ルーカス視点
俺は伯爵家次男のルーカス。皆が噂するローゼリアとはクラスが同じでそれも隣の席になった。
皆の噂とは“エリック殿下の婚約者候補”であったり、“公爵家のご令嬢で甘やかされている”、他にも“彼女はキツイ性格だ”等が多い。俺のような伯爵家の次男が公爵家など関わることが無いだろうと思っていたからまさか噂のローゼリアと席が隣になるなんて思ってもなかった。
見た目は“美しい”という言葉が似合う華やかなご令嬢だな。と思った。性格がキツイというのは、見た目からだろう。彼女の目はツリ目気味の為、真顔だったりすると威圧感がある。
最初は関わるまいとしていた。ご令嬢等と仲良くなった所で面倒なだけだ。ずっとくっ付いてきたりくだらない事をベラベラ話すだけで何も楽しいとは思えない。香水の匂いもキツイものが多く、吐きそうになった事もしばしば...。
だから成る可くご令嬢には近寄らないようにしているし近寄られても単語単語で答えるようにしている。そうする内にあまり近寄ってこなくなった。
でも、ローゼリアは違った。こんな口調でも話しかけてくれるし、他のご令嬢みたいに無駄口は無く、俺の話も丁寧に聞いてくれて香水の匂いでは無く花のような優しい香りが彼女からはするのだ。皆が噂するようなキツイ性格でも無い、他のご令嬢の方が余程我儘で扱いづらい。
ただ、エリック殿下の婚約者候補というのは有り得るだろうと彼女とエリック殿下の話を聞いてて何となく思った。まぁ彼女は拒否していたけど。
共通の動物好きという事で仲良くなるにそんなに時間は掛からなかった。
俺の事を“ルー”と優しく呼んでくれる彼女の声はとても心地良い。俺も彼女の事を“リア”と呼んでいる。皆が“ロゼ”と呼ぶ中、俺は“リア”と...。少しだけ彼女にとって...いや、俺にとって特別だと示すために。
でも、これが“恋”なのかと言われると違う気がする。彼女の特別になりたいけど恋人やもっと先の人生の伴侶になりたいか?と問われたら違うと答えられる。
最近彼女は毎朝下駄箱に入っている花について気にしている。それを俺に相談してくれる彼女に少しの優越感が芽生える。でも、どうにかしてあげられないのが悔しい...。
だから俺の他にもエリック殿下の護衛であるルドルフやリアの使用人2人にも話をして。と伝えた。本当ならソフィア様やウィリアム殿下にも相談しといた方が良いだろうとも思った。あの2人はリアの事をとても可愛がっているからきっと力になってくれるだろう。
でも、彼女はこの事をそこまで深く考えていなくて皆に迷惑掛けまいとあまり相談してないみたいだ。
(リアに相談されるのなんて皆迷惑だなんて思ってないだろうに。)
「...ソフィア様」
「あら、ルーカス様どうなさったの?ロゼちゃんがいないのに珍しいわね。」
(この人はどうも苦手だ。リアには優しいけどそれ以外は微笑んでいるけどどうでも良いような顔をしている。...まぁ俺も同じようなもんか)
「リアの事で相談を...」
「ロゼちゃんの事?何かあったの?」
俺がリアの名前を出すと先程まで嫌な空気を出していたのに一気に無くなり俺に近寄ってきた。
「毎朝リアの下駄箱に一輪の花が入ってるらしいんです。」
「一輪、の花?それだけ?」
「はい、でも今日は『君だけ見つめている』という気味悪いメモも一緒に入っていたらしく」
「...特にロゼちゃんに危害は加えられてないのね?」
「はい」
「分かったわ、ありがとう。ウィル様にも伝えておくわ。明日からの夏季休暇、新学期もその事を頭に入れてロゼちゃんの周りを警戒するわね。教えてくれてありがとう。...もう!ロゼちゃん何も言わないんだもの!」
と頬を膨らませながらもう一度俺にお礼を言ってソフィア様は去っていった。
(ふぅ、とりあえずソフィア様とウィル様の耳に入れとけば何かあっても大丈夫そうだな。)
明日からの夏季休暇はリアの愛犬であるエルトと遊べる事の方へと頭を切り替えて帰路に着くのだった。
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