【41】
あの後、彼は泣き止むとスッキリしたような顔になり涙で濡れたハンカチを握り締めて私に礼を言い新しいハンカチを渡す。と言って譲らないのでとりあえず了承して私は家に帰ってきた。
「エールートー」
私が帰ってくるのを分かってたかのように玄関でお座りしてフワフワの尻尾を揺らして待っている。そんなエルトを私はすぐに抱き締めて癒されるのだ。
「ロゼ様、玄関でお行儀が悪いですよ。」
「エルトが可愛いのは分かりますがまずはお着替えしましょう、お嬢様。」
「だって...寂しかったのよ。エルト補給しないと私は餓死してしまうわ。」
「お嬢様、もうすぐ夏季休暇に入りますからそしたらエルトともずっといられますよ。」
「そうね!アンナ!やっと長いお休みが来るわ。ずっとエルトと一緒にいられるわね。楽しみね、エルト。」
「わん!」
分かっているのかいないのか謎だがエルトが嬉しそうに尻尾を振ってくれるので早く夏季休暇が来ないかとソワソワした。
「ロゼちゃんお帰りだったのですね。」
「あらリッカーお兄様どうしたの?」
此方は私の従兄のリッカーお兄様は私より五つ上の18歳である。物腰が柔らかくて眼鏡をしていてとても知識が豊富なインテリイケメンだ。
「クリフォード様に領地経営について学びに来たんですよ。」
「ウィンズリー家はリッカーお兄様が継ぐのですよね?」
「うん、一応ね。僕では力不足かもしれないけど。」
「いいえ、リッカーお兄様は知識がとても豊富ですし周りの状況把握能力もとても高いですもの。それに商才もお有りだから領地経営には向いてますわ!リッカーお兄様が継いでくれるのなら私は安心してお嫁に行けますもの。」
「ロゼちゃんがそう言ってくれるのは凄く嬉しいけどお嫁にいくのは寂しいからずっとここにいたら良いんじゃないかなぁ。」
少し寂しそうな顔をして私の頭を撫でてくれた。
(イケメンにここにいて欲しいなんて言われたらお嫁になんて行きたくなくなるわ!!)
「ふふ、ならリッカーお兄様のお嫁さんになったらずっとここにいられますよね。」
「そうだね、それは良い考えです。」
(ん?冗談よね?冗談として捉えてくれたよね?え?...本気じゃないよね?)
「り、リッカーお兄様?冗談ですわよね...?」
「ん?本気でその方向に考えてたんだけど駄目かな?」
優しく微笑んでいるようで目が本気である事を物語っていて、この後必死で冗談であるとリッカーお兄様に伝えてとりあえずリッカーお兄様との結婚の話は保留にして貰えた。
「はぁ疲れたわ。アレン、紅茶の用意お願い。」
「お疲れ様です。リッカー様、本日より此方のお屋敷でこれから過ごされるようですね。その方が効率がよろしいとかで。」
「え、そうなの?まぁ、効率は良いわよね。...リッカーお兄様も何を考えてるのか偶に分からなくなるのよねぇ。過保護っぷりも健在だったし。」
「ですが、ロゼ様がリッカー様とご結婚されればご当主も奥様も喜ばれるのでは?」
「そうだけどぉ...でも、出来ればウィンズリー家が栄えるような家柄の人と結婚出来た方が良いと思うのよね。リッカーお兄様は優しくて旦那様として申し分無いわ...偶に過保護過ぎるのもどうかと思う所もあるけれど。」
「誰とご結婚されようと私はロゼ様専属の執事として一生お傍におりますので。」
「ふふ、心強いわね。あ!アンナもよ。一緒についてきてね?」
「勿論ですとも」
「でも、お父様やお母様を見ていると恋愛結婚がとても羨ましく思うのよねぇ。でも、政略結婚は義務ですものね...」
「ロゼ様...」
「お嬢様...いくら政略結婚でもきっと素敵な旦那様とだったらお2人の様に仲睦まじい家庭を築く事が出来るかと。なので政略結婚だからと諦めてはいけませんわ!」
「...そうね、アンナの言う通りよね!ふふ、ありがとう」




