【46】
「あ、あの...」
声を掛けてきたのは話をしたことも無いとてもふくよかな男子生徒だった。
「何か?」
「ろ、ろ、ローゼリア様...ぼ、僕」
「貴方は私の事をご存知なのね。失礼ですが...」
ふくよかな彼はずっと“ハァハァ”と荒い息をしていて何がそんなに暑いのか頭から湯気が出ている。
「あ!す、すみません。ぼ、僕は、ブルトと申します。」
「子爵家の?」
「はい!え、えと...花...気に入ってもらえ、ました、か?」
「...花ってこれの事よね?」
今まさに手にしている一輪の花を彼に見せると凄く嬉しそうに頷いた。
「貴方だったのね。」
「は、はい...入学式の時に...ローゼリア様を拝見してから、その...ずっとお慕いしていて、最初は、最初はただ見つめるだけで、良かったのです!」
話す度にどんどん彼が私に近付いてくるので必然的に私は徐々に後ろへと下がっていく。
(何だか圧が強すぎて...こんな事になるならユリアス様と教室へ向かえば良かった。ルーやアレン達に1人にならないようにって言われてたのにぃー!!自分の馬鹿ー!!)
「見つめるだけで、良かったんです。本当に...でも、エリーナ様がローゼリア様を見つめている僕に気付いてくれて、『見つめるだけは辛いから気付いて貰うように花を渡したら?』とアドバイス下さり...でも、直接は...怖かったので、下駄箱に...。」
(え、エリーナ!お前か!)
「差出人も何も書いてないのだもの、誰だか見当がつかなかったわ。」
「す、すみません...。エリーナ様にも言われました。彼女は他にも『花を捨てずにいたら貴方に気があるはずだから大丈夫よ。』と言われて『次は一言添えましょう。』と言わたので、、」
「夏季休暇前と新学期始まりに一言だけの手紙があったのね。」
「は、はい。」
(アイツ何がしたいの!?この人とくっ付けたいの!?エリーナはエリック殿下と私が婚約者になって奪うっていうシナリオ通りに行きたいんじゃなかったの!?意味わからなさすぎて頭痛が...。)
「...そ、それで貴方はどうされたいの?」
「え?」
「毎日一輪の花を入れたり手紙を入れたりしてきて...私とどうにかなりたいつもり?」
「い、いや...そ、そういう訳では...」
見ず知らずの男性に話す度にハァハァ言われてどんどん距離を縮められるのは恐怖でしかない。その為、後ずさるもののもう壁まで来ていてこれ以上後ろに下がれない。
誰か通らないかと周りを見ても授業中の為、誰一人ここを通らない。
(私が来ないのを不思議がってルーやユリアス様探しに来ないかな~?)
「はっきり申し上げますが、私は今勉学に夢中です。その為、誰かとお付き合いや婚約をするつもりはありません。なので、ここまでして頂くのは迷惑です。」
「そ、そ、そんな。ぼ、僕はローゼリア様とどうなりたいとか無くて...付き合うや婚約者等、恐れ多いです。...で、でも僕のこの気持ちまでは、否定しないで...欲しいです。」
「否定はしてませんわ。ただ、毎回一輪の花を頂くのは困りますの。」
「そ、そんな...だったら何が良いですか!?喜ぶものをお渡ししたいです。こ、この気持ちは、もう抑えられないです!」
「べ、別に物などいりませんわ。」
「何故ですか!?僕の気持ち、ひ、否定しないと仰ったではありませんか!」
彼は先程よりも勢いを増して近付き私の両肩を掴んできた。それによって彼の鼻息が私の顔に掛かる。
(ヒィーこ、怖い!!だ、誰か!!)
「ちょ、近いわ。離れてちょうだい。」
「い、やです!」
「はぁ!?い、痛いので離して!」
だんだん彼の力が強まり両肩が痛い。これは痕になりそうだと思う冷静な自分もいる。
「ぼ、僕を受け入れて下さい!ローゼリア様の好きな物、貢ぎます。」
「貢がなくて良いわよ!」
「おい、何をしている!?」
誰か来てくれたのだと思い声の方向を向くと逆光のせいで誰かまでは判断出来ない。
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