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第147話 オフェル村へ

 

 翌朝。


 早めに目が覚めた俺はベッドに腰掛け、白んできた空を見上げながら、ボーっとこれからのことを考えていた。


 今回起こった2つの事件。

 エステル誘拐事件と、狂化ゴブリンによるオフェル村襲撃事件は、一応、解決した。


 だが、解決したら解決したでやらなければならないことがある。要するに、必要にせまられて色々やったことの後片付けだ。


「何から手をつければいいのやら」


 思わず遠い目をする。


 問題は山積みである。

 とりあえず思いつくものから一つずつ考えていこう。




 ①テナ村の人々の帰還について


 昨日、俺はラムズたちとの戦闘が拡大する可能性を考え、テナ村の人々をトーサ村経由でペントまで避難させようとした。


 脅威が去った今、村人たちを家に戻さなければならない。彼らにも生活があるのだ。


 幸いなことに、彼らはペントまでは移動していなかった。昨日の夕方、彼らがトーサ村に到着して休憩をとっているところに、クリストフの部下が追いつき、事件が解決したことを伝えたのだ。


 さすがにその日のうちに皆を村に戻すのは大変なので、昨夜はトーサ村にて一泊させ、今日、村に戻す手はずになっている。

 この件は、クリストフと領兵たちがうまくやってくれるだろう。



 ②ミエハル子爵への報告


 今回の誘拐については、表沙汰にしないことでエステル、カエデと合意した。

 エチゴールの信用だけでなく、カエデの出自にも関わることで「子爵には知られたくない」ということで意見が一致したのだ。

 彼女の屋敷の使用人には「修行のためカエデが抜き打ちでエステルを連れ出した」と説明することになっている。

 これもまあ、二人に任せればいいだろう。



 ③フリード伯爵領軍の送還


 幸いなことに、大きな被害もなく狂化ゴブリンを退治することができた。

 目の前の脅威がなくなった以上、彼らを無用にダルクバルトに引き止めるのは、双方のためにならないだろう。

 ……まあ、うちの金銭的な問題が一番大きいんだけどな。


 現状、ケイマン率いる先発隊がテナ村にいて、本隊は今日、ペント入りするはずだ。本隊の方々には到着早々帰還頂くことになるが、ちょっとした小旅行だったと思ってもらおう。


 彼らに対しては、ケイマンにこちらの意向を伝えれば、その通りにしてくれるだろう。




「…………」


 そうなると、やはり俺が直接、手をつけるべきなのは4つ目の問題か。



 ④ティナ、及び彼女のペンダントの保護


 ゲーム『ユグトリア・ノーツ』のヒロイン、ティナ。

 彼女と彼女の母親の形見のペンダントは、ゲームと同じく遺跡の『鍵』である可能性が高い。


 もう一つの『鍵』であるカエデは、エステルを人質に取られ、帝国の密偵に利用された。


 ゲーム内でティナが拉致されるのは3年後だが、既にゲームと異なる展開になってしまい2人の密偵を始末している以上、帝国の動きが前倒しされる前提で動いた方が良いだろう。


 早急に、手を打つ必要がある。

 オフェル村に向かわねばならない。


 それにあんなことがあった後だ。

 村人たちに領主家の顔を見せておくべきだろう。


「オフェル村、か」


 俺は立ち上がり、騒がしくなってきた窓の外を見る。


 村の中に張られたテントからは兵士たちが起き出し、朝の準備を始めていた。




 ☆




「オフェル村経由でペントに帰還する」


 朝食中に放った俺の言葉に、スタニエフが反応した。


「何か、目的があるんですか?」


 さすが未来の商会長。

 察しがいい。


「ああ。領主の息子として村の被害を確認するというのが一つ。もう一つは、ティナとペンダントの保護の算段をつけるためだ。ゲームの内容通り彼女が遺跡の『鍵』なら、遅かれ早かれ帝国に狙われることになるからな」


「なるほど。そういうことですか」


 納得するスタニエフ。

 が、隣のジャイルズは珍しく暗い顔だ。


「ティナがそんな素直に従うかな」


 そんなことを言う。

 あらやだ、この子反抗期?


 思わずまじまじとジャイルズの顔を見てしまった。

 悩み事でもあるのか、俯き気味に一定のペースで食べ物を口に運んでいる。


「まあ、素直には従わないだろうけどな」


 こっちの世界にやって来たときの様子を見る限り、彼女とリードの俺に対する評価は、推して知るべしだ。


 ただまあ、本人がどう考えるかは関係ない。


「従わせるようにするさ。ティナの母親は死んでいるが、たしか父親は同居してるだろう?」


 俺の言葉に、スプーンを止めるジャイルズ。


「ああ。元猟師で弓職人をやってるダリルさんだな。あの人はあの人で人当たりはいいけど、曲げないことは曲げない人だぜ?」


 おや?


「詳しいな、ジャイルズ。お前、ティナの父親と知り合いなのか?」


 驚いて尋ねると、ジャイルズは首を振った。


「いや、話したこともないけどさ。領内のガキどものことは、親兄弟含めてある程度知ってるから」


 ボソボソとそんなことを言う脳筋の方の子分。


 まじか?


「すごいなジャイルズ。お前がそんなことに目配りしてるなんて初めて知ったぞ?!」


「いや、まあ、そんな大したことねーよ」


 照れているのか、ジャイルズは再び食事に没頭し始めたのだった。




 ☆




「じゃあ、テナ村の住民を頼む」


「承知しましたぞ!!」


 村長宅の前で、クリストフとケイマンが俺たちを見送りに来ていた。


「ケイマン、後でペントで会おう」


「はっ。昼頃ペントに到着予定の本隊には、先ほど伝令を出しておきました。ですから多少遅くなっても大丈夫ですよ」


「恩にきるよ」


 クリストフとケイマンたちは、トーサ村経由でペントに向かう。

 うまくいけば、夕方にはペントで落ち合えるだろう。


「よしっ! それじゃあ、オフェル村に出発!!」


 俺は号令とともに馬を進める。

 隣には、もちろんエステルが轡を並べている。


『楽しい旅程になるといいな』と思いながら、テナ村の北門を出立したのだった。




 ☆




 ––––数刻後。


 俺の目の前には、胸元のペンダントを握りしめる少女と、そんな彼女を守るようにこちらに木剣を向けて立つ、茶髪の少年がいた。


「ボルマン、約束が違うぞ!? 潔くあきらめろ!!」


 往来のど真ん中で、ゲームの主人公、リードが叫ぶ。


 …………。

 一体、どうしてこうなった???




☆本作では、一緒に本作の未来を作って下さる方を募集中です。


「エステルとボルマンたちの活躍をもっと見たい」、「コミカライズして欲しい」という方は、ぜひ書籍版を。


◯紙の本は店頭にほとんど置いていませんので、お取り寄せ頂くかネット通販で。


◯電子書籍は各電書サイトで扱っていますので、紙にこだわりのない方はぜひご利用下さい。


それでは引き続き「ロープレ〜」をよろしくお願い致します。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] いやまあ当然でしょう。 リード達はボルマンが変わったって知らないんですから。 これも原作の強制力なのかもw
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