ルドルフ視点
騎士団長の息子のルドルフ視点です。
少し短めです。
俺はこの学園に来て初めて“女神”というものを見た...
「アレク、エリーナ嬢を連れてきたぞ。」
現宰相の息子で次期宰相だと言われているアレクが心酔するエリーナ嬢を探して欲しいと言われていたので見つけて連れて来た。
俺にしたら色々な男に声掛けてそして、親密なように触れている彼女に良い印象は持てない、がまぁ個人の自由だろうと思う事にしている。
俺は騎士団長である父と陛下、そしてウィリアム殿下から同い年であるエリック殿下の護衛兼友人として接して欲しいと言われているので、エリック殿下のお傍にいつも控えている。だから必然的にエリーナ嬢と話す機会がとても多い。
「やぁエリーナ嬢、何処に行っていたんだい?君が傍に居てくれないと心配で心配で。」
「ふふ、アレク様ったらぁ~。ただ綺麗な学園のお庭のお花を眺めていただけですわぁ~。あ、でも1人のご令嬢が私に酷い言葉を掛けてきたのぉ~とーっても怖かったのですぅ~」
そう言って彼女はアレクの腕に抱きついて甘えている。
「僕のエリーナ嬢に酷い言葉を言うなんて!そいつは誰だい!?」
「...お名前までは分からなくてぇ~でも、きっとローゼリア様やソフィア様が差し向けて来たのですわぁ~」
否、それは断じて無いだろう。俺が言った時に聞こえてきた言葉は“私の婚約者に触れないで欲しい”というような当たり前の常識だったはずだ。その後エリーナ嬢が発言した言葉は良く聴き取れなかったが良くない言葉なのだろう。大人しそうな見た目のご令嬢だったのにエリーナ嬢に掴みかかろうとしていたのだから。
それに確かあのご令嬢は...。
エリーナ嬢の言動は目に余る物があるがエリック殿下もアレクも許しているから私としてはあまり強く言えないのだ。
「...ローゼリア様やソフィア様はその様なことはしないと思うのだが。」
「いえ!きっとお2人が差し向けて来たのに違いありません~。だってエリック様の婚約者になりたいはずなのに~私がエリック様と仲良いのが気に食わないのですよぉ~!ソフィア様も同じで婚約者であるウィリアム様に構ってもらっている私の事がとーっても嫌いなはずなのですぅ~!」
「うーん、あの2人の差し金となると中々僕からは何も言えないんだよねぇ。でも、エリーナ嬢が困っているなら僕から2人に注意しとくよ。」
「まぁ!本当ですかぁ~?私凄く嬉しいですぅ~ありがとうございます。アレク様ぁ~」
(もう何も言うまい...。だが、一応ローゼリア様とソフィア様にはこの事をそれとなく伝えなくては。...ローゼリア様、俺の事知ってくれているだろうか?)
俺はこの学園に入学して初めてローゼリア様にお会いしたが、あんな美しい人を見た事が無いと思った。まさに女神が舞い降りたのではと俺は恥ずかしながら慌ててしまったのだ。
だが、彼女と話す機会は全く無く、エリック殿下が彼女に話す時に後ろに控えている事位しか出来ず俺は彼女の視界に入っているのか不安でならない。それに言動に問題有りのエリーナ嬢も引っ付いているのもあり、ローゼリア様からこちらに話を掛けては来ないのだ。
(エリーナ嬢は分かるが、エリック殿下の事もローゼリア様は凄く避けているんだよな...。このメンバーから離れてローゼリア様の所へと行けたらどんなに幸せな事か...。)
いつになったらここから解放されるのかアレクとエリーナ嬢のやり取りを横目で見ながら深い溜息をついた。




