【38】
「あ、あの...ローゼリア様...。」
私はルーと図書室で本を読んでいるとご令嬢に話しかけられたのだ。
「えーと、貴女は確か...」
「あ!す、すみません。私、アンリ・マーカスと申します。」
「あぁマーカス伯爵家の。それでどうなさったの?」
「あ、あの...折り入ってご相談が...ありまして...。」
アンリ・マーカスはマーカス伯爵家の次女であまり派手では無いけれど可憐な少女という言葉が似合う可愛らしいお顔が特徴的なご令嬢だ。隣のクラスの彼女とは接点は無いので相談と言われても答えられるものがあるのか悩むが一応話だけは聞いてみようと思う。
「...先日、エリーナ様に意を決して忠告をしたのですが...聞いて下さらなくて...。」
「忠告?貴女1人でですの?」
「...はい。私には婚約者がいるのですが、その婚約者にエリーナ様がベタベタとくっ付いていまして...彼もたぶん彼女の事が好きなのだと思います。エリーナ様が現れるまでは一緒に買い物にも付き合って下さっていてお手紙等もしていたのですが、エリーナ様と仲良くなってからあまりお話もして下さらなくて...。他の婚約者がいるご令嬢の方々も同じ感じらしくて...。それで、エリーナ様にご忠告を...でも、聞き入れて貰えず...心が狭いと言われてしまいました...。」
彼女は泣くのを我慢するように必死に私に事の経緯を話してくれた。
(はぁ、エリーナ...こうも問題を起こしてくるなんて...。)
「私の言葉は聞き入れてくれないので、で、出来れば格上のローゼリア様やソフィア様が少しでも注意してくれればエリーナ様も分かってくださるのでは無いかと...物凄く自分勝手な話で申し訳無いのですが...。」
「婚約者には話した?」
「は、はい...ちゃんと会ってお話しました。婚約者がいるのに他のご令嬢と仲良くされるのは...とお話したのですが、『エリーナ嬢の素晴らしさが何故分からない?』と逆に怒られてしまい...」
「はぁ、エリーナ様も大概ですがその婚約者もどうかと思いますわ。」
「はい...前はそんな事無かったのですが、」
(ヒロイン補正というものかしらね?まぁ面倒な事を。)
「まぁ私には婚約者がいないので何とも言えませんが、ソフィア様もウィリアム殿下の事で色々と思う事があるみたいなのでソフィア様にこの事を伝えておきますわ。」
「あ、ありがとうございます...。」
(本当に悩んでいたのね。政略結婚でも自分の婚約者に情があるのね、この子は。全く面倒事を増やしやがって...。ソフィア様に一応お伝えしてどうするかはその後ね。)
「と、言う事がありまして、ソフィア様どう思われますか?」
「...貴女の所にも来たのね。私の所にも何人もの婚約者がいるご令嬢が相談しに来て疲れちゃったわ。」
「お疲れ様です、ソフィア様。」
「えぇ、ありがとう。個々で伝えても全く聞く耳持たないらしくて、涙ながらに私に訴えかけてくるんだもの聞かない訳にはいかないのよねぇ。...問題事を次々と...。」
「ソフィア様は学園の授業はもちろん、王妃教育もあるからご令嬢方の面倒までは手が回らないのは重々承知ではありますが、ご令嬢の涙を見せられてしまうと...どうにかして助けてあげたいと思ってしまって...。」
「ふふ、顔を上げてロゼちゃん。私もエリーナ様がウィル様にベタベタ...ベタベタベタベタとくっ付いているの許している訳では無いのよ。少しは牽制しなければならないわね。」
「...はい。」
(牽制した所で彼女が怯えるかといったらそうなるはずなさそうなのよねぇ。寧ろ喜んで被害者面しそうなのよね、彼女は...)




