【88】
誤字報告ありがとうございます。
エリーナ様が修道院へ行った事はすぐに学園中に広がった。
(こんなに早く広がるとは、でも当たり前と言えば当たり前よね。)
私が誘拐されたりした事はウィル様のお陰で広がらずに済んだみたいだ。さすが殿下だなと尊敬するが絶対に敵には回したくないタイプだなと思うのだった。
「普通にしていればヒロインになれたはずなのに...」
乙女ゲームの世界のヒロインなのだ。可愛くないわけがない。誰にでも好かれようとした結果あんなに空回って最後はヒロインが悪役令嬢のような嫌がらせをして修道院に。
「ロゼ、またアイツの事を考えてるの?」
エリーナ様が修道院に行ってから数週間は経った。
でも、やっぱり同じ前世持ちで前世の時も知り合いだったのだ。すぐに忘れられる事なんて出来はしない。今世ではあんな酷い嫌がらせだってされたのだ。
「ラウス殿下、仕方ない事ですわ。そんなにすぐに忘れられる程、人は切り替えが良い訳では無いのですもの。」
「...まぁそうだよね。でも、今はこのソフィア嬢が用意してくれたお菓子を楽しもう?」
私がまだ気分が落ち込んでると心配してくれたソフィア様が私とエルをお茶会に招いてくれたのだ。有名なお菓子と美味しいハーブティが目の前にある。
「そうですね。ソフィア様失礼致しました。...美味しい」
目の前のお菓子を口に運ぶと優しい甘さが口いっぱいに広がった。
「でしょ?ふふ、甘いものは気分を上げてくれるのよ。」
(皆に心配掛けちゃってるなぁ。ソフィア様、本当に優しい!エルもずっと心配そうにしてるし、まぁ心配してくれてる時の耳や尻尾がどうにも言えない可愛さがあるのよね。)
「はい、ソフィア様ありがとうございます。エルもごめんね。心配してくれてありがとう。」
「いいのよ、ロゼちゃん。ロゼちゃんのペースでいいの。ま、これが失恋とかだったら皆全力で忘れさせると思うわよ。ふふ」
「へ?」
意味が分からない言葉が最後に聞こえてきて頭の中はハテナだらけだ。
「だって、そうでしょ?エリーナ様は女で前世は友人だったのだもの。私達では当たり前だけど、どうしても介入出来ないわ。でも!これがロゼちゃんが誰かを好きになっていて失恋してしまってずっと引き摺っているって事だったら私はもちろんだけど、ラウス殿下もウィル様も公爵家の皆様やルーカス様、ルドルフ様、ユリアス様は黙って無いと思うわよ。ふふ」
『ね、ラウス殿下』とソフィア様はニヤニヤしながらエルを見る。
「他の奴らは知らない。が、そんな事になっていたら僕は全力で忘れさせるよ。当たり前だよね。」
「ふふ、ですわよね。」
「は、はぁ...いや、ですが...ルー達までと言うのは無いのでは?」
きっとソフィア様は全力でやりそうなのは想像出来るしエルも...分かる。けれど、ルーやルドルフ、ユリアス様がそうなるとは限らない。まぁルーは友人として心配はしてくれるだろうけど。それにユリアス様はソフィア様が好きなのだ。有り得ないだろう。
「あら、ロゼちゃんはとっても鈍感さんなのね。」
「まぁ鈍感なので安心ではあるけどね。」
「あらあら、ラウス殿下」
2人は何を話しているのだろう?全く理解出来ない。私が鈍感等と言うけれどそうとは思わない!と訝しげに2人を見るけれど私の事は無視されたのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。