【43】
夏季休暇にはいる前日の朝はいつも通り花が入っていたが、今回は花と一緒に紙も入っていた。
『いつも君を見ている』
紙にはそれだけ書いてあるだけで差出人等も何も無い為、不気味さが増すばかりだ。
「ルー...今回紙も一緒に入ってたのだけど、、」
「紙...なんて?」
「いつも君を見ている。って書いてあったの。これって恋愛小説とかにあるラブレターってやつなのかしら?それとも、何かの嫌がらせ目的?差出人も書いてないから聞く事も出来ないわ。」
「どっちにしてもタチ悪い。」
「ラブレターであっても嫌がらせであっても直接私に何かして来ないみたいだし気味が悪いけど、放置で良いかしらね?」
「...警戒はしていた方が良い。使用人にも伝えてあるでしょ?」
「警戒、ねぇ...。えぇアレンとアンナには伝えてあるわ。授業以外は一緒にいてもらうつもりよ。でも、明日から夏季休暇に入るから大丈夫だと思うのよねぇ。」
「...」
ルーは何か考えているようだったけど明日から夏季休暇だと思うとこんな事どうでもいいとさえ思ってしまう。なんと言ってもエルトと過ごす時間が増えるのだから。
いつも花だけなのだし、今回はたまたま紙が入っていただけだ。それも一言だけ。なのでそこまで心配する必要も無いと呑気に考えていた。
だから、花や紙について話していたのは、主にルーとアレン、アンナだけであり、軽く話したのはルドルフだけだった。だけど他にもソフィア様やウィル様にも話しておけば良かったかな?と思ったのは夏季休暇が明けてからの事である。
「うーん、今日からお休みよぉ」
朝の気持ちの良い空気を吸って起き上がりアンナに支度を手伝ってもらってエルトと行く先は庭である。朝の涼しい時間帯にエルトを運動させて日が高くなってきたら部屋に入りエルトとのんびりする。
「なんて至福の時間なのかしら。」
「そう思うのはお嬢様だけかと」
「そうかしら?あ、そう言えばお母様の体調は良さそう?」
最近お母様は身体がとても辛そうなのである。それもそのはずで私に妹か弟ができる予定だからだ。悪阻も酷くとても痩せてしまった。それだけでも凄く心配だったのだけど、悪阻が治まった今は今でお腹が大きくなり動くのが凄く大変そうなのだ。
娘として大好きなお母様の助けになりたいけれど、お母様には“その気持ちだけで十分よ”と言われてしまっているので中々思うように助けられずモヤモヤとした気持ちである。
「はい、今日は体調も良いようでお部屋でお食事をなさったみたいですよ。」
「そうなの、それは良かったわ。弟なのか妹なのか凄く楽しみだわ。出来れば妹が良いわぁ。元気に生まれてくれるならどちらでも構わないけれどね。」
「そうですね。どちらでもとても可愛らしいでしょうね。」
「あと少しなのよね...待ちきれないわ。」
前世では私は一人っ子だった為、兄弟がいる友達がとても羨ましく思っていた。親友だったエリカには5つ離れた姉と1つ下の弟がいてエリカがお姉さんと出掛けた。という話を聞いたり弟と喧嘩したという話を聞いて私も欲しかったなぁといつも思っていたので、転生して自分の弟か妹が出来ると両親から聞いた時は飛び跳ねたいくらい嬉しかった。
小さい頃から一緒にいるアレンは同い年だから幼馴染って感じだったし、あの時お父様が保護したエルは1つ下だったけど弟と言えばそうなのだが、何かまた違った気がしたから今回自分と血の繋がりがある弟か妹が出来るのが本当に楽しみで仕方ない。
「アレン、お母様にハンカチ届けてくれた?」
「はい、奥様とても喜んでましたよ。」
最近部屋に引きこもってばかりなのでお庭の花をハンカチに刺繍してアレンに届けて貰ったのだ。
自分が直接行けば良いのだけど、タイミング悪く休んでるお母様を起こす事になるのは悪いし四六時中エルトといる私に会って、もしお母様の身体に何かあったら...ととも思ったのでアレンに預けたのだ。
「起きていたのね。喜んでくれて良かったわ。」
「それと、娘なのに気を使うな!とも仰っておりました。」
「あら、ふふお母様ったら。お言葉に甘えて今度は直接渡しに行こうかしら。」
「そうしてあげて下さい。奥様も喜びますよ。」
「ありがとう、アレン」




