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10.習熟

 光を目指して歩いて行くと、今回は町にほど近い、開けた森へ出た。

 と、唐突にスマートフォンからピアノの伴奏が流れ、着信が表示される。


「よう、和也。調子はどうだ」

「一応PCの方でログインしてみたんだけど、またスタート地点はこんな感じなのか」

「ああ、初期段階だとランダム位置にあるエンドポイントからしかスタートできないのが仕様だ。エンドポイントについては調べたか?」

「セーブポイントみたいなもの……だったっけ」

「そうそう。ここに戻らないと、ちゃんとログアウト出来ないから、気をつけろよ」


 慎二の言う『ちゃんと』という言い回しが少し気に掛かったが、今のところはまず、他のプレイヤーに襲われないようにしないといけないので画面に集中する。背の低い草が生い茂るフィールドの向こうには、町が見える。

 森の方を振り返ると、木々の間にちらちらと動くものがある。しかし、モンスターなのか、他のプレイヤーなのか判断がつかない。


「やられる前に合流するには、どうすればいいんだ? そっちに会いに行けばいいのか」

「そうだな……ちなみに、PCでの操作はどんなもんだ? ゲームパッド接続してないとカーソルキーで移動とかでちょっとやり辛いかもしれない」

「そうなのか、これが普通って訳じゃないんだな。ちょっとやり辛いなと思ってたけど」


 やり辛いからと言って、わざわざゲームパッドを用意するのもちょっと面倒だ。さて、どうするか。


「その辺りも学校で話しておけば良かったな、すまん。俺の持ってる奴を一つやるよ」


 何と気の利く友人だろうか。しかし、ここまでしてもらうと簡単に『やっぱ辞めるわ』とか言い辛くなることも確かである。もしや、それが狙いなのか……と、現実でまで疑心暗鬼になってどうする。厚意はありがたく受け取ろうじゃないか。


「色々と申し訳ないな」

「元々俺が誘ったことだしな。それに、どうせプレイするなら楽しんでもらいたいって思いもある」

「何だそりゃ。ゲームの開発者みたいなことを言うじゃないか」

「俺、結構このゲーム好きだから、他の人にも分かってもらいたいんだよ。……まあ、それはともかく、装備とスキルを渡そうと思うんだが、和也が動くとまた狙われかねないからな、俺がそっちに渡しに行ってやるよ」

「でも、僕はもう一文無しのアイテムもスッカラカンだぞ。狙われたりしないんじゃないか?」

「あー、いや、自分より格下をやっただけでも熟練値だけは稼げるから」

「初心者は雑魚モンスター扱いかよ、ひでえな」

「仕方ない。この世界は無慈悲なんだよ。ま、それはそうと……周りに何が見える?」

「森の近くに町が見えるんだけど……何か町の中央辺りから煙が上がってる。何だろう、あれ」

「煙……うん、カルヴァダス辺りか。絡まれないように注意して待っててくれよ」

「了解。適当に隠れて待ってる」


 とは言ったものの、慎二と合流するまでに誰とも会わないでいられるだろうか。いや、そもそもオンラインなのに人に会わないようにしなければならないゲームってどうなのだろう。これは凄い矛盾を孕んだゲームではないか。皆が皆互いを出し抜こう、殺そうと考えている訳ではないのかもしれないけど、何ともシビアな世界だ。

 とにかく、僕は森からも見え辛く、町の中に入るでもない場所に移動した。正確に言うと、町外れの民家の陰に隠れるようにしてしゃがんでいるのである。


「そろそろ到着する、かな。そろそろ降りるから出てきてくれて構わないぞ」

「良かった……って、降りる? 空から来るのか」


 僕は視点を空に向ける。遠くから、何かが飛んでくるのが見えた。徐々に大きくなるそれは、どうやら金色の翼を大きく広げたドラゴンのようだった。


「えらく大きなのが飛んでくるんだが、それがお前なのか」

「そう、それが俺だ」


 存在感を主張しながら近づいてくるドラゴン。慎二はなかなかの大物なのかもしれない。僕はドラゴンの方へ向かって走り出す。羽ばたきの音に加え、咆哮が辺りに響き渡る中、ドラゴンは悠然と地上に舞い降りた。


「何か凄いな」

「手に入れるまでが大変だけどさ、こういう移動手段が無いと、移動も楽じゃないからな」


 やれやれ、と慎二のキャラクターがジェスチャーを行う。


「さ、握手だ。手を出してくれ」

「何か嫌な記憶が蘇ってくるよ、このやりとり」

「大丈夫だ、俺を信じろ!」

「そういうこと言う奴が一番信じられないんだろうが、ま、グチグチ言ってても始まらないしな」


 僕は右手を差し出した。すると、慎二のキャラクターがこちらのキャラクターの手を掴み、その周りに光の粒子が現れる。


「これな、スキルレガシーって言うシステムなんだ。俺のスキルをおまえに託したって訳だ」

「へえ、そんなことできるのか。どんなスキルをくれたんだ」

「それはお楽しみだ。とりあえず言えるのは、相当良いもんだよ」

「ほほう……」


 見た目が変化するでもなく、どこかしらが強化された様子もなく……一体どんな効果のあるスキルなのだろうか。




 つづく

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