エリック視点②
引き続きエリック視点となります。
次に兄上に呼ばれたのはローゼリアが無事に保護された時だった。
「ロゼは無事だったよ。それでエリック、君は何か情報はある?」
ローゼリアが無事だと知りホッとしたのもつかの間、兄上からの問いに背筋を整えた。
「まだ確実ではありませんが、ローゼリア嬢が捕まるまでの間にエリーナ嬢が俺や仲が良い子息達は勿論、ご令嬢達にも『ローゼリアは帰って来ない』と笑顔で話していました。詳しく聞いてもローゼリアはそうなる運命としか言わなくて...」
「運命、ね。引き続き頼む」
軽く一礼して兄上の執務室を後にした。
それからはエリーナ嬢の行動だったり気になる話を兄上へと伝えたりした。
アレクの一件で少しは大人しくなるかと思っていたが、それは最初の数日だけですぐに元に戻りエリーナ嬢から離れなかった子息達と仲良くしている。
相変わらず俺の所にも来るが拒まずにいるだけで最初にあった“興味”はもう無い。
最初は貴族であるのに自由で見た目も庇護欲をそそるような可愛らしく気さくに王族である俺に話しかけてくるのが新鮮で興味がわき、そのまま傍に置いていた。
アレクは次期宰相であり俺と同い年だった為、必然的に俺の側近になった。
ルドルフは兄上の側近であったが、年は俺と同じだったのもあり学園生活中は俺の護衛となった。
アレクもルドルフも誰かに指示されて俺の傍にいたがエリーナ嬢だけは自分で選んだ。しかし、王族として見る目を養う事が俺には出来ていなかったのだ。
だからこそ、ローゼリアが保護されエリーナ嬢が不敬罪などで捕まり修道院へ行く事が決まった時に兄上に今までに無いほどのお叱りを受けた。
「...エリック、分かっているね?お前は王族という自覚が欠けている。」
兄上が自分の事を“俺”や弟である俺の事を“お前”と呼ぶ時は素を出している時と物凄く怒っている時だ。
今は...後者である。
「はい...」
「少しは成長したかと思っていたけど...剣ばかり握っているからだ。剣の腕は騎士の中でも上位なのは俺も分かっている。しかし、他にも身につけなければいけないことが山程ある事を理解しているかい?」
「...はい」
「ならこれからはもっと視野を広げて王族としてどう動けば良いのか考えろ。」
「そ、れだけ、ですか?」
謹慎とかあるのだと思った。
今回の件について俺は一切関わりが無いが、しかし俺が甘かったせいでエリーナ嬢を付け上がらせたのも事実だ。
「あぁ、精進しろ。それだけだ。」
この後も夜が更けるまで兄上の説教を聞き続けたのだった。
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