盲目の魔法使い エレナ
は~、ある程度更新が滞るとは覚悟していましたがこんなにとろこくなるとは、、、。
せめて月1は更新させたいものですが
メインは幻羽なので、、ご了承ください(><)
盲目の少女はエレナと名乗った。
どうやらこの先の村で仲間と待ち合わせしているらしい。
結局『神の加護』というスキルの謎は解けなかった。
というか、この世界では衆知の事実の様で今さら誰も話題にすら上げてくれなかった。
「・・・ドラゴンですか?
小さい・・・生まれて間もない仔竜?」
エレナがこちらを向きそう呟く。
「流石だなトレースしたのかね
王国から騎乗用に4匹頼まれて捕獲したんだよ
騎士が乗るにはこの位の仔竜から調教しないとな」
なるほど、俺達は騎士の馬代わりになるのか・・・
お!あれか竜騎士というやつか!
この王国には竜騎士が居るんだな。
おっさんはいろいろ情報を垂れ流してくれている。
この世界の事がさっぱり解っていない俺としては大変ありがたい。
「サザン王国の竜騎士は有名ですものね」
エレナがそう言う。
やっぱり竜騎士か!
んで、なにサザン王国?
この国の名前だな。
頭のメモに書き書き。
と、なんだろ?さっきからエレナがずっとこちらを見ている。
視えない眼で。
「・・・」
無言ですか?
いや、そう見つめられるとなんか照れちゃうよ?
この子ホント大きな眼だなぁ・・・
綺麗な緑色。
こんなに綺麗な眼なのに視えてないのか・・・
勿体ない。
んでもって、マジ可愛い。
薄い金色の髪をボブにして飾り気のないワンピースみたいな上に
細かな模様の入った民族衣装風のケープを羽織っている。
足元は革のブーツだ。
肩からメッセンジャーバックを掛けている。
あれに旅用品とか入ってるんだろうか?
おれもしげしげ見る。
エレナの眼が見えているならこんな大胆な事は出来なかったかも・・・
と、くすっとエレナが笑った気がした。
エレナがすっと指を一本立てる。
ん?なんじゃら?
その指をゆっくり右に動かす。
俺はついその動きに釣られ顔を動かす。
今度は左へ。
俺も左へと動く。
ちょっ!何釣られてんの俺?!
この子ホントに見えてないんだよな?
いや、まて、仔竜の数言ってたよな?
んで、トレース?
もしかして視えてないけど解るのか?!
そこにどんな形状のものがあるのか。
この子の世界は面と点で成り立ってる3Dの様な世界なのか?
ぽかんとアホ面をさらしてると
鼻先を突かれた。
くしょっいっ!
エレナがくすくすと笑う。
「嬢ちゃんその仔竜が気に入ったのかい?」
おっさんが声を掛けてくる。
「この子、可笑しいですね
他の仔と少し違うみたい」
そりゃそうですとも。
俺中身人間だもの。
「気に入ったら安く譲るぜ?」
おっさんがそう言って笑う。
「うふふ、無理ですよ
仔竜ってすごい高価なの知ってますもの」
あ?俺って高級品なのね?
たわいもない雑談に俺の頭のメモは増えて行く。
サザン王国は大きな国であること。
街道沿いはまだまだ治安が悪い事。
今年は豊作で在る事。
傭兵のギルドがこの先の村にもある事。
宿屋が1シリング値あがった事。
等、等。
その日の夜は最後の野営らしかった。
明日には村に着くらしい。
おっさん等はテキパキと夕食の準備をする。
一番怪我が酷かったギルというおっさんも起き上がり一緒に夕飯を食べている。
エレナは俺の檻の傍でビスケットの様な保存食を齧っている。
「嬢ちゃんほんとに食わなくていいのかい?
遠慮しなくていいんだぜ」
おっさん達が夕飯を勧めるが
「ごめんなさい
この香りパムルの臭いですよね?
ちょっと苦手なんです」
どうやら肉汁に入れられた香草が苦手なようだった。
あー、あるよね苦手な臭いって。
俺もパクチーとか無理だったもんな。
おっさん達が言うには肉の臭みを押さえ尚且つ滋養のある薬草で
一般的には重宝され料理に多用されている物らしい。
俺はというといつものひき肉のミルク煮を頂いていた。
う~ん贅沢を言うなら塩気が欲しい。
味の濃いいものが喰いたい!
そりゃ動物に塩気は良くないよ。
でも、良くなくても身体に悪くても美味い物が喰いたいんや!
心の叫びである。
エレナのビスケット美味いのかな?
