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哀愛

ただ、ただいたんだⅡ

作者: 並行双月

教室の隅で縮こまる少年一人。


彼こそ、このゾンビが彷徨う世界で残された最後の生存者だ。


2年前の夜、ついに最後の生存者達が集まるシェルターがゾンビに見つかった。

結果は言うまでもない。

唯一の子供である少年を庇い、大人は一人残らず己を犠牲にした。


化け物が蔓延る世界でただ一人。

とっくに死体に慣れていた少年は何も感じなかった。

何も感じることができなかったのだ。それから物資を求めて生き抜くこと2年、ゾンビのように彷徨い続け、各所で食べれるものやら飲めるものを漁ってかろうじて食い繫いてきた。


それも一週間前に終わった。

少年の活動範囲にはどうしても限界があった。

もう生きるための必須品は手に入らない。

せめてゾンビに食われないようにと、周りの崩れた建物を見て、未だに崩壊していない頑丈である自分の学校の教室に籠ることにした。


もちろんバリケードは何重にもはった。

昼間にはゾンビの活動が著しく低下するが、それでもやはり夜のゾンビは侮れない。

グイグイ寄せてくるゾンビに少しずつテリトリーを狭まれていくが、それでも少年はギリギリ持ちこたえていた。


限界を超えて8日目。

幻覚が見えた。

好きだった玲奈さんが目の前にいた。

僕に向かって手を振ってくれた。

それだけどで全てがどうでも良くなった。

もう立つ力すら残っていない。

彼女はそれでも僕に向かって微笑んでくれた。


限界を超えて9日目。

昨日の夜から風が強い。

そろそろ雨でも降るのかな。

窓ガラスが全部割れているせいで風が遠慮なくて屋内に侵入してくる。

カチカチと歯が音を立てているのがわかる。

今日もまた玲奈さんを見かけた。

ずっとバリケードの外から僕のことを見てくれている。

すごく嬉しかった。

ずっと僕を見てて欲しかった。


少しして、彼女は踵を返した。

途端、土砂降りの虚しさが僕を襲った。

また玲奈と会っていたい。

玲奈と触れ合いたい。

そういえば玲奈に好きだってこと、まだ伝えてなかったような気がする。

今度こそ伝えよう。僕は覚悟を決めて玲奈が再びやってくるのを待った。


限界を超えて10日目

今日は玲奈がきてくれなかった。

なぜ来てくれなかったのだ!!?

僕はこんなにも貴方を愛しているのに!!

なぜ僕を裏切った!!

僕には貴方しかいないと言うのに!!


限界を超えて11日

玲奈がきたような気がした。

彼女と触れ合いたくて、残された全ての死力を尽くして目の前の障害を崩した。

全てが輝いて見えた。

もうすぐ彼女がここに来る。

そう思うだけで胸がいっぱいになった。

そして、


ほら、彼女が来た。

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