。」
両親の許可もおりたので春からはここから一緒に通う事になった。また明後日にはエルは帰ってしまうけれど楽しみが出来たので寂しくない。
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