【89】
「リア、やっと落ち着いたね」
やっと私自身もそして学園も落ち着いてきた。
エリーナ様が学園を去った次の日は生徒達の間で色々な憶測が飛び交っていた。しかし、数日そして数週間経つにつれてエリーナ様という存在自体が無かったかのように噂話も聞かなくなった。
そんな中、私達はルーやソフィア様、ユリアス様といつもの所でお茶会をしている。
「えぇ、やっとね。皆様には本当にお世話になりましたわ。」
エルから皆が私の為に動いてくれていた事を聞いた後にお礼の品を送ったし何回もお礼を言っていてきっと皆は耳にタコが出来ているかもしれない。
でも、皆がいなかったらもっと酷い事になっていたかと思うと何回でもお礼を言わずにはいられなかった。
「もう!ロゼちゃん、本当に良いのよ!私がやりたくてやったのだもの!お礼は聞き飽きたわ。」
と、頬を膨らませながら言うソフィア様は本当に可愛らしい。見た目は清楚で美しい女性で他の人の前では常にしっかりしている人だが、私の前やウィル様、そして気を許した数少ない人達の前ではこうやって少しお茶目な部分を見せてくれるのだ。
そこがまた可愛らしくていつも私はやられている。これこそギャップ萌えというやつだ。
「ですが、ソフィア様達が動いてくれなかったらどうなっていたかと最悪な方向に時々考えてしまうのです。...けれど、ずっとそんな事を考えていてはダメですよね。」
「えぇ!そうよ。楽しい事を考えましょ?そうねぇ、あっ!ロゼちゃんの婚約者でも考えましょうよ。まだロゼちゃんにはいないのだし。誰が良いかしらねぇ?」
と言ってソフィア様が楽しそうな顔をして爆弾を投げてきた。
「あぁ、ローゼリアちゃんはまだ婚約者がいないんだったね。本当にどうするの?」
それまで黙っていたユリアス様が口を開く。
「このままだと噂通りにエリック殿下に嫁ぎそうだよね。リア」
現実になりそうな怖い話をルーが口にする。
「え、そ、それは...」
「それなら大丈夫じゃないかしら?でも、ロゼちゃんが、本当の妹になってくれるならそんな喜ばしい事は無いのだけど。でも、幼少の頃に色々あったじゃない?だから公爵家は許すはずないと思うもの。」
「本当に殿下何かしてたんだ。」
「まぁあの感じだとやってそうだよね。」
ソフィア様に続きルーやユリアス様が納得したように呟く。
「最近は仲良かった2人がいなくなって意気消沈してるみたいで静かだけどね。」
「ふふ、それはね。仲良い2人がいなくなったのもあるけれど、ウィル様にこれでもかってくらいに叱られたらしいのよね。」
「え?そうなのですか?」
「えぇ、そうみたいよ。あの時もウィル様が叱ったみたいだけど、今回は一国を守る王族として叱ったとウィル様が仰ってたわ。」
「王族として、ですか?」
「人をちゃんと見極める力がエリック殿下には無いのよね。純粋なエリック殿下だからこそかもしれないけれど、ちゃんと信頼出来る人を傍に置かなければ国を滅ぼしかねないのよ。だからウィル様は信頼出来る側近のルドルフ様を付けたのよ。」
「ルドルフ様って本当はウィル様の側近なのですね。知りませんでした。...だから伯爵家にルドルフ様が来たのですね。」
ダミエル伯爵家の時にルドルフがエル達と一緒に乗り込んできたのが不思議だった。
エリック殿下がそんな指示出すはずないし、今回動いてくれているのはウィル様だろうと思っていたからここにルドルフが来たのが疑問だったのだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
4月中に完結を目指しております。
...がんばります。