13.唐突な再会
慎二が呼びかけた方に視点を変更してみるが、未だ相手の人物は行動を起こさない。
「そうか。姿を現さないつもりなら、それはそれでよし」
そう言いつつ、慎二は構えた大剣を背中に携える。次に、腰につけた道具袋から幾つかの指輪を取り出して右手の親指、人差し指、中指に嵌める。
「出て来ないつもりなら、この辺を吹き飛ばせば済むことだからな。でも、安心していいぜ。おまえをキルしたところで、ハイエナみたいに有り金や装備を漁る趣味は俺には無い」
慎二のキャラクターが右手を上げた瞬間、木の陰に隠れていた何者かが飛び出してきた。木の幹を蹴り、反対側にある木へと跳躍する。ある程度密集して木が生えているため、撹乱を行いながら移動するのには向いているのだろう。尾行者はそう言った環境も織り込み済みでいたようだが、慎二の様子に焦りは微塵も見られなかった。
「悪いな、和也。多分すぐに終わるけど、保険かけとくわ」
尾行者はすぐにこちらに向かっては来なかったが、的を絞らせないようにするためか、木々の間を飛び移り続けていた。その様子を見ながら、慎二は左手首のブレスレットの宝石を触る。そうすると、慎二のキャラクターの掌が淡く輝き、僕のキャラクターの周りに光の粒子を纏わせる。
「これでよし。さっさとあいつを何とかするから待っててくれ」
「ああ、ありがとう」
そうして、慎二はもう一度エリア内にシャウトを行った。
「おーい。装備を出したこちらも良くないが、話をしないか? もし誤解があったなら、そのまま戦闘状況には移りたくないんだ」
このような事態にも幾つも遭遇しているのだろう。慎二の対応は手慣れていた。今のところ、ひたすら足を引っ張るだけの自分が少し情けなく感じた。このゲームを始めたばかりとは言え、やはりしてもらうばかりの立場には心苦しいものがある。一方、話しかけられた尾行者は無言を貫きつつ、あちらの木、こちらの木と、僕たちとは一定の距離を保ちながら、せわしなく跳躍を続けている。
「さ、て。立ち話の一つも交わせれば分かり合う道もあるかと思ったが、そのつもりはないみたいだし、もう良いよな」
慎二は左手で大剣を持ち、三つの指輪を装備した右手を尾行者の方へと掲げる。僕が見たところ、尾行者は両腕にそれぞれ片手用のクロスボウを装備しており、接近戦を挑むつもりは無いように見えた。
次の瞬間。
「……あっ」
尾行者は初めて、大きく僕たちの方へと跳んだ。その動作は素早く、僕は目で追うのが精一杯だった。が、慎二は違うようだった。
『清けき光、正しき理、我が求めに応じ、其の力を我が前に顕せ』
ゲーム内のテキストウィンドウに魔術詠唱過程のテキストが表示される。
『——慈悲無き輝き』
果たして、慎二が告げた通りに尾行者の居た一帯は魔術で吹き飛んだものの、爆発の反動を背に受けながらも尾行者は両手に装備したクロスボウを構えていた。再びテキストウィンドウに表示された魔術詠唱過程は尾行者のものだった。
『我々は矛盾を愛し、欺瞞を否定する——』
そうして、爆殺を逃れた尾行者は両手のクロスボウを発射する。
『限られた命』
クロスボウから放たれた矢には、どうやら魔術が込められているようだった。しかし、問題はただ一つ、両手から放たれた矢は慎二と、そして僕を狙っていたこと。慎二のキャラクターは回避行動に移っているのが見えたが、僕は間に合わず——
つづく




