【16】
話し合った結果いつもご飯を運んでくるのは語尾を伸ばした喋りをする男のリックスらしいので私が彼を惹き付けている間にアレンとウィルがバレないように外へ出ていく。という作戦だ。
「明後日はもうオークション当日だから明日しか無いわね...本当ならもう数人連れて行って欲しいけれど、難しそうだものね。...アレン、ウィル様気を付けて下さい。」
「はい、必ず外に出て助けを呼んできます。」
「あぁ、君はここの子供達を任せた。君も充分気をつけて」
「はい、エルもいてくれるから大丈夫ですわ。」
コクン
捕まってからずっとエルは私の傍を離れない。震えていたのは最初だけで後はずっと私を守るように傍にいてくれる。
「エルがいてくれるから心強いわ。」
エルを撫でながら微笑み掛けると彼も嬉しそうに目を細めてくれた。
「作戦決行は明日の夜だ。...もう今日は遅いから寝よう。」
私達はお互いにおやすみと言って身体を寄せ合い丸くなって寝た。
「おーい。夕飯だよー」
ついに作戦決行の時が来た。やはり今日も変わらずリックスが運んできてくれたので有難い。
「あ、お兄さんありがとうございます。今日のご飯はなんですか?」
リックスがご飯を1人1人に配り出している時はあまり扉に意識を向けないのは知っている。だからアレンとウィル様が扉に近付きやすいようにリックスに話し掛ける。
「今日はねー、いつものパンとコーンポタージュだよー。明日はオークション当日だから良い物食わせておけと依頼主様が言うからさー。」
「そうですか。いつも味が薄いスープばかりでしたから嬉しいわ。オークションは明日なのですね。」
話しながらアレンとウィル様が扉から出て行くのを確認した。
「そうだよねー。育ち盛りなのに味気ないスープってツラいよねー。でも、明日になったらお貴族様達に買ってもらえるから良い暮らし出来るんじゃないかなー?あ、でも、ここに買いに来る人達って変なお貴族様ばかりだから無理かなー?」
「...変な、お貴族様、ですか!?」
「うん、そうだよー。変な趣味嗜好を持った人が多いんだよねー。そんな人達がいるからオークションが開催されてるんだけどねー。そうそう、前にここで働いてた奴はねー、商品の子供達を虐待して傷付けちゃったからー、お貴族様達が怒って大変だったんだー。」
(それはきっとエル達が保護された時の話よね。...じゃあ、その人はいないって事ね。)
「...その人はもういないの?」
「うん確かねー、依頼主様がその人を闇オークションの黒幕に仕立てあげたとかなんとか話していたのを聞いたんだよねー。」
(お父様が捕まえたという人ね。そういう理由で替え玉にされたのね。ま、エルを虐待してたんだもん捕まって当然よ!!)
ご飯がみんなに行き渡り余ってるパンがあるというのにアレンとウィル様がいない事に気付かないリックス。
(はぁ、本当にこの人馬鹿で良かった。今頃アレンとウィル様は外に出れたかな?他の仲間達に捕まってないと良いのだけど...)
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