俺がじ~っと視ているのを察したのか
エレナがふと俺を見る。
「欲しいの?」
コクコクと頷いてみる。
するとパキッと2つに折り片方を俺に差し出してくれた。
エレナを驚かさない様にそっとビスケットの端を咥える。
そのままぱくっと口の中へ放り込む。
途端に甘味が口いっぱいに広がる。
う、、うめぇええ!!
涙が出るほど美味かった。
ナッツ類を細かく砕きライ麦みたいなものと混ぜて焼いてメイプルシロップに浸して乾燥させた。
みたいな感じだった。
人間には少し硬めだがドラゴンの俺には関係ない。
あれ?にしたら何で何時までもひき肉のミルク煮なんだ?
もう骨でも噛み砕けそうだけど?
舌で口内を探ったらいつの間にか立派な牙が生え揃ってる。
成長はええな、おい。
事件はその後起こった。
どうやら夕食の肉汁に入れた香草がよく似た違う草だったらしく
おっさん達は酷い腹痛と下痢に悩まされる。
「パムルとルルーズ草は似てるってあれほど教えたろうが・・・」
トミーが炊事当番だったトルックに腹を押さえながら小言を言っている。
ルルーズ草は少量なら便秘薬になるそうだが食べ過ぎると腹痛と下痢を誘発するらしい。
おっさん達、なむ。
「お嬢ちゃんが辞退した時に気付くべきだったなぁ・・・」
「『神の加護』は偉大だわ・・・」
おっさん等が後悔を込めてそんな事を言いあっている。
なに?神の加護ってそんなスキルなの?
災難から遠ざかるみたいな?
当のエレナは甲斐甲斐しくおっさん等の世話をやいている。
薬草を煎じて渡したり腹を擦ってやったり。
「回復魔法が使えたら良かったんですが
ごめんなさい」
どうやら回復魔法は使えないらしい。
エレナは謝りながら介抱している。
「いやいや嬢ちゃん
こちらこそすまない世話掛けて」
そんなエレナにおっさんの方が恐縮している。
てっきり眼の見ないエレナは回復魔法や支援魔法を使うんだと思ったけど
違うのか・・・意外だな。
まぁ、暫くすれば腹痛は治まるみたいだから心配は要らないみたいだ。
一向はゆっくり馬車を進める。
と、馬がいきなり後ろ脚で立ち嘶く。
何事かと思ったら矢が数本飛んできた。
怒号と共に数人の武器を構えた男たちが馬に乗り突っ込んでくる。
「盗賊?」
「マジか?!」
おっさん達は傭兵である。
普段ならこんな盗賊とも平気で渡り合っていただろう。
だが、いまは間が悪すぎる。
盗賊も普通ならギルドのマークが付いた馬車なんか狙う事は無い。
だが、これまた運の悪い事に俺の親の襲来でギルドのマークの付いた部分が焼け焦げていた。
ホロもボロボロになっている。
一件、盗賊か魔物に襲われ逃げてきた商人の馬車に見える。
それでもおっさん達は気丈に立ち上がり各持ち場に散る。
怪我人のギルさえ剣を携えているが・・・
それぞれ冷や汗は出ているわ、顔は青いわどう見ても歴戦の傭兵には見えない。
あれ?「神の加護」はどうなった?
作動しないの??
こういう人災には無効なの?
エレナも居るから巻き込まれちゃうよ??
そうあたふたして居る時、それは不意に聞こえた。
「ちっ」
ちっ?今、ちっって舌打ちした?
振り向くとそこにはエレナが居た。
ちょっ、今舌打ちしたのこの娘?
エレナはそのまま馬車の破れたホロの上によじ登ると
視えぬ目で盗賊達を睨む。
盗賊からは若く美しい娘の登場に野卑た歓声が上がる。
おっさん達からは隠れてろと怒号が飛ぶ。
エレナはどちらも気にする風でもなく走る馬車の上で器用にバランスを取り
杖を構えると魔法の詠唱を始める。
展開されるのは防御魔法と広範囲攻撃魔法。
馬車の周りに防御膜をはり周囲の盗賊に広範囲の雷の魔法を落とす。
「荒れ狂え迅雷!」
気が付いた盗賊たちは慌てて馬を下がらせようとするが
間に合わずエレナの放った広範囲魔法の餌食となる。
気が付くとぽかんとするおっさん達の周りに雷の直撃を喰らい息絶えた盗賊の死体が転がる。
「じ・・・嬢ちゃん」
「馬さんには可哀想な事をしちゃいましたね」
そう言って可愛く肩をすくめる。
こ・・・この娘。
怖いっ・・・