エル視点④
闇オークションに捕まった時からのエル視点です。
長くなってしまいました。((汗))
僕はここに住み始めて数ヶ月が経った。彼女以外にもアレン、ウィンズリー公爵夫妻、ここの使用人達にはだいぶ慣れてきた。まだガタイの良い男性が近くにいるとソワソワするけど、前みたいに身体全体が震え出すことは無くなった。
彼女がずっと傍にいてくれるし、「大丈夫よ。怖くないわ。」と言って頭や背中を撫でてくれるから凄く安心する。
公爵が闇オークションについて調べていると聞いてはいたけど、まさか僕がまた捕まるなんて...それに今回は一緒にいた彼女とアレンも...。
またあの時の暗い部屋...でも今回は彼女もアレンもいる。そして、他にも捕まっている貴族の子供や平民、後は僕と同じ獣人の子供が数人。前みたいに独りぼっちでは無かった。
「私達は今日帰らないし、いつもの従者もお父様とお母様に報告してくれるだろうから私達の事をすぐに見つけてくれるはずだわ。...それまでに闇オークションを開催している大元を見つけないとまた逃げられてしまうわ。」
彼女はこんなに気丈に振舞っている。でも、少しだけ手が震えているのが見えて僕は怯えているように見せて彼女に抱き着いた。少しでも彼女の震えが止まるように...。
「扉はここだけだし...オークション開始までここで待機かしらねぇ。でも、オークションで売られてしまったら意味無いものねぇ...またあの単細胞馬鹿2人組来ないかしら」
「ロゼ様、単細胞馬鹿2人組とは先程の?」
(単細胞...馬鹿...たぶんさっきの奴らの事を言ってるんだよね。ロゼもそんな事を言うんだ。でも、なんだか親近感沸くから嬉しいなぁ)
僕達はウィルという僕達より少し年上の人と仲良くなり情報交換やここを出る作戦を練った。
彼女のお陰でアレンが外へと脱出を成功させた。
(今は僕しかいないんだからしっかりロゼを守らないと!)
助けが来るまで...来たとしてもずっと彼女の傍にいようと決意した。
闇オークション開催当日になり彼女の父親であるウィンズリー公爵と騎士の人達が罪人達を一人残らず捕らえて行った。
公爵に彼女と僕はある一室へと連れて行かれた。
「此方の方はこの国の第1王子であるウィリアム殿下だ。」
(げっ。やっぱりそうだったのか...。仕草が洗練されていたから貴族だとは思ってたし、匂いや目付きが違ったからもしかしたらと考えてはいたけど...。)
そして、彼はとんでもない事を告げた。
「...私の2つ下とは思えないな。顔はまだ幼いが中身はとても6歳とは思えない。私の弟のエリックの婚約者にしたいな。あいつは少し...アレなんだ...」
(こ、婚約者!?こいつの弟の...。嫌だ!絶対に嫌だ。ロゼが他の誰かの物になるなんて...嫌だ。...でも、ロゼや公爵はどう考えてるのかな?)
「...私のような者が王家の婚約者になど恐れ多い事にございます。」
「殿下、私からも。その...まだローゼリアは6歳と幼いので、婚約者等とはまだお早い話かと。」
「くくっ、公爵、自分の可愛い愛娘が誰かの物になるのが嫌なだけだろ?まぁ、相手がエリックというのも気に入らない要因かな?」
「...まぁ確かにウィリアム殿下でしたら、少し考えさせて頂きたい所ではありますが、そのエリック殿下は...。私はローゼリアに幸せになってもらいたいので、申し訳ございません。」
「ふっ、正直だな。まぁ気持ちは充分に分かる。ただ、ウィンズリー公爵家は王家にとって大事な存在だ。そして、今回の働きもある。陛下が黙ってはいないだろう。...近々招かれるだろうな。」
(よ、良かった...2人共否定的で。でも、これがこの国の王からの命令になってしまったら取り返しがつかない事になってしまう。ロゼが誰かの物になってしまう...。今のままじゃ駄目なんだ。もう少しだけロゼの傍にいたい...けどこのままじゃ...強く賢くならなきゃ!)
「ローゼリア...いや、ロゼと呼ばせて貰おう。だから君も先程までと同じくウィルと呼んでくれ。王子と知って一歩引かれるのは寂しい。...そこの幼き王子も同じだろうな。」
彼は最後に僕の方に視線を寄越した。僕の事情もそして、僕の心まで見透かされているようなそんな鋭い目付きだった。
最後の一言は彼女の耳に届いていなかったようで僕は安心した。彼が言うように彼女に王子だと知られて一歩引かれるのは寂しくツラい...。いつものように撫でてくれなくなるのは嫌なのだ。
彼とは今後とも長い付き合いになりそうだ。と僕は彼の視線を受けそう思ったのだった。
一旦エル視点終わります。
暖かく見守って下さってありがとうございます。




