9.再開
僕が席に戻ると、タイミングを見計らったかのように前の席の椅子をこちらに向けて、慎二がそこに座った。
「珍しいな、委員長に話し掛けるなんて」
「委員長もsoulStrainやってるみたいだったから、何となく聞いてみようと思ってさ」
「ま、でもあんまり話が弾みそうなタイプでもないし、実際そうだったんじゃないの?」
「そうかなあ。確かにおしゃべりなイメージは無いけど、またゲームのこと聞いてもいいかって聞いたら良いって言ってたし、話がしたくない訳じゃないと思う」
「ふーん、まあ、それはそうと」
慎二はそこでスマートフォンの画面で時間を確認しながら、口を開いた。
「こっちから誘った手前、俺も少しはおまえをサポートしないとな」
「サポート?」
「ああ、サポート。このsoulStrainってゲームはな、弱肉強食っていうか、それも含めて他人に対して簡単に心を許しちゃいけないシステムだから……」
「それは最初にやられたことで理解できたよ」
オンラインゲームって、人と人の心の交流も一つの醍醐味だと思っていたけれど、それがあんな形での交流となるなんて思ってもみなかった。しかし、それがソウルストレインの中における楽しみ方の一つなのだと言うのなら、経験の一つとして消化した方が良いのかもしれない。
「soulStrain自体が招待制って訳じゃないんだけど、ハッキリ言って、レベリングしようにも初心者狩りみたいな連中がそこらにウジャウジャ居るから、そんな奴らをまともに相手できるようになるまでは楽じゃない。そういう奴らに鉢合わせないように運頼みの部分も大きいしな」
「改めてそういう状況を聞いてると、やっぱ酷いゲームだな、これ」
「まあ、そう言うなよ。ある意味そのシビアさがウケてる要因の一つでもあるんだろうからな。ただ狩られっぱなしにされない為には、装備譲ってもらうとかギルドに入るとかした方が早い。紹介者の世話になるのがこのPKだらけのゲームに関してはな」
「殺伐とし過ぎてないか、このゲーム……」
「ま、それも一興だ。普通のゲームじゃつまんないだろ? 今日帰ったらPCでログインしてやってみてくれ。連絡とりながら装備と『良いもの』、渡すから」
「そういや、昨日もそんなこと言ってたな。何か譲ってくれるのか?」
「うむ、心して受け取れよ」
慎二がそう言った直後に、午後の授業開始のベルが鳴った。慎二は立ち上がり、自分の席へと戻っていく。
良いものをくれる、か。一体何をくれるのやら……と思いながら、僕は惣菜パンの袋やジュースの紙パックをコンビニ袋にまとめて入れ、机の中から筆記用具と教科書を取り出して机に並べる。
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全ての授業が終わり、僕はそそくさと学校を出る。
コンビニへ道草することもなく帰宅すると、僕は早速自室へと向かう。
そうして再び、soulStrainにログインする。もちろん、慎二が言ったようにPCからのログインである。洞窟の中、プレイヤーキャラを操作して画面奥に見える光の方へと歩いていく。
つづく




