表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

誘拐されました。

なんだかんだデカルチャーな日々だったが

平和と言えば平和な毎日でした。


言葉は通じないけど愛されてるのはひしひしと解るし。

同じ日常の繰り返しの中、俺は少しづつ成長してきた。


眼はしっかり見えるようになったし。

もうよたよたと歩くのもおぼつかないという事は無い。

巣の中は自由に歩き回れる。

どんなもんだい。

いや・・・何を自慢している俺。


とりあえずゲロ食って排泄して寝るだけの日々。

暇なので色々と推考する。

俺の親はどうやらワイバーンの類のようだ巨大な羽で空を飛んでいる。

空を飛ぶ、なんだこの心躍る響き!


俺も空を飛べるんだろうか・・・。

飛べるんじゃないかな?いや、飛べる筈だ!

背中に小さな羽が付いている様な気がする。


背中なので自分からは視えはしないが、人間の肩甲骨辺りに集中すると

なんか動く物がある気がする。


気がするったらする!

あああ、早くデカくなりてぇ・・・。

テンション上がるわぁ~。


身もだえしながら巣の中でごろごろ転がっている時だった。

なんか下の方でがさがさと木の葉が擦れる音がする。


なんだろう初めて聞く類の音だ。

気になって巣の端から下を覗いてみる。


! 見知らぬおっさんと眼があった。

お?おおお??

人間じゃありませんかぁ。

この世界人間要るんだ。

へ~。

と、妙な感動を覚える。


「お!居たぞ、1匹だけだ」

「1匹だけか・・・まぁ仕方ない、捕まえろ」


はいい??

逃げるより早く首根っこを摑まえられ頭陀袋に掘り込まれる。

どえぇええ??


「親が返ってくる前に逃げるぞ!」


ちょっ、なにこれ誘拐?

拉致られてんの俺?

遅まきながら暴れてみるけれど俺の爪はまだ柔らかく

牙も弱々しくどうしようもない。


ひでぇ・・・生まれたばかりなのに死亡フラグなんすか?


喰われるの?

そりゃ赤ん坊だから肉は柔らかいかもしれないけど。

俺・・・肉食だからきっと美味くないと思うよ?

ゲロしか食ってないし~。

いやそれは関係ないか。


とりあえず唯一出来る事、ぎゃあぎゃあと鳴き声を上げ抵抗を試みる。


「こいつっ!」


ひえっ?殺される?!

と思った時に頭太袋の口が少し開き。

何やら薬草を粉にしたようなものが放り込まれる。

そのまま意識が朦朧としてきた。

ふにゃらら・・・な・・・なんらこりぇ??


気が付くと柔らかい草が敷き詰められた檻の中だった。


なんだこれ?!

状況が解らず辺りをきょろきょろ見回すと

同じ檻の中に俺と同じくらいの仔ドラゴンが4体いた。


あ~、俺あんな見た目なんだぁ。

青銅色のちんちくりんだなぁ。

でもコロコロとしてまだまだ頼りなさそうで

大きなくるくるした眼が可愛い。


動物は生前から大好きだったので抱きしめたい衝動に駆られる。

とりあえずコミュニケーションを計ろうとするが

どの仔竜も動物並みの頭脳のようで

きょるるんと小首をかしげている。


その仕草がまた可愛い!

どうしよう抱きしめたい!

いやいや違うだろ。


そうだった、親ドラゴンとも話通じなかったわ・・・。

と思い出す。

なんとな~く言いたいことは解るくらいな感じだった。


なんか・・・すごい疎外感つーか、孤独感?。


そこにがやがやとおっさん達が入ってくる。

その中にあの時の俺を拉致ったおっさんも居た。


「5匹か、まぁまぁの収穫だな」

「王国の注文は4匹だったか?」

「1匹多いが仔竜の買い手はいくらでもいるから大丈夫だろう」


ほぅ、人間の言葉はばっちし解るじゃねえの。

正確に言うと聞こえている言葉は聞いたことも無い言語なのだが。

なんか頭の中で日本語に変換されてるみたいに解る。


異世界チート機能という奴かな?

どうやら食糧にするために連れてこられたわけでは無く

どこかに売られる為に捕まえられたようだ。


・・・ペットっすか?

鎖に繋がれた生活なんざまっぴらだっ!

隙を見て逃げ出しちゃるっ!!


「ほら、餌だ」


檻の下部の取っ手の付いた小さなドアが開き

ミンチ肉とミルクを煮た様な物が深皿に入れられ差し込まれる。

ゲロじゃないっ!


俺はくんくんと臭いをかぎ不用意だとは思ったが

売り物なら害を為す様な物は出さないだろうと判断し

ガツガツと食いついてみた。


味は無いが親の餌より数段美味いっ!

逃げ出すのはもう少し様子を見てからにしよう。


決して餌につられたとか、親の恩を忘れたとかそう言う事では無いっ!

無いったら無い!


俺がガツガツ喰ってたら他の仔竜も恐る恐る近寄ってきた。


ああ、お前らも腹減ってるよな。

俺は大人の余裕を見せて餌の皿から離れ仔竜達に場所を譲った。


皆、少し口を付けたかと思うと妙な顔をして後ろに後坐する。


え?なにそれ?

君たちこの味お気に召さないの?

親のゲロの方がいいの?

え~!!デカルチャーっ!!










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