【84】
ウィル様にエリーナ様と話す機会を与えてもらった。
まだ罪を認めていないエリーナ様に私達は証拠を突き付けているが彼女の口から出てくるのは『私はヒロインだから』だ。ヒロインだからといって全てが許されるはずがない。
「...ねぇ、エリカ。私さ、貴女が羨ましかったのよ。」
今の転生したエリーナ様に話をしても無理かと思い前世のエリカにローゼリアとしてでは無くてのぞみとして話しかけてみた。
「は?羨ましい?あの人気者だった貴女が!?」
「人気者かは分からないけれど、私は貴女が羨ましかったわ。両親に愛されていて好きな事に没頭していた貴女が。」
「何それ。意味わからない。」
「必死で勉強して良い点を取っても私の親は私自身を褒めてもくれなかったわ。物心ついた時から死ぬまで1度も褒めてもらった事なんて無かったし、クラスの子達も影では私の悪口を言ってるの知っていたもの。それに貴女みたいに没頭出来るほどの好きな物が無かった...。今思い返してみても寂しい人生だったなぁって思うのよね。」
「...同情を誘う気!?そんな事をしても無駄よ!私知らなかったもん!のぞみもローゼリアもそんな事1度も言わなかったじゃない!だから私は悪くないわ!それにヒロインなんだもん、何でも許されるはずなのよ。ヒロインなんだから...」
「...知らなかったからといって人に嫌な思いをさせるのって人としてどうなの?」
低い声と冷たい瞳でエルがエリーナ様に問う。
「君も色々あったのだろうと会話を聞いてて少しは理解したけど、だからといってやっていい事と悪い事の区別くらいつくはずだよね。それに先程からヒロインヒロインって言ってるけど物語のヒロインはこんな事しないでしょ。ここまでの悪事を見逃せる程、私は甘くないんだ。それに被害を被ったのは妹のように可愛がっていたロゼだからね。君は男爵だ、そしてロゼは公爵だ。分かっているね。」
エルよりは優しい声音だが、目はエルと変わらない。怒りに満ちているような瞳で彼女を睨んでいる。
「...どうして、どうして...アンタさえいなければ良かったのに。」
顔を青くしながらも私を睨み続けた。
(...エリカ)
前世では私が勝手に親友だと勘違いしていて今世では関わろうとも思わなかった。
(知ろうとしなかったのは、私も同じね。...だとしても、あの子爵からの手紙も誘拐監禁も嫌がらせの手紙も呪いの人形も全てを許す事は出来ない。)
その後、エリーナ様は修道院へと送られる事になった。
男爵家も公爵家や王族を敵に回したくは無いのだろう、彼女の名前は男爵家から消えた。とりあえずの謝罪の手紙が送られてきたのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
上手いざまぁ展開にならなかった...。皆様がもし期待していたなら申し訳なく思いますが私の今の精一杯です(汗)