4.登録
ぴりぴりとカップラーメンの包装を破っていると、どこからか物悲しいピアノの伴奏が聞こえてきた。ここが学校の音楽室の近くであれば、すわ学校の怪談の現場に居合わせたのか、ともなろう局面であるが……。よくよく耳を澄ませてみれば、ピアノの伴奏と共にバイブレーションと思しき振動音も聞こえることに気付いた。ズボンのポケットをまさぐってみると、慎二からの着信がスマートフォンの画面に表示されていた。
これか。ポケットに入れている着信に気付くのが遅れるとは、感覚が鈍っているのだろうか。それはさておき、僕は電話を取る。
「よう、和也。やる気になったか?」
「いや、今はちょうどそのゲームのサイト見ようかなって思ってたところだけど」
「そっか」
「ああ、一つ聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「おお。何だ?」
「ネットで検索かけたら、最近デカいバグが見つかったって書かれてたんだけど、このゲーム大丈夫なのか」
「--ああ、今は大丈夫だ。特に問題無くプレイ出来てるからな」
僕の問いに対して、一瞬の間があったように感じたが、慎二は普通に答えた。
問題無く……か。ふと、佳奈恵がプレイしていたのを思い出した。慎二がやっていたのはともかく、委員長もやってるぐらいだ。
面白いのかもしれない。
「もし登録するんなら、特典コード送るから、チュートリアル始める前に入力してくれよ」
「何だよ、それ。面倒くさいな」
「それ入力してから始めると、アイテムと装備がもらえるんだよ」
「ふーん、そうなのか」
「反応薄いじゃねーか」
「いや、それって紹介した側の方が特典良かったりするんじゃないのか?」
「その通りだ。だから頼む」
「どの通りだ、それは。……ま、良いよ。協力するけど、そっちに特典が入るようにするには僕がチュートリアルを終了させれば良いのか?」
「そう、そう。手間かけさせて悪いな。じゃあ、登録頼んだぜ」
そう言うと、慎二は電話を切った。
通話画面が終了してから、再びスマートフォンの内蔵ブラウザを開く。
今すぐ登録! と表記があるアイコンボタンを押しかけて気付いた。
電気ケトルで湯を沸かしている途中だったことを。
電気ケトルの方を見ると、既に沸騰自体は済んでいたのだが、沸かした湯は、沸騰から時間が経って温くなり始めていた。
「……しまったな。やり直しか」
つづく




