【96】
「貴女はラウスが好きではないの?」
「...良く分からない、のです。ですが、彼といると安心出来て幸せな気分になるので、多分好きなのだと思います。」
『そうですか』と納得したような標的を見つけたような先程とはまた違った視線で私に向き直ると
「私はラウスが好きだ。だから貴女と私はライバルね!」
(え?何何何!?いきなりライバル宣言!?)
いきなりライバルに任命されてしまった。
リノア様に言われて先程、恋をしていると自覚したのにいきなりライバルが現れてしまった。
(まぁリノア様がいなければこの想いに気付くのももっと後だったかもしれない。いや、でも、いきなりライバル宣言されるなんて...)
「あ、あの、ライバルというのは?」
鼻息荒いリノア様に私は問い掛けた。
「ふっふっふっ。私は嬉しいのです!せっかく学園に通ってるのよ。学園といえば恋愛じゃない!恋愛といえばライバルよ。アーステル国ではこういうの無かったのです。だからとっても嬉しくて!」
彼女は嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。
先程までの鋭い雰囲気や初めて会った時の可憐な仕草は無く、ただ本能のままに動いてるような...とっても活き活きしているリノア様が私の目の前にいた。
「...さ、ま〜...リ...様〜...リノア様っ!」
少し遠くで誰かがリノア様を呼んでいる事に私達は気付いた。
「リノア様、誰かが...」
という前にリノア様を呼んでいた人物が私達の前に現れた。
「ん?ローゼリアもここにいたのか。」
「珍しいね、ロゼとリノアの2人なんて」
現れた人物はエリック殿下と...先程の話題のエルだった。
「ラウス!私を呼びに来たのか?」
嬉しそうにエルの腕に自分の腕を絡ませてエルに問いかける仕草はとても可愛くて同性の私でもキュンっと来てしまう。
「エリック殿下がリノアを探していたんだ。勝手にいなくなるのはダメだって言われてただろ?」
エルは眉を寄せながらもその腕を外そうとはしない。
(...なんか自覚してからこの姿見ちゃうと...なんかツラいかも)
『なんでその腕を外さないの!?エルはリノア様が好きなの!?』なんて言葉が出てしまいそうで必死で口を開かないように意識する。
「リノア嬢、俺が案内しますので」
「殿下が案内してくれるのですか?でも、エスコートはラウスがやってくれるよね?」
「え、僕はロゼに用事があるんだ。それにエスコートはエリック殿下がしてくれるよ。」
そう言うと優しくリノア様の腕を外して私の所まで来てくれた。
「リノア嬢、すまないが俺で我慢してくれ」
全然“すまない”なんて顔をしてないエリック殿下がリノア様を無理やりエスコートして連れて行った。
(あれはエスコートというより...言う事聞かない飼い犬をリードで引っ張ってる感じなんだけど、大丈夫なのかな?)
「ロゼ、リノアに何かされてない?大丈夫?」
心配そうに私の顔を覗き込むエルに先程自覚してしまった想いがバレないように俯いてしまった。
「何かされた!?」
その為、違う勘違いをエルがしてしまい訂正するに少し時間が掛かってしまった。
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