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第164話 方針会議・前編

 

 ☆


 話は少しだけ巻き戻る。


 フリード領の兵士を見送ったあと。

 エチゴールの屋敷に戻った俺たちは、うちの食堂に集まっていた。


「さて。フリードからの援軍も無事送り出して、とりあえず今回の事件に一つ区切りがついた。そこで今後の方針について話し合いたいと思うんだが、構わないか?」


 俺の問いかけに、皆が首肯する。


「それじゃあ、さしあたってやらなきゃいけないことを整理していこう」


 俺は皆に確認しながら、目の前のタスクの整理にとりかかった。




「まずやらなきゃならないのは、帝国の密偵……ラムズとジクサーの足取りを調べることだ。この一週間の行動を調べ、我が領周辺に潜む奴らの仲間をあぶり出す。具体的には、各街と村で目撃情報の収集を行うところから始める」


 俺はそう言うと、奥に座る子分たちを見た。


「そしてこの目撃情報の収集については、ジャイルズに責任者を頼みたい」


「えっ、俺?!」


 素っ頓狂な声をあげるジャイルズ。


「そうだ。この中で各村の子供と親に顔がきくのはお前だろう」


「ま、まあ、顔はきくけどさ」


 ジャイルズは照れくさいのか、まんざらでもなさそうに鼻の頭をかく。


 川流大介が転生してくる前の話。

 こいつは俺の護衛を務める傍ら、領内の各村で悪ガキどもをまとめていた。


 もちろん俺といる時間が長かったが、四六時中いっしょという訳でもなく、父親のクリストフが各村を巡回するときには必ずくっついてまわっていたのだ。


 元々面倒見のよいジャイルズのこと。その時に村の悪ガキどもと仲良くなり、あちこちでイタズラをしてまわっていたらしい。


「大人たちからの情報収集はクリストフを通じて駐在の領兵にもやらせる。が、こういうことは意外と子供の方がよく見ているものだ。そこでジャイルズは特に子供たちの目撃談を中心に情報を集めてくれ」




 すると、ジャイルズの隣のスタニエフが「うーん」と唸った。


「どうした、スタニエフ?」


「たしかにジャイルズなら村の子供たちから話を聞けると思います。ですが、その情報を一人で整理できるかというと……」


 不安げに相方を見るスタニエフ。


「なんだよスタ公。俺じゃ頼りないって言うのかよ」


 睨み返すジャイルズ。


「まあ、待て」


 俺は二人を止めに入った。


「この調査には、カレーナにも同行してもらいたい」


「えっ、私? 私がこいつと組むの?! スタニエフじゃなくて???」


 今度はカレーナが驚いて聞き返してきた。


「ああ。男どもと話をするのはジャイルズでいいだろうが、女の子が相手じゃこいつやスタニエフじゃ厳しいだろう?」


「うっ……まあ、ね」


 微妙に嫌そうな顔をするカレーナ。


 元々集団行動が苦手そうな子だからな。

 相手が暑苦しい脳筋ジャイルズとなれば余計にだろう。


 だけど今回は、ぜひこの二人に頼みたい。

 それは彼らがこの件で適任であると同時に、彼ら自身の経験と成長を考えてのことでもある。


「頼むよ、カレーナ」


 金髪の少女の目を見て、頼む。


「っ……」


 彼女は、ぷい、と横を向いた。

 そして、


「……わかったよ。その代わり、今回だけだからな」


「ああ、ああ。ありがとうカレーナ! 助かるよ」


 感謝する俺を、ちら、と見るカレーナ。

 俺は彼女に頷き、今度は脳筋の方の子分を見る。


「それじゃあジャイルズ、頼んだぞ」


「ああ、任しといてくれよ!!」


 こちらは、にっ、と自信ありげな笑みを返してきた。


 よし。

 これでこの件は、いいだろう。


 そのとき、誰かがぼそっと呟いた気がした。


「え?」


 俺が振り向くと同時に、ふい、と顔を逸らすエリス。


 今、「そのうち刺されるんじゃないかしら」って聞こえた気がしたんだが???



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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、知能労働を脳筋に任せたので、嫉妬した知能労働担当のスタニエフに刺されるんですね。
[一言] 【阿部定事件】起こされるよりマシやろ(目反らし
[一言] 刺されるね、うん。
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