親が殺されました。
多少残酷な表現あり。
どうやらお気に召さないという訳でも無く
初めて食べた物に拒否反応を起こしていただけの様だ。
数日後には他の仔竜も俺と同じようにガツガツと餌を頬張るようになっていた。
ぱんぱんに膨らんだ腹で転がっている仔竜達。
おお~っ!眼福眼福、かわええのぅw。
という俺も同じありさまなのはこの際忘れておく。
俺達はあれからテントを離れ、現在荷馬車でどこかへ移動中だ。
そこそこ大きな馬車で、おっさんが8人生活している。
馬を扱うおっさん、剣をぶら下げてるおっさん、杖を持つおっさん。
どうやらパーティのようだ。
たまに街道沿いに襲ってくる魔物を撃退しながらの旅。
そう、この世界は魔物が居るのだ。
そう考えると俺の親も魔物に分類されるのかも・・・。
何しろ竜だし。
杖を持つおっさんが魔法を使ったのに驚いたが
それが理解できた自分にも驚いた。
もしかして俺、魔法使えるんじゃね?
そんなふうに馬車に揺られてはや数日。
このままでは街に連れて行かれ
4匹は国に、1匹は市場で売られてしまうのだろう。
さて、どうしようか。
此処の食事は魅力的ではある。
が、ペットかぁ、、。
昔、いい飼い主に飼われるなら犬になるのも幸せかもしれない、などと
思った事もあったりした。
あくまで、「いい飼い主」限定である。
が、実際そうなるのとでは話が違う。
違うのだが、中身人間のひ弱な俺が
実際狩りとかしてサバイバルで生きて行けるか?
と、考えればこれまた微妙なのだ。
ぶっちゃけ、無理無理無理無理・・・。
狩り?なにそれ恐ろしい。
平和ボケした日本国民にはハードルが高い。
サバゲーとかやってるアウトドア派の人間なら可能かもしれない。
だが、こちとらインドア派、妖精さんなのである。
あ、妖精さんは関係ないな、ははは。
まぁ、飼い主見てから考えてもいいかも・・・。
美少女とか、ありえない事が起こる可能性もゼロじゃない。
美少女と胸熱展開のうはうはライフ♪
何それ、超嬉しい♪
なに?ありえない?
妄想するくらいええやんか。
妖精さんだってちょっとくらい夢を見てもええやんかっ!(笑)
「・・・こいつ、妙な身もだえしてるが
もしかして病気持ちか?」
「マジか?売り物にならなきゃまずいな・・・」
おっと、おっさん達が失礼な事を言ってる。
まずい、「残念な子」扱いされてはいい飼い主に会う確率が低くなる。
俺はすっくと立ち上がり
大人しく出来るだけ賢そうに見えるようにした。
「大丈夫・・・そうだな」
「しかし間の抜けた面だよな~、こいつ」
おっさん達の笑い声。
失礼極まりないおっさん達だな!
ちなみにおっさん達にも名前も特徴もあるのだが
俺の認識ではひっくるめて「おっさん」だ。
おっさんに興味は無い。
それは突然に起こった。
おっさん達の怒号、あわてて走り出る待機中の魔導師、剣士。
何時もの魔物の強襲かと思ったが様子がおかしい。
ばさっと強風がぼろ馬車に吹き付けホロが吹き飛ぶ。
あれは・・・俺の親?!
空からワイバーンの奇襲であった。
え?なんで?
とびっくりしていた俺に
教えるかのようなタイミングでおっさんの会話が聞こえてきた。
「くそっ!、お前1匹だけの仔竜をつれてきたな?」
「あ、そういや・・・」
「数頭いる仔竜の1匹だけ浚って来いって言っただろうが!」
「1匹しかいないのを浚ってくると親が連れ戻しに来ることがあるんだよっ!」
なんとなーーっ!
俺、そう言えば一人っ子だったわ。
助けに来てくれたのか!母さんっ!(父さん?)
ちょっと感動に打ち震える。
が、魔導師の炎の魔法が母さんの翼に穴を開ける。
おっさん達はやけに手際よく陣形を組み、炎魔法、弓攻撃で
翼を狙う。
ズタボロにされた翼は体重を支え切れなくなり地面に激突し
砂煙と共に苦痛の咆哮が上がる。
地に落とされた母さんに容赦ない攻撃が加えられる。
俺は馬鹿だ。
何が飯が美味いだ。
なにがいい飼い主だ。
もう止めてくれ!
俺は逃げないから、大人しく売り物になるから!
だからそのワイバーンを攻撃しないでくれ!
逃げろ母さんっ!
俺なんかの為に死ぬなっ!
頼む逃げてくれっ!!
俺は・・・人間の頃の記憶の方が強くて
あんたを親と思っていなかったような息子なんだ。
あんたの事を母親か父親かも解らなかった息子なんだ。
あんたの命を賭けて救う価値なんか俺には無いんだよっ!
だから・・・だから逃げてくれーーーっ!
逃げろっーーーっ!!!!
俺の叫びは誰にも届かない・・・。
ワイバーンの断末魔の咆哮が耳を劈く。
ごめんよ・・・薄情な息子で・・・。
ごめん・・・ごめんっ!母さんっ!
最後に優しげな眼を俺に向けたかと思うと
その眼から光が消えた。
あぁああああああああーーーーーっ!
檻にしがみ付き泣きわめく。
殺したな・・・。
殺したな・・・。
俺の母さんをよくも殺したなっ!
お前らの顔忘れないっ!
忘れないからなっ!!
「ふぅ・・・被害はでていないか?」
「バミューズが火傷を負った」
「ギルが打撲と裂傷だな」
「ワイバーン相手にそれくらいで済んだのなら御の字だ」
「こちらにあまり攻撃してこなかったな・・・」
ああ、そうか。
俺が居たから攻撃できなかったのか・・・。
なんて、なんて優しいんだ・・・。
はらはらと涙が落ちる。
俺はなんて馬鹿なんだ・・・。
「おい?こいつ泣いてるのか?」
「まさか、そんな頭があるはず無いだろ
モンスターだぜ?」
「そうだよなぁ・・・」
ああ、俺は馬鹿だ、大馬鹿だっ!
無くしてから解るって本当だな・・・。
おっさん達には唯のモンスターかもしれない
だけど、俺には優しい母さんだったんだよっ!
人間じゃなかったから戸惑う事が多かったけど
それでも、それでも俺なんかを
俺なんかを・・・。
涙が止まらなかった。
一気に3話投稿、早書きではなく書き溜めていただけです~(^^;
メインの方の投稿を優先しますので、こっちの方はその次になると思いますが。
逃避行動で案外投稿スピード早いかも??(笑