【93】
リノア様がこの国に滞在して数日経ち、学園にもエルと一緒に登校して来た。
その2人の姿を見るのが何故だか胸が締め付けられるような思いになってしまい。2人を見ると回れ右をしてしまうのだ。
「はぁ...」
先程も2人の姿を見かけてしまい逃げるように私は中庭へとやってきた。
「ん?誰だ?」
「あ、エリック殿下」
中庭にいたのはエリック殿下だった。
「あぁ、ローゼリアか」
「え、えぇ。邪魔をしてしまい申し訳ありません。」
私はこの気まずい雰囲気に耐えられなくてこの場を去ろうとした。
「あ、待ってくれ。...その、なんだ...悪かった。」
「え?」
エリック殿下から発せられた言葉が理解出来なくて聞き返してしまったのは仕方ないだろう。
「っ!だから悪かったと言っているんだ。」
「は、はぁ」
(謝罪の言葉を述べてる人がキレてどうすんのよ。)
「...幼い頃に言った言葉で君を傷付けた事も...そして、今回俺の友人がした行いについても...本当にすまなかった。」
「...殿下...頭をお上げください。殿下がそう簡単に頭など下げてはなりません。それに貴方の言葉で傷付けられた等と思ってませんしアレク様やエリーナ様の事は殿下は関係ありませんので謝る必要は無いかと」
「...だが」
まだ何か言いたそうにしているエリック殿下に
「そこまで謝りたいのなら謝罪をお受けします。それでよろしいですか?」
少し意地悪な顔をしてエリック殿下に言うと顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
(あら、機嫌損ねてしまったかな?)
「...俺と...友達に、なってくれないか?」
小さな声で呟いたエリック殿下に私聞き取れずにもう一度聞き返した。
「っ!!だから、俺と...友達になってはくれないだろうか!?と言ったんだ。」
「へ?友達ですか?」
「あ、あぁ。これからは友達として俺と仲良くして欲しい。ローゼリア、お前は兄上とも仲が良いし王子だからと俺に迫ってこない。大抵の奴は王子である俺だから仲良くなろうと来るのだ。今まではそれでも良かったんだ、友達になれるなら...でも、今回の事で俺は王子として傍にいる奴をちゃんと見極めないといけないと兄上に叱られて理解した。」
ウィル様に叱られた事を思い出したみたいで顔が青ざめている。
(どんだけウィル様怒ったのかな?いつも優しいから想像出来ないんだよねぇ。)
「お前が...良ければその、頼む、友達になってくれないか」
懇願するような瞳で私を見てきて困惑する。
(なんか嫌だと言いづらい...。)
「友達って頼むものではない気はしますが...私で良ければ」
あまりにも必死に頼み込むエリック殿下を無下には出来ず、承諾してしまった。
(まぁこれからの友達関係について軽い助言などして良い方向へ行ってもらえれば私なんていらなくなるだろうしね!もし、婚約者の“こ”の字でも出ればウィル様に相談しよう!そうしよう!)
なんて悪い考えをしている私にたいして、エリック殿下は私が友達を承諾した事が嬉しかったのか仄かに頬を赤らめて『友達か』と嬉しそうに呟いていたがとりあえず無視を決め込んだ。
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