【48】
私達は場所を移動してブルトは教師達に任せた。
その間もソフィア様は私から抱きついて離れず、エルはずっと私と手を繋いでいる。
「さて、ロゼ大丈夫かい?」
「はい、ウィル様にまで迷惑掛けてしまい申し訳ありません。」
「ううん、ロゼが無事ならそれで良いよ。私達が着く前までに何があったか教えてくれる?」
「はい、朝はユリアス様と別れた後に───」
ユリアス様と別れた後にあのブルトに捕まった事とブルトを唆したのはエリーナ様であると心配して来てくれた皆に伝えた。
「...俺と別れてすぐに...一緒に教室まで行けばよかったね。」
「いえ。...そ、それよりも...エル、何で貴方ここに?」
そうなのだ。何故かここにエルがいる。まぁエルが来てくれたからブルトに変な事されずにすんだものの何故この国に、そしてこの学園にいたかが全くわからない。
「ん?あぁ、本当は今日はロゼに会うつもりは無かったんだ。」
「え?」
「俺、春からこの学園に通うんだ。だから今日はその説明だったり見学で来てたけどこの学園に入学した時にロゼに驚いて欲しくて黙ってたんだよ。」
でもその前にバレちゃった。と苦笑いして耳が折れた。
(か、可愛い!!耳が、狼のピンっとなってる耳がヘニャってしてる。前みたいにワシャワシャしたい。)
悶える心を落ち着かせてエルに視線を向けて
「だから手紙で“待っていて”と書いてあったのね。本当に驚いたわ。でも、あの時来てくれてありがとう、本当に助かったわ。」
「ロゼが無事で良かった。変な奴に迫られてるロゼを見たらいてもたってもいられなくて、」
「ありがとう、ウィル様はエルが来るのご存知だったのね?」
「あぁそれはね。でもエル...いやラウス殿に黙っていて欲しいと言われていて、ごめんねロゼ」
「ちょ、ラウスって...え!?」
ユリアス様が目を見開きウィル様が放った名前を呟いた。
(あ、そっか!私ずっとエルって言ってたし紹介してなかったもんなぁ)
「ユリアス様ごめんなさい。それにルーにも紹介してなかったわね。こちらアーステル国第2王子のラウス殿下なの。私とは幼い頃に知り合っていて色々あってエルと呼ばせてもらってるのよ。」
「...」
「へ、へぇそうだったんだ...じゃなくて、そうだったんですね」
「いや、俺は年下だから敬語はいらない。」
エルってば相変わらず人見知りなのかユリアス様達には素っ気ない。
「エル、春からこの学園に通うのはウィル様の所に泊まるの?」
「うん、そのつもり。ここの学園に通うのも1年だけなんだけどね。」
「あら、そうなの?前みたいに私の屋敷に来れば良かったのに!」
「...良いの?俺またロゼの所行っても」
耳をピーンとして尻尾が凄くブンブンと揺らしている。
(か、可愛すぎるよォ!!!今すぐにも抱きついて撫で回したいけどソフィア様がまだ抱き着いているからなぁ。てか、ソフィア様大丈夫かな?)
「えぇ構わないわよ。今夜も来る?すぐ帰るわけでは無いのでしょ?...というか、ソフィア様?」
“うん”と勢いよく返事をして私の頭にスリスリしてくる。
「...ロゼ、ちゃん」
「はい、ソフィア様」
小さな声で私の名前を呼ぶ。
「...どう、して...どうして!相談してくれなかったの!?」
ガバッと顔を上げて私の頬を両手で包み込む。
「へ!?」
「ルーカス様にロゼちゃんが困っているって聞いてたけど、ロゼちゃんに相談されたかったのよ!私、そんなに頼りない?」
「...そ、ソフィア様...」
「私ね、ロゼちゃんの事を本当の妹のようにそして1番の親友だと思っているのよ。...だから相談して欲しかったの...。」
「ご、めんな、さい...私、迷惑掛けたくなくて...」
皆が来てくれてそして、エルの登場で考えないようにしていたけれど本当は怖かったんだ。とソフィア様の言葉を聞いて身体がだんだん震えてきた。
「エリーナ様の事もあるのよ。今回の事だってやっぱりエリーナ様の差し金だったんだから、私にも相談して頂戴!貴女が嫌な思いするなんて私、耐えられないわ!」
「...は、い。ソフィア様、ありがとうございます。」
今だけはエルは私から離れてくれた。そして、私はソフィア様に抱きついて何度もお礼を言った。
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