【101】
走って何処かへ行ってしまったリノア様をエルが追い掛けるのかな?と思ってみていると動かずに紅茶を飲んでいる。
「エ、エル?追い掛けなくて良いの?」
「ん?良いよ。僕はロゼと一緒にいたいし。」
『追い掛ける意味がわからない』と言って一向に動く気配がない。
(ま、まぁ、そうなのかもしれないけど...でも、私だったら好きな人には追い掛けて貰いたい...。でも、リノア様がエルの事が好きなんだってエル自身は知らないのよね。...でも、私...エルが追い掛けなくて良かったと安心している...。)
そんな事を思っている自分に私は驚いた。
(...安心、している?...エルが、リノア様を追い掛けなくて...そっか、そうか...始めたから...)
「エル、私、リノア様が心配だから探してくるわ」
「え?気にしなくて良いと思うよ。今にさっきの事を忘れて帰ってくるよ。」
(いやいやいや!それは無いでしょ!エル、リノア様の事をなんだと思ってるの!?)
のんびりしているエルに驚きつつも幼馴染というのはこんな感じなのかな?と思いつつ私は皆に席を立つのを謝罪してリノア様が飛び出して行った方へと足を向けた。
「っ、ヒクッ...ヒック...」
少し歩くと何処からか泣き声らしき音が聞こえて来た。
(...あ、ここにいたのね。)
物陰へと隠れているが尻尾が少しその物陰から出ているのと泣き声ですぐにリノア様がいるのが分かった。
(『頭隠して』って奴ね。実際は尻尾だけど...)
その光景に少しだけ強ばった頬が緩んだ。
「...リノア様?」
「ッ!?!?」
きっと私が来るだなんて思いもしなかったのだろう。
「ロ、ロ、ロ...ロー、ゼリア...さ、ま!?」
口をパクパクと動かして私の名前を呼ぶが真っ赤な目を大きくして驚いている。
「ええ、驚かせてしまってごめんなさい。でも、どうしてもほおって置けなくて。」
真っ赤な目は痛々しい。私はハンカチをリノア様に渡した。
『ありがとう』と小さくもお礼を言ってくれてそのハンカチを受け取った。
「ど、うして、貴女が?...誰も来てくれないと思った...」
「どうしてかしらね。でも、私、リノア様にライバル宣言されたのよ?貴女の事を気にするのは当たり前だわ。」
「うっ...わ、笑いに来たんだな!...惨めだと、笑いに来た...って感じでも無いみたいね。」
「ええ、それは決してないわ。ねぇリノア様、私ね...」
話の途中だけど長くなりそうだったから物陰に隠れていたリノア様を連れ出して淑女としてはしたないかもしれないが、私達は近くの芝生へとお互い腰を下ろした。
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