【95】
「エル?」
エルとリノア様は私達の1つ下になるのでここの休憩室を使うのは珍しい。まぁ年上であるソフィア様は嬉しい事に私に会いに来てくれるので他の学年の生徒も使ってはいけないというルールは無い。
だが、エルとリノア様の教室からは結構離れているので1つ下の生徒がここを利用する事はほぼ無いのだ。
「どうしてここへ?」
「ロゼがいるかな、と思ってリノアの学園案内のついでに来たんだ。当たってて良かった。」
と、嬉しそうに尻尾を振るエルが微笑ましくてついいつもの癖でエルの頭を撫でてしまいそうになったが後ろにいるリノア様の視線に気付き伸ばしかけの手を引っ込めた。
(リノア様...今、私を、睨んだ?いや、まさかね。)
リノア様の鋭い視線に気付かないように皆の会話に入っていく。
「ローゼリア様、少しよろしいでしょうか?」
それは放課後の事だった。
授業も終わり少し調べ物をしたくて学園の第2図書室へと向かう所でリノア様に呼び止められた。
(なんか似たような事、前にあった気が...嫌な予感しかしないなぁ)
「リノア様、どうなさったの?」
案内役のエルやエリック殿下が見当たらないのでリノア様は私を1人で探しに来たのだろう。
「単刀直入に言う。ローゼリア様、貴女はラウスが好きなのですか?」
まさに“肉食獣”
私を睨むその鋭さは獲物を捉えた時の瞳のようで今にも飛び掛ってきそうな程の気迫。
普段の彼女は黒豹というよりは“黒猫”のように可愛らしいのだが、偶に言動に騎士の雰囲気が漂うだけだった。
「...」
答えられなかった。
それは彼女が怖いからという訳では無くて...。
私が彼を“好き”なのかどうかまだ良く分からないからだ。
「何故黙るのですか?」
「...貴女はエ、ラウス殿下の何処をお慕いしてるのです?」
(質問を質問で返しちゃった。でも、そんな、直球に好きなんて聞かれても困るよぉ)
「私は小さい頃、そして途中で帰ってきてからもずっとラウスといました。両親には小さい頃から『未来の旦那様よ。』なんて言われていたのもありますが...でも、ラウスといると心地が良いんです。だから両親に言われていただけではなくて私自身、ラウスが好きなのです!」
(...一緒にいて、心地が...良い)
確かに私はエルと一緒にいると楽しいし安心する。逆にエルが傍にいてくれないと何処か寂しくて今、何をしているのかな?なんて考える事が多い。
最近、エルが私の家ではなくて城に泊まってリノア様と一緒にいる。というのを知った時は胸の奥がズキズキと傷んだ。それにリノア様と一緒にいる所を見るとモヤモヤとした気持ちが溢れそうになっていた。
「...それって」
頭の中で考えていたのが、口から出そうになって今はリノア様と話しているのだ。と思い慌てて口を噤んだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。