【29】
思ってたより長くなったので章を作ってみました。
ラウス殿下とお別れしてから結構な時が経ってしまい私はもう13歳となる。ラウス殿下とはお手紙のやり取りをしてはいるが、あれから1度も会えていない。ラウス殿下は公務やお勉強でとても忙しいらしい。私も公爵令嬢として恥ずかしくないように勉強やダンス等を頑張っている。
そんな私は明日から貴族が通う学園へと入学する。
「ねぇエルト、私明日から学園へ通うのよ。寂しいわよね...。私は四六時中エルトと会えないなんて寂しすぎるわ。」
エルトとは、ラウス殿下とお別れしてから少し元気が無くなった私に両親がプレゼントしてくれた正真正銘の犬だ。ふわふわの黒の毛並みで瞳が青と緑のオッドアイというなんとも魅力的なワンコである。
「ねぇアレン、学園にエルトと一緒に通学して一緒に授業を受けてはいけないのかしら...。学園内でもエルトと一緒が良いわ。」
「はぁ、ロゼ様お気持ちは分からなくも無いですが、エルトは学園には連れて行けません。一緒に行くのは私とアンナのみです。我慢下さいませ。」
最近のアレンは僕から私に言葉遣いも変わり、身長も小さい頃は同じだったのに今では私の頭1つ...いや、2つ程上にあり、見上げるのが少し大変な程成長してしまった。顔つきも可愛らしかった少年から爽やかな青年へと少しづつ変わってきている。
「アレンやアンナが一緒なのは嬉しいし安心するけど、授業は別じゃない...。」
「お嬢様は学園が楽しみでは無いのですか?」
「うーん、楽しみな要素が見当たらないわ。」
少し前から私付きの侍女になったアンナは、メリーの2番目の娘で私の1つ上のしっかりした女性である。
(だって学園行ったら確実に悪役令嬢認定されるはず。別にイジメとかするつもり全く無いけど私の容姿はキツく見えやすいから皆からきっと怖がられるはず...何だか自分で言ってて悲しくなってきたな。)
「色々な爵位の方とお友達になったり情報交換も出来るはずですよ。楽しまないと勿体無いかと。」
「うーん。そうよね、後は色々な事も学べるだろうしね。でも、エルトとの時間が少ないなんて悲しすぎるわ。」
「そう言えばロゼ様、ウィリアム殿下はもうご入学されているので安心では無いのですか?」
「ご婚約者のソフィア様もいらっしゃるからきっと大丈夫ですよ。」
「...そうね。じゃないわ!てことは、同い年のエリック殿下も入学されるじゃない!はぁもう憂鬱だわ...。」
私は明日から始まる恐怖の学園生活を考えないようにふわふわなエルトのお腹に顔を埋めた。
「...アレン様、お嬢様はエリック殿下と何かあったのですか?」
「そうか、アンナはあの頃まだロゼ様付きでは無かったね。ロゼ様が6歳の時にエリック殿下と顔合わせがあったんだ。その時にエリック殿下ロゼ様の事を“ブス”呼ばわりしたらしくてその後も酷い事言われたらしくて...。」
「まぁ!酷い話ですね。お嬢様はこんなに美しいのに。」
「あぁ、本当に。この世から抹殺したくなったよ。」
不吉な言葉が聞こえてきた気がしたけど私は気にせずにエルトのふわふわを堪能していた。




