【94】
「あぁ、それで最近殿下はリアに引っ付いてるんだ。リアはお人好し過ぎるよ。」
先日あった事をソフィア様とルー、ユリアス様に話をすると皆呆れた顔を私に向けてきた。
「だって、だって、あんな仔犬のような表情で頼まれたら断れないよ...」
「ロゼちゃんは優しいから仕方ないわねぇ。でも、アレク様やエリーナ様の事もあって殿下、学園中から距離を置かれてるのよね。一応ルドルフ様が戻ってきたけれど...」
ソフィア様の言いたい事も分かる。ルドルフ様はウィル様の側近なのでいずれはエリック殿下の傍から離れるのだろう。それに学園はエリーナ様に付いては詳しくは知られてないけれど、あのエリーナ様の態度は学園皆が困っていたしアレク様の件は皆が知っている事だ。
その問題児2人を傍に置いておいたのはエリック殿下なのだ。相当な馬鹿でなければエリック殿下に近付こうとは思わないだろう。
「エリック殿下の事もそうだけど、ローゼリアちゃん良いのか?ラウス殿下とリノア嬢は」
それまで口を閉ざしていたユリアス様が私が今、もっとも話題にしたくない話をぶっ込んで来た。
「...良いとは?」
「ラウス殿下はローゼリアちゃん一筋なのは分かっているがリノア嬢はその事を知ってるのか知らないとか分からないが、ずっとラウス殿下から離れてないだろう?それで良いのかなぁ〜って思って」
「...良いも何もリノア様はエルと同じアーステル国の方なのよ。一緒にいて当たり前だわ。違う国に来て心細いから同じ国同士一緒にいるのは何もおかしな事では無いわ。」
ユリアス様に言ってる筈なのに自分に言い聞かせるように呟く。
(そうよ、何もおかしな事ではないのよ...何も)
「ロゼちゃん...」
「ねぇ、リア、ちゃんと自分の気持ちに向き合わないと大切なものを無くしてしまうよ。」
「ルー...」
「そうだぜ、ローゼリアちゃん、ちゃんと心の内を伝えないと後悔するからな。...俺みたいにさ」
(心の内...このモヤモヤをエルに伝える?恋人でも無いのにそんな事出来るはずない。そもそも私はエルの事を...)
「伝えるって言われても...弟のような存在のエルに何を伝えるっていうの?」
「「「へ?」」」
3人が3人とも目を丸めて驚いている。
「ソフィア様まで!」
「え、あ、あの?...ロゼちゃんはラウス殿下が好きなんでしょ?」
「好き?えぇ、まぁ小さい頃から一緒にいて弟のように思ってましたから嫌いではないです。好きですね。」
「リア...いつもあんなにラウス殿下とスキンシップ多いのは弟だと思ってたから?」
「スキンシップ...そうね、エルといると心地が良いから...でも、エルに気持ちを伝えられてからドキドキしてしまうのもあるのよね。」
「ローゼリアちゃんって鈍感なの?それとも知らないフリをしているとか?」
「鈍感では無いはずよ!失礼ね!」
「ロゼちゃん...ラウス殿下がロゼちゃんの傍にいなくて寂しいのでしょ?リノア様と一緒にいるラウス殿下を見るとロゼちゃん、胸が苦しくなるのでしょ?」
「...はい」
「それって...」
「あ!ロゼ!ここにいたんだね」
話題のその人が嬉しそうに私に手を振って此方に来ようとしている傍にリノア様を見つけて私は複雑な気持ちが胸に広がった。
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