【42】
ルドルフが忠告してきてから数日過ぎたがアレク様からの接触は無く今まで通り平和である。
平和といってもエリーナ様の接触はいつも通りなので平和であるか?と問われると答えは否だ。
ただ最近変わったことがあると言えば下駄箱に花が置かれるようになった事。差出人も分からずただ一輪だけ置かれているのである。
花は日によって変わったり同じだったりほとんどがバラだったりもする。けどちゃんとトゲは取ってあるので悪意からでは無いのかなと思うけれど差出人も分からないので少し不気味だ。
「...はぁ誰なのかしら?」
「バラ?」
「えぇ、今日もまた入ってたのよ。名前やメモとかも無いから少し怖いのよねぇ。」
「気持ち悪っ」
「毎朝毎朝良く続くわよね。ルーは私より早いじゃない、見たことないかしら?」
「ない」
「どういう意図があって私の下駄箱に花を一輪入れているのか分からないわ。」
「...ストーカー?」
「そんな訳ないでしょ。私なのよ?嫌がらせとも違うような気もするけれど...」
「ロゼ様何かありましたか?」
私とルーと毎朝下駄箱にある花の話をしているとルドルフが声を掛けてきた。エリック殿下はエリーナ様と仲睦まじくお喋りしているので私の所に来たのだろう。
(目の前であんなイチャイチャを見せつけられたら逃げたくもなるよねぇ。友達がいないルドルフなら尚更よね!)
「何かあったというか、なんというか?」
「これは何かあったの内に入るだろ」
「そうなのかしら?でも、ただ下駄箱に花が一輪あるだけなのよ?」
「下駄箱に、花、ですか?」
「えぇそうなの。ここ最近毎朝下駄箱に花が一輪入れられていてほとんどバラなのだけどちゃんと綺麗に包装されていてトゲも無いのよ。不思議よねぇ」
「...ロゼ様、それはストーカーとかでは無いですか!?」
「同意」
「2人とも大袈裟よ。他の可愛らしいご令嬢なら兎も角、私なのよ?」
「「無自覚」」
2人が声を揃えて言ってきたが何が無自覚なのかサッパリ分からない。乙女ゲームのお陰で悪役令嬢なのに醜いか美しいかと問われたら美しいと思うけど、何せこのつり目なのだ。キツめに見られる私にストーカーする物好きがいるとは思えない。
自分がもしストーカーするならば絶対可愛らしい子を狙うはずだ。顔だけで言うならヒロインであるエリーナ様にストーカーするだろう。守ってあげたいオーラが出ている可愛らしいご令嬢なのだから。まぁ、性格は今は置いといて...。
(こんなキツそうな見た目の私なんかにストーカーってどんだけの物好きなの?ってなるから無いでしょ。...たぶん。)
「...とりあえず用心はして置いた方が良いかと。あの件もある事ですし...。」
「そうね、ありがとうルドルフ。気をつけるわ。」
(面倒臭いなぁ~エリーナのせいでアレクの件も一応警戒してなきゃだし誰か分からない花も少し警戒しとかなきゃって精神的に疲れちゃうよぉ!!!もうすぐ長い休みに入るしずーっとエルトと一緒にいよっと!)
「そうだ、ルーは夏季休暇エルトに会いに来るわよね?」
「あぁ」
「...ロゼ様...その、エルト、とは?」
「私が飼っている可愛らしい愛犬よ。貴方も見に来る?」
「よ、よろしいのですか!?」
「えぇ、貴方が良ければ。ずっと護衛でも無いでしょ?お休みの時とか来たらどう?ルーはエルトに会いに良く来るしソフィア様も来る予定なの。たぶん、ソフィア様にくっ付いてウィル様も来そうだけど...。他にもアンリ様も呼ぼうと思っていて、、」
「...ロゼ様がご迷惑で無ければ!」
「ふふ、では約束よ。」
もうすぐ来るであろう夏季休暇の予定をルーやルドルフと一緒に計画を立てている内にアレクの件や花の件が頭の隅へと追いやられて行くのでした。




