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復讐するは我にあり、、、?

復讐してやる。

お前等絶対同じ目に遭わせてやる!

あんな優しい母さんを殺した報いを受けさせてやる!!


俺は檻の隅にうずくまり剣呑な眼でおっさん達を睨んだ。

おっさんに興味は無かったがこうなると話は変わる。

俺はおっさん達を観察し始めた。


馬車の中に包帯でぐるぐる巻きにされたおっさんが居た。

「大丈夫かバミューズ?」


そう言えば火傷を負ったおっさんが居るって言ってたな。

極悪非道な人間共め!

俺が正義の鉄槌を下してやる!!


「あ、ああ、ひりひりするが此れくらい・・・」

「ひゃ~、しかし見事に顔半分焼かれたな

 お前、確か帰ったら結婚式だろ?

 そんな面じゃ、嫁さんに逃げられるんじゃないか?」

「へっ、デライアはそんな薄情な女じゃないよ

 傭兵の女房になろうって決めてくれた時から覚悟は決まってらぁ

 ててて・・・」


・・・ご、極悪・・。


「それよりギルの方が重傷じゃないか?」

「まぁ、命に別状はないだろ

 ギルを殺したら親父さんに俺が殺されるよ・・・」

「ギルの親父さん、子煩悩だからなぁ~」

「成人した息子に子煩悩もないもんだがなぁ」

「いやいや、トレックさん、幾つになっても親からすれば

 子供は子供なんよ」


・・・ひ、非ど・・・ぅ。


「トミーさんは帰ったら家立てるんだよな?」

「うむ、今回の仕事でかなりの額が入るだろうから

 そろそろ傭兵は引退して、小さな畑付きの家を買って

 嫁さんと娘とで暮らそうと思ってなぁ・・・」

「そっか、腕の立つ魔術師なのに残念だな

 トミーさんとの仕事も今回が最後になるのかぁ・・・」

「ほれ、このアミュレット娘の手作りなんだぞ」

「おお~、娘さん幾つだ?」

「今年で6歳になる」

「可愛いんだろうなぁ」

「うむ、嫁さん似で美人になりそうだぞ」

「年頃になったらもてそうだな?」

「嫁にくれという男が来たら・・・燃やしてくれるっ!!」

「トミーさん、無いわぁ~」

穏やかな笑いあう声。


・・・・ご・・・。


極悪非道・・・。

じゃないやんか・・・。

何でお前等、極悪非道じゃないんだよっ!


・・・・駄目だ・・・殺せないっ。

このおっさん達、普通の小さな幸せを願う小市民じゃん・・・。

帰りを待ってる婚約者に親父に妻に娘だぁ?

何、死亡フラグ立てちゃってんの・・・。


ごめん・・・母さん

母さんの敵も執れない駄目な息子で・・・。

俺、思考が人間だから・・・。

極悪非道な奴等ならって思ったけど

善良な人間を殺すのは・・・。

しかも待ってる人が居るとか・・・難易度高過ぎだわ。


悔しいけど。

理不尽だけど俺達モンスターなんだな・・・。

人間から見たら唯のモンスターなんだ・・・。

悔し涙がまた出てきた。


まぁ、冷静に考えてみると。

今の幼体の俺に敵討ちが出来るかというと、まず無理だろう。

だが、気概の問題である。

成長した暁にはっ!

探し出して目にものをっ!と考えたのだ。


だが・・・人間、日向陽太の理性が邪魔をする。

俺がまだ中二病を発症している思春期だったらまた違った考えに至っただろう。

だが・・・もう30歳。

社会人としての倫理観がある。

このおっさん等は決して怒りにまかせて殺していい存在とは思えない。


なんで極悪人じゃないんだよ・・・。



恨めしげに泣きながらおっさん達を睨む俺に

楽しそうに語り合うおっさん等は気付きもしなかった。

おっさん達は違う者に気付いた。

街道に杖を付き道を確認するように歩く少女が居た。

覚束ない足取りで杖を頼りに歩いている感じだ。


「おい、あの子」

「ああ、もしかして目が悪いのかな?」


お?あれか、おっさん等、獲物を前にし、狼に変わるのか?!

極悪非道な行いをする気になったのかっ!


「娘さん、不躾にごめんよ

 もしかして眼が悪いのかい?」

「え?」

少女は馬車の音で道の脇に避けていたが

おっさんの声で顔をあげる。

瞳は大きく何も映しては居ないようだが

小動物を思わせる可憐な美少女だった。


「どこまで行くんだ?

 次の村までなら俺達も向うから

 狭い馬車だがよかったら乗って行かないか?」

「ありがとうございます、でも・・・」


そりゃ、おっさんばかり要る馬車になんか女の子は怖くて乗れないよな。

うんうん、御嬢さん、あんたは正しい。


「ご迷惑じゃ・・・?」

乗る気あるんかーいっ!


おっさん達は少しづつ詰め合い少女を馬車に乗せる。

少女は本当に眼が見えないようだった。

こんな魔物が居る世界で、眼が見えない少女が一人旅とか

何考えてるんだこの子?


「街道は魔物除けの結界があるから大丈夫だと思うが

 御嬢さん、一人じゃ危ないよ?」

「うちの娘が同じ事をしたらと思うと生きた心地がせんぞ」

「全くだ。無謀にもほどがある!」

おっさん達が口々に説教し始める。

疾しい気持ちなど欠片も無いようだ。


卑猥な想像をしてすいません・・・。

おっさん、あんたらほんまええ人達やわ。


「心配してくださってありがとうございます

 眼は視えませんがトレースの魔法が使えますし

 私には『神の加護』のスキルがありますから」

小さく微笑んで少女はそう言った。


「ほぅ、あんた『神の加護』を持っているのか

 羨ましいなぁ」

「ほんとだ、そのスキルがあれば危険な事は無いな」

「それにトレースが使えるなら眼が見えなくても大丈夫か」

おっさん達が納得し感心し合う。


スキル?

『神の加護』ってなんだ??

誰か教えてーーーっ!


って心で訴えてみても誰も教えてはくれなかった。









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