【87】
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私は戸惑いながら話を変えようとした。
「ね、ねぇ、エル。あの時何でエル達がいたの?私まだ詳しく話を聞いてないの。」
そうなのだ。私はウィル様に後で詳しく話すと言われて結局聞けずに帰ってきてしまったのだ。
「あぁ、それはね」
私が学園を休んでいる間にソフィア様達やエルがエリーナ様に近づき話を聞いているとダミエル伯爵の誘拐監禁を臭わせる話をソフィア様に話していたらしい。
そして、私が学園に通った時にソフィア様と別れて1人で歩いていく後ろを隠れ隠れ後をつけていたエリーナ様をウィル様が確認して何かあるかもしれないと尾行していたらしい。
「だから落されそうになった時にエルが助けに来てくれたのね。」
「うん、ウィリアム殿下とソフィア嬢とは別方向から後をつけていて良かったよ。ロゼが階段へ向かい始めて僕、嫌な予感がしたんだ。間に合って良かった。本当に...。」
間に合わなかったらと思うと怖かった。と私の片手をエルの額に付けられた。
「私、何だかエル達に心配ばかりさせているわね。」
(私、悪役令嬢なはずなのにね)
そう思うと何だか変な感じだ。普通ならば悪役令嬢として生を受けたのだからエリーナ様であるヒロインを攻略対象であるエル達に断罪されるはずだったのに逆にヒロインであるエリーナ様が断罪されてしまった。
「そう思うなら心配かけないように、僕の傍にずっといて」
「...」
エルの真剣な瞳に私は答えることが出来なかった。
(私は...どうしたら良いんだろう。エルの事は嫌いでは無いのよね。自分の気持ちがまだ分からないから...)
「...エル、私まだ自分の気持ちが分からなくて...」
「うん、大丈夫。ゆっくりで良いんだ。僕を拒絶しないでくれてありがとう」
柔らかい微笑みをエルが私に向けてくれた時に胸の奥がキュッ!っとなったけどそれが何なのかよく分からなかった。ただ、エルの微笑みが可愛すぎたのだと自分で納得して、アンナが持ってきてくれたお菓子を摘みながらゆったりとした時間を過ごした。
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